ai

日々思ったことや小説を書いてます。 短編小説の連載をはじめました。

ai

日々思ったことや小説を書いてます。 短編小説の連載をはじめました。

最近の記事

小説『松子さんの結婚』9(完)

「だからまあ、周りが思ってるよりちゃんとしてるみたいだよ」 正司くんは『うんうん』とうなずきながら、再び日本史の用語集を開いた。 「だから俺もがんばろうと思ってるんだよね」 「がんばるって?」 「昔…子どものころに正太郎にいに話したことがあるんだ」 当時のことを思い出したのだろう。 用語集に目を落としたまま、正司くんはくすくす笑った。 「うんと小さい、小学校に上がる前のことだよ。俺、テレビでやってた東大受験のドラマに感動して、『大きくなったら東大に行く!』って宣言したんだ

    • 小説『松子さんの結婚』8

      「素直にお祝いできなかったのよ」 電車が隣町の駅を通過したころになって、わたしはそう言った。 日本史の用語集を見ていた正司くんは、わたしを見ることなく「ん?」と聞き返した。 3時台の電車はがらがらだった。 もともと、通勤や通学の時間帯しか電車は混まない。 田舎町を走る電車は、4人掛けの席を2人で占領してもまだ余裕があった。 玄米ソフトは電車に乗る直前にどうにか食べ終えた。 駅のゴミ箱にゴミを捨ててから、わたしたちは階段を上がってホームに出た。 始発駅なので電車はすでに到

      • 小説『松子さんの結婚』もくじ

        全9話

        • 小説『松子さんの結婚』7

          「玄米ソフト二つください」 注文している正司くんの声を聞きながら、わたしは天を仰いだ。 午後の空は、まだまだ明るい。 夏の気配がただよう空に、ジューンブライドという言葉がよぎった。 松子さんの花嫁姿はとびっきり美しいに違いない。 なのに、その隣にいるのが正太郎だなんて。 二人の姿を思い浮かべて、わたしは憮然とした。 そこに、正司くんが玄米ソフトを差し出した。 「まあ、機嫌直せよ」 片手で玄米ソフトを差し出しながら、正司くんは自分の玄米ソフトにぱくりとかじりつく。 わた

        小説『松子さんの結婚』9(完)

          小説『松子さんの結婚』6

          がたんという音で、わたしははっとした。 長机がかすかに揺れた。 端に座っていた正司くんが、鞄を机に置いたのだ。 彼は広げていたノートや参考書を鞄にしまいはじめた。 わたしは学習室の前方の壁にかけられている時計を見た。 今学校を出れば、3時台の電車に間に合うはずだった。 正司くんはその電車で帰るつもりらしい。 落ち着かないと思っていたけれど、いつの間にか勉強に没頭していた。 数学の問題がむずかしかったこともあり、すっかり時間を忘れていた。 家ではこんなに集中して勉強できな

          小説『松子さんの結婚』6

          小説『松子さんの結婚』5

          お弁当を食べたあと、わたしは一人で学習室に向かった。 弥生ちゃんもいっしょに来るはずだったのだけど、なんと彼女は明日のテスト教科の教材をごっそり忘れて来ていた。 「ごめんねー」と言いながら弥生ちゃんが帰ってしまったので、結局一人で勉強することになった。 学習室に行くのははじめてだった。 いつもは電車の時間になったら家に帰る。 でもきのうのことがあったので、今日は学校で勉強しようと思った。 松子さんや正太郎の顔を見たら、また集中できなくなるに決まっている。 学習室は職員

          小説『松子さんの結婚』5

          小説『松子さんの結婚』4

          その日はテスト3日目だった。 テスト期間中の一日は短い。 英文法、古文、家庭科の試験を終えたら一日が終わった。 ほとんどの人は昼ごはんも食べず、さっさと家に帰ってしまった。 電車通学の人や学校でテスト勉強をする人は、教室でお弁当を食べていた。 わたしは教室に残り、お弁当を食べていた。 自習のために居残っていた、友達の弥生ちゃんといっしょにだ。 「やす子ちゃんと正司くんって、幼なじみなんだよね」 弥生ちゃんは高校に入ってからの友達だ。 彼女の地元は高校がある町で、近くの商

