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どこまで行っても呪縛から逃れられない

首里の麓に広がる緩やかな傾斜地に、黎明の光が差し込んでいる。光の加減で、街全体の陰影が少しずつ移り変わり、未だ眠りから覚めやらぬ集落のひとつひとつに朝の訪れを告げてゆく。いつもと変わらない美しい琉球の夜明けが、僕の心の隅々にもしっかりと訪れている。


金曜日の午後、しれっと後輩に仕事を押し付けてひとり沖縄までやってきた。オッサンの週末遠足だ。沖縄を訪れるのは意外にも今年初めて。いや、4月に石垣島や与那国島に渡っているので、厳密には2度目と言う事になる。


ホテルの窓辺で斜めに差し込んで来る陽光を感じつつ、暖かいコーヒーを淹れる。いつも通りに今日使用するカーシェアリングを予約しようとスマホを手にした。


「ん?なんだこりゃ」
空きの車が見つからない。どういうこと?
いつもであれば、どこのパーキングからでも余裕で予約できるはずなのに、どういう訳か、今日は地図上で確認できる周囲のカーシェアリングは全て予約済み。


どうなっているんだ。
まだ早朝だと言うのに、、、
淹れたコーヒーを飲む事すら忘れていた。


少し遠くのエリアまで検索したところ、午前11時以降にようやく1台空きを見つけた。おもろまちエリアまで移動しなければならない。まぁ、ここからおもろまちまでは、ゆいレールで12分足らず。何も考えないで大阪を飛び出して来たのだから仕方ない。それだけ沖縄を訪れる観光客が増えている証なのだと腹を括った。


海洋博公園 Canon RF 24-105mm F4 L IS USM


無事に車をゲットして、車を走らせること1時間半。
久しぶりの景色に心が躍った。やって来たのは、美ら海水族館がある海洋博公園だ。前回ここに来たのは2020年の2月だから、2年半くらい前になる。ここで家族写真を撮ったけな。そんな事を思い出していた。


するとポケットのスマホが震えている事に気づいた。妻からの入電だ。なんだろうと恐る恐る出てみる事にした。


「あのさぁ、日曜日に戻るんでしょ?ちょっとお願いがあるんだけど」
でた!!伝家の宝刀だ。妻がお願いがあるとわざわざ電話をよこしてくる時は、決まって「何かを買って来い」と言う暗示。


「ポール&ジョーって知ってるでしょ?」
「ぽーるあんどじょ〜? なんだそれ」
「もぉーーーっ、じゃぁ今から写メ送るからね、空港の免税店にあるから買ってきてね」と言い残して一方的に電話が切れた。


「ったく、何なんだ。ぽーるあんどじょ〜って、ふぉんだんクリームって何なのよ、そんなに美味いのか」
女子って生き物は心底良く分からない。よくもまぁ意味のわからない横文字を、スラスラとまくし立てられるものだと感心してしまう。


万座毛 Canon RF 24-105mm F4 L IS USM


結局、僕はここに何しに来たのか分からない。
オッサンの遠足として、日頃のガス抜きをすることが最大の目的だった筈ですが、絶対に忘れてはいけない宿題ができてしまった。


運良く台風の間をすり抜け、奇跡的に雨を避けた旅程になったことは幸運だった。今回出会った琉球の人々、軍人ファミリーと一緒に登った灯台、そして琉球料理をたっぷり満喫したところで、あっという間に最終日になってしまった。



Canon SX 620 HS


Canon SX 620 HS


実は最近、8年落ちの中古カメラを黙って購入してしまいました。
妻のぽーる何とかのクリームを買って渡す時、どさくさに紛れて打ち明けようと思う。帰路の飛行機の中では、何度も何度もシミュレーションをしている自分に気づきました。


眼下には澄み切ったあおい海がキラキラ光っていた。
はぁーと溜息がひとつ漏れてしまう。


Canon SX 620 HS


残波岬 Canon RF 24-105mm F4 L IS USM


最後まで読み進めて頂きありがとうございました。🌱


🍵 僕の居場所



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