長い夏の日は、自転車に乗って

1983年8月

九州の片田舎のデパートの屋上に、人気声優がやってくる。

ケンジは、友人の杉山君を誘って観に行く事にした。
夏の太陽は容赦なく照り付け、アスファルトは真夏の熱気でゆらゆらと揺らめいて見えた。
車道を行き交うトラックは、黒い煙を吐いて通り過ぎる。
排気ガスの匂いと、砂埃の舞う中
僕、ケンジと友人の杉山君は汗だくになりながら自転車に乗って、国道を北上していた。
「杉山君、今何時くらいかな?間に合うかね?」
「13時からのステージやっけん、余裕って思うっちゃんね」
「ごめんね、おっが遅なってさ」
「よかよか、しょんなかやん、いそごい」                       

約、15キロほど離れた隣の町まで、自転車以外の交通機関が無いわけでは無かった。バスだと片道360円 汽車だと片道250円
汽車に乗ると、駅から2~3キロ歩くことになる、それ以上に
少ない小遣いを少しでも節約して、グッズや漫画を買うのに回したいのが本音だ。

タオルで汗をぬぐいながら、黙々と目的地を目指す。
神○明、古川登○夫、三ツ○雄二、古○徹、○島裕
当時のアイドル声優が日替わりで、一時間弱のステージをこなす。
入場料は、1ステージ500円
僕と杉山君は、生の声優さんが見たい一心で自転車をこいで国道をひた走った。

僕と杉山君は中学で知り合った友達だった、小学校が別々だったためそれまで認識は無かったが、たまたま好きなアニメの話で盛り上がって良く話す様になった。

「中学生にもなって・・・」
周りから冷たい目で視られることもあったが、二人で好きなアニメの話をしている時間が大好きだった。

「さすがの◯飛見たね?」
「もちろんさ、三○矢雄二あっとるね。」
「島○冴子もよか〜、ばってん八○見乗児は外せんさ」
「松野達○ってさ、他なんか出とった?」
「しらん、新人らしかけど。同じくらいの歳、らしかね〜」
他愛もない話しをしながら、二人は自転車を漕いで走った。

高い建物が少しづつ増えてくる、目的地のデパートが近づいてきたようだ。

1990年 8月

ケンジは深夜のバイトを終え、自室のアパートに向かって自転車を漕いでいた。

あさ8:00
外はすでに明るく、通勤途中のサラリーマン達の間を縫って、軽快に自転車を走らせる。

朝の気温はまだ心地よい、Tシャツ1枚でも寒くはない。

アパートに戻って、服を着替えて部屋を出る。
そして再び自転車にまたがると駅に向かった。

私鉄を乗り継ぎ、山手線のホームへと向かう足は、少し早足になっている。

『間もなく2番線に、東京・上野方面ゆきの電車が参ります。黄色い線の内側までお下がり下さい。』
21歳になったケンジは、バイト明けの眠たい目をこすりながら、ホームに着くと、同じ劇団で知り合ったイズミが待っていた。
「おはよう、待たせちゃった?」
「ちょっとね。」
「ごめん、ごめん、急いで上がってきたんだけどね。遅くなっちゃって」
「それより、少しは寝たの?バイト上がりだよね、大丈夫?」
「大丈夫!このあと小屋入ってから、仕込みか。今夜のバイトはシンちゃんに代わってもらったけど、今日も仕込みで貫徹だよね。」
「ケンジ…眼の下クマにできてるよ~。倒れないでね、明後日から本番なんだから。」
イズミは、心配そうにケンジの顔を覗き込んでいる。

東池袋シアターブルー
小さな劇場。いわゆる小劇場と言われる芝居小屋である。
今日から1週間、劇場を借り切って仲間と一緒に自主公演を企画していた。

今、時代は小劇場ブーム。
『イカスバンド天国』『イカス映像ビデオ天国』イカ天、エビ天ブームに乗っかって、楽譜が読めない、楽器が出来ないケンジはお芝居の道を選んだ。

電車に乗って最寄りの駅で仲間と落ち合う。
明後日からの公演に向けて、大道具の設営、小道具の準備、チラシの折り込み、照明・音響の仕込み。その他もろもろ
すべて劇団員が自分たちで行う。
明日のゲネプロに備えて、やることは山積みである。

仲間と合流して劇場へ向かう。

1998年8月

熊本県の山中、ケンジは赤いマウンテンバイクにまたがって山を下っていた。

鬱蒼と生い茂った木々の間を、赤いマウンテンバイクは軽快に下っていく。その少し後方からは、青いマウンテンバイクにで竜一がついてくる。
それぞれ体にフィットするレーサーシャツを着こみ、ヘルメットをかぶってリズミカルに細い林道を駆け下りてくる。

頬をつたう汗が心地よい。

林道を抜けると、目の前に貯水池が広がる。かなり大きな貯水池であった。ペースを落としてゆっくりとしたペダリングで池の周りを流した。

「どげんや?久しぶりのダウンヒルは?気持ちよかろ?」
竜一が話しかけてくる、ケンジは呼吸を整えてそれに応える。
「良か~、気持ちン良かね。ようこげんか所ば知っとったね。今日は、誘ってくれてありがとうね。」
「この後、本田先輩たちと合流してバーベキューやけん、もっと楽しみばい。」
「そやね、合流地点にいそごかね。」

少しペースを上げたケンジに、竜一は負けじとペースを上げてきた。少し離れた河原では本田先輩たちがバーベキューの準備をしていてくれる。

2005年7月

シルバーのワンボックスカーに自転車を積み込む。
3列目のシートを立てて、大きめのシティーサイクルと白いママチャリ、補助輪のついた青い自転車。脇にB型のベビーカーを積んで。

目指すは森林公園、家族4人で森林公園にある大きな池の周りをサイクリングする予定だ。



失礼しました。
書きかけを思わずアップしてしまいました。
これは、いつ書いたんだっけ?

もう少しまとまってから上げようか、葬り去ろうか迷っていたのですが…
急いで保存したら、アップしちゃった。
ごめんなさいm(_ _;)m

私の妄想日記ってことで。

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