          小説『松子さんの結婚』4

          小説『松子さんの結婚』3

          わたしが通っているのは隣町の高校だ。 毎日電車で30分かけて通っている。 高校は駅からも遠く、歩いて20分かかる。 通学に時間を取られるから、電車の車内も貴重な勉強時間になる。 けれど今日は、全然頭に入らない。 電車に揺られながら英単語帳を見てはいるものの、頭の中によぎるのは松子さんと正太郎の姿だけだ。 二人がいっしょにいるところを見たことはないからそれはあくまでもわたしの空想なのだけど、空想の中の二人もなんだか釣り合っていなかった。 どう想像しても、不自然だ。 松子さん

          小説『松子さんの結婚』3

          小説『松子さんの結婚』2

          「よお。やす子」 当の正太郎と顔を合わせたのは、翌日のことだった。 これもまた、テスト期間のせいだ。 勉強中の息抜きに店においてあるコーラをいただきに来たら、配達に来た正太郎と鉢合わせてしまった。 正太郎は近所にある酒屋の跡取り息子だ。 わたしの実家である居酒屋は、代々正太郎の店からお酒を仕入れている。 毎日のように配達に来る正太郎は、子どものころから顔を合わせる親戚のような存在だ。 正太郎はわたしよりも8歳年上だ。だから今年、23歳。 高校を卒業してすぐに実家の手伝い

          小説『松子さんの結婚』2

          小説『松子さんの結婚』1

          松子さんはわたしのあこがれの人だった。 幼いころから彼女にあこがれ続けて、中学のころは松子さんの髪形を真似てロングヘアにしていた。 けれどロングヘアは手入れが大変で、高校入学を期に髪をばっさり切ってしまった。 はじめは違和感があったショートヘアになじんできたころに、松子さんが結婚した。 それはわたしにとって青天の霹靂と呼ぶべき出来事だった。 「あら。やす子ちゃん」 いつも通りのおっとりした口調で、松子さんはわたしの名前を呼んだ。 松子さんがいると思っていなかったわたしは、

          小説『松子さんの結婚』1

          体の硬いわたしがリアルなわたし。

          この数日、オンラインヨガをやっています。 体が硬いわたしは、前屈ができません。 ほぼ直立姿勢のまま。かすかに曲がっている状態。 それでも続けているうちに、ほんのちょっとずつだけど体がやわらかくなったのを感じています。 体が硬いことは自覚していましたが、イメージの中ではもうちょっと前屈できると思っていました。 普通の人よりはできないけれど、イメージではもうちょっと背中が倒れるはずだと思っていました。 実際にやってみると、びくともしません。 頭の中で思い描いているわたしと、実

          体の硬いわたしがリアルなわたし。

          オンラインジムに悩む。

          オンラインジムをはじめようとしたものの、サービスに悩んでいます。 きっかけはこの前の3連休。実家で妹のやっていたオンラインジムを体験したのがはじまりでした。 大の運動嫌いなわたしは渋々参加したのですが、オンラインジムの効果は翌日に現れました。 体が軽い!すっきりする! これはいいと思い、わたしもオンラインジムを探すことにしました。 もともと本を見ながらヨガをしていたので、オンラインでヨガができるところを探すことにしました。 運動は苦手なので、初心者でもできそうなと

          オンラインジムに悩む。

          数年ぶりにnoteをはじめる。

          久しぶりにnoteをはじめることにしました。 数年前にnoteをよく書いていた時期があったのですが、(きっかけは忘れましたがなぜか)やめてしまいました。 今もブログは運営しているのですが、SEOを気にせずに書ける場所がほしくてnoteに戻ってきました。 noteではブログに書くほどではないことを書いていきたいと思っています。 とりとめのないnoteになると思いますが、よろしくお願いします。

          数年ぶりにnoteをはじめる。