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冬の一日のあらまし

少し前に親しくしていた人も、もう話さなくなれば名前も忘れてしまう。本当に思い出せない、なんと呼んでいたのか。でも君のことは忘れることができないよ、なんてね。 冬なのに陽炎が見える。もやもやとたちのぼる熱に全身を押さえつけられるようで苦しい。 先月末、インフルエンザになった。インフルエンザなんて、高校生よりあとになった記憶がなく、とても久しぶりだったと思う。 弱っているとき、そして臥しているときは、思考が負の方向にしか働かないので、何も考えず寝ていた方がいいのだけど、それ

    • 終わりの季節

      「今年の夏は花火を見なかったな」と私が言ったら、「今度、手持ち花火でもしようよ」と彼は言った。 だけどその後、それが実現することはなかった。 夏なんて、毎年必ずやってくる季節の一つでしかないというのに、夏の思い出というのは、湿度の高い記憶としていつまでも頭の中に存在し続け、それが何か特別な意味を持っていたかのような気にさせるものだ。 今年の夏は、別れという言葉を意識する夏だった。 身内が亡くなって初めての盆、3歳からの幼馴染を亡くして10年目の夏、そして自分にとって大

    冬の一日のあらまし