雨上がりの街は意外と素敵だった
その日の夕方からテーラー・スウィフトのライブがあると言うことで、街には派手なスパンコロールの衣装を身に付けた若い女性達で溢れていました。
僕たちは仕事の打ち合わせ場所を探しながら、Black Stoneの斜め前にあるBARに入った。人はまばらで、打ち合わせ場所としては最適な雰囲気。軽快なR&Bが店内に流れている。良い感じの店だ。
細くて笑顔がキュートな黒人ウェートレスが、仕切りにアルコールを勧めてくる。「まだ仕事中なんだよね」と呟く僕を強引に押し退けようとする。堪らなく笑顔に負けそうになり、「ビ、ビールを」と言いかけた時、一緒に同席していた仲間のフランス人女性がキッパリ。「まだ仕事中だから無理」
彼女は自称江戸生まれのフランス人。実に5ヶ国語を自由に操る秀逸な女性ではあるが、性格は竹を割ったようにスパッとサッパリ。それはもう気持ちが良い程のサムライなんです。「コーラを5つちょーだい、それだけでいーよ」
プイッと黒人ウェートレスは踵を返してしまった。
「いやぁ、気持ちが良いねぇ、さすがケイトだ!」
「あったりメェよぉ!」とスパッと江戸弁で返してきた。
順調に打ち合わせが進むと、いつの間にか店内はスパンコールカラーで染まり始めた。どうやら外は夕立が降っている様だ。店内にはあちこちでテーラーを讃える声で溢れている。
「こりゃ打ち合わせどころではなくなったね、どうする?」
「やめやめー、やってらんねぇわ」
そこに居合わせた6人で顔を見合わせて笑った。
暫くすると夕立も止み、皆で外を散歩する事になった。
シカゴは今回で11回目の訪問。でも、まともに散策したことなんてなかったなぁ。雨上がりの街は少しだけムッとしていたが、やや肌寒くて日本よりもむしろ過ごしやすい。周囲をよく観察してみると結構面白しそうな街だと気づいた。これだけ来ているのに、今頃になって。
トランプタワーを横目に見ながらミシガン橋を渡ると、途端に雰囲気が変わる場所がある。ゴージャスな雰囲気から一変し、周囲には一気に小便臭い匂いが立ち込める。治安がガラッと悪化する瞬間だ。そこには大きな時計があり「ここから先は気をつけて!」と聞こえてくるようだ。
「なぁケイト、腹減ってない?」
「そーねぇ、減ったわ、この先に美味しいレストランがあるのよね」
悪い予感は見事に当たることになる。
最後まで読み進めて頂きありがとうございました。🌱
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