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フェブラリーS 新馬先生はこう見る 〜距離〜

プロローグ

「距離を置く」

ということはとても大事なことだ。
ホープフルSのあと、競馬に突っ込みすぎて視野が狭くなっていたと自分で思う。

SNSでのいいねやフォロワーの求めるものを作らなければ。
それは、とても怖いものだった。
毎週、楽しみだった競馬との距離を取りたいと思い始めた。

僕は元々、飽きっぽい性格だ。
女性との付き合いもあまり長続きしない。
そもそもの人間性もあるのだと思う。

伝わるかどうかは分からないが、僕は常に
「余白」
というものがなくなることがとても怖かった。
いや、今でも怖いのかもしれない。
だから、僕は無理を好まない。

小学校を4回転校する環境にあった僕は、
常に猿山の猿を探した。
そして、その猿におべんちゃらを遣うスネ夫が誰なのかも。

転校生の生きる術は
「目立ちすぎず、目立たなさすぎず」
だと、幼き日々に学んだ。
距離間。間。

そんな子供がいつしか中年となり、
行きついた先にあったのがSNSだ。
この承認欲求というやつは、時に甘美的で、
危険薬物のような中毒性を持っている。

蜂蜜のツボの中に顔を突っ込んで貪る、
熊のプーさんみたいだ。
ある時、そんな自分とnoteを書かなければという
ノルマに追われているプレッシャーを感じる自分に気づいて、僕は少し距離を置こうと思った。

競馬という世界と、SNSという世界から。

たかだか、2カ月と少しだが、
僕はなんとなく「距離」を保っている。
競馬と承認欲求という化物と。

金杯を予想しない。
そんな、正月は本当に久しぶりだった。

大好きな箱根駅伝を見ていた時、
駒沢大学の大八木監督が相変わらず変らずに選手に叫んでいた。
「漢になれ!」と。
ただ、僕が知っていた駒沢大学の名将は時を経て、
選手との距離感を変えたという。
熱血スパルタ鬼軍曹は、
選手の自主性に身を任せるソフトな親父に。
スタイルを変える。
というのは、言葉にすると簡単だが実際はとても難しい。

スラムダンクの安西先生を地で行く。
そんな世界を見て、僕も白か黒かではなく
良い距離間を保てる人間になろうと決めた。

競馬をやりたいときはやるし、
気が向かない時はやらないと。

フェブラリーS。
春の到来を感じさせる砂の戦争、
寒さに耐えた心が、温かさを感じて再活動していくように
また今日も僕は文章を綴る。
楽しめればいいんだよ、楽しめれば。
さて、今年も予想を始めよう。

調教診断

調教評価第1位

15 レッドルゼル

1週前、CWで負荷高め

足元の不安な馬が、普段より長いCWをやるのであろうか。
1600mに併せた調教に動きが伴う。
24日にCW 6F 87.2
2日にCWで過去最高の7F 96.7
ラストが11.1

距離延長の馬としてベストな追い切りをしたと思う。

調教評価第2位

9 ショウナンナデシコ

雪の中でも抜群の坂路追い

坂路のみもタイムが1番早かったのがこの馬。
8日に坂路で51.1の破格タイム。
加えて栗東組が雪で軒並みタイムを落とす中、唯一終いまで脚を伸ばしていた。

調教評価第3位

6 メイショウハリオ

1週前、わざと馬を前に置いた調教

2位と3位は正直差がない。1週前の段階ではとにかくよく、坂路にも前に壁を作って追うという意図を感じれる調教だった。
レモンポップを前に想定したものかなと。

調教評価第4位

11 ソリストサンダー

最終追いは軽めでタイムが出ている

8歳と思えない精力的な調教、1日は亀田騎手が乗ってCW6F好タイム。
そして、8日は菅原騎手がCW7Fだったのだが、6Fのタイムが78.9。
騎手乗りとは言え走ることが嫌いになっていない。伏兵筆頭候補。

調教評価第5位

4 ドライスタウト

戸崎騎手が2週連続栗東で追う本気度

中5週休むことなく調教。最終が雪で軽くなったこと以外は文句なし。強いて言えば終いの1Fで早いタイムを出してないこと。
極端な決め手勝負の時だけは、不安を残すか。
とは言え有力馬の中ではこの馬が1番不安なし。


エピローグ

僕は箱根駅伝を貪るように、目に焼き付けた。
藤色の襷をつけた駒沢大学は、
出雲駅伝、全日本大学駅伝に続いて
箱根駅伝を完勝した。

大八木監督はこの駅伝を最後に勇退することを選手に伝え、
発破をかけたという。
今まで2回リーチをかけて叶わなかった大学駅伝3冠という栄光を
最後のレースで叶えて見せた。

人は変わっていく。
時が経つと共に。

段々と変わる。
時間は時に残酷に、環境を変えて。
けれど、記憶は残る。確実に。

3度目の正直。

今年のフェブラリーS、僕には1頭の馬が見える。
短距離を任せたら、この厩舎に勝る人はいない。
フェブラリーSも開業当初から2勝。
自身も騎手でトウカイテイオーに乗った、名調教師。

乗る鞍上も日本屈指の名手だ。
彼が新人時代に所属した厩舎の馬で乗るG1。
想いも一入だろう。
フェブラリーSを挑む、人馬3回目のチャレンジ。

1年目の川田将雅騎手を見た、安田隆行調教師は
ジョッキーとしては異例の
2年目の途中で「もう少し置いてください」
と言う当人を、
『お前なら大丈夫だから』と、
フリーになるこよう促した。
ライオンが我が子を崖から突き落とすような…。
そんな気持ちで背中を押したという。

その後も、安田隆行調教師は
弟子という距離ではなく、1人のトップジョッキーとして
川田騎手と付き合っているという。

ただし、言葉には出さぬが
お互いの気持ちは伝わっている。

一昨年のホープフルS、
安田隆行厩舎所属のダノンザキッドで勝った際に見せた川田騎手の表情。


その裏にあった想い。
ダッシャーゴーゴー。
G1で2度の降着。
「GI馬になるのに相応しい能力を持っていた馬で、GIで二度も続けてご迷惑をおかけしたのに、先生は一度も僕のことを責めずに、そのまま受け止めてくださいました。本当にありがたかったですし、それ以上に申し訳なかったです。」

厩舎所属のジョッキーという距離感では、
きっと居た堪れなくなっただろう。

安田隆之厩舎と夢見る、
レッドルゼルとの3度めのフェブラリーS。

ダノンザキッド、
ダノンベルーガに続く、
川田騎手の3度めの安田隆之厩舎でのG1制覇。

定年間近の師匠に捧ぐ、
紅の情熱。
駒澤大学と同じ3度めの正直を、今ここで。

恩師、そしてそこにある距離感。
そこにあるのは遠慮ではない、2人のプロによる努力の賜物。
距離という魔物を超えていく。
来年、定年の師匠に結果で成果を見せてくれるはずだ。

2023年フェブラリーS
僕の本命は
15 レッドルゼル

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