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官僚を目指した話 国家総合職教養区分受験記②二次試験

ご無沙汰しております。初めましての方は初めまして、X(旧Twitter)のFFの皆様はいつもお世話になっております。さて、この度私Noahは、幸運なことに国家公務員総合職試験教養区分一次試験に合格し、11月25日および23日に行われた教養区分二次試験を受験いたしました。

一次試験同様に(とはいえ身バレ防止のために所々ぼかすところがあるのはご了承ください)実際に受験した体験をここに綴ろうと思います。相変わらず拙い文章ですが、どうかお付き合いいただけると幸いです。


二次試験の概要

体験記を書く前に、ざっと試験内容の概要について触れておきたく思う。正直他の受験体験記にも書いている内容なので、もう知っているという諸兄は読み飛ばしていただいて構わない。

教養区分二次試験は、土日の2日間を使って行う試験で、1日目に企画提案試験(プレゼン)、2日目に政策課題討議試験(グループディスカッション)と人物試験(面接)を行う。企画提案試験は12点満点で、政策課題討議試験と人物試験はA〜Eの5段階で評定が付けられ、前者で4点未満もしくは後者のいずれかでE判定がつくと他がどれだけ良くとも問答無用で不合格になる。

以下に各試験の概要を記す。

企画提案試験

要するにプレゼンテーション試験。一次試験の合格発表後に提示される参考資料数本(今年は偽・誤情報対策関連の資料)から本番で出される問題を予想し、いくつか政策案を用意して挑む(のが主流だと思っている)。

試験当日はまず午前中に大部屋で政策課題文と参考資料を与えられ、A4両面のプレゼン用紙に自分が考える政策を1時間半で書く。

その後昼食を挟み、午後からはいよいよ本番のプレゼンとなる。受験生数人が集められた部屋で10分間の準備時間を与えられた後に受験生1人に対して試験官2~3人が配された部屋に分かれ、プレゼン5分と質疑応答20分をこなすことになる。

政策課題討議試験

民間のグループディスカッションとそこまで形式は変わらない……と思う。ざっくりいうとある政策課題に対して2つの立場(大体賛成と反対。ただし今回はイレギュラーパターンだった)が提示され、どちらの立場に立つのかやその際の政策の留意点(賛成側)や代替策(反対側)も含めたレジュメを作る。そしてそのレジュメを元にディスカッションをするというものである。

具体的な流れとしては
①大部屋で課題用紙(参考資料付き)とレジュメ用紙が配られ、30分で課題読解とレジュメ作成をこなす
②一旦課題用紙とレジュメは回収。少しの待機時間の後ディスカッショングループ(5人か6人)ごとに小部屋へ案内される
③最初に各人3分の時間が取られ、自分の立場とレジュメに書き込んだことについて発表
④全員発表が済んだら45分の議論スタート。この時間の間で各立場から政策についての疑問点や改善点を徹底的に洗い出し、双方が合意できる結論を出すことを目指す。
⑤議論を通じてどのように意見が変容したのか、自分で議論を通じて考えたことは何かなどを各人2分で発表。

というものである。大体全部合わせて1時間20分くらい。試験官がモタモタしてたらもうちょい延びる。

多分一番対策が難しい試験。何せディスカッションテーマは当日に提示され、たったの20分で自分の考えをまとめてA4用紙1枚分のレジュメを作成しないといけないのである。友人などと普段から色んなことを議論する習慣をつける、過去問を見てレジュメを作成する訓練をするくらいしか出来ることはないと思う。

人物試験

正直書くことがあんまりない。面接カード(下に貼った画像)に予め回答を書き込んでそれを提出し、それに沿って面接官3人(人事院1人、他省庁からの応援職員2人)から20分程度質問される。

ごく稀に来る突飛な質問以外は本当に面接カードに書いたこととそれから発展させた質問しか来ないので、人によっては民間企業の面接よりも御し易い。想定問答集をある程度作っておくとよろし。

今年のやつではないが質問内容は使い回……全く同じ

二次試験までの過ごし方

人物試験対策

10月18日、無事に自分の番号が人事院の掲示した合格者一覧に刻まれているのを目にしてホッとした私はすぐさま二次試験対策に取り組んだ(というか予備校から尻を叩かれた)。

まず最初にやったのが一番取っ付きやすい面接カード対策。今年からは面接カードが手書きでなくてpdf上で入力してそれを印刷、でもオッケーになったので大いに助かった(私は極めて文字が汚い悪筆であるので……)。

幸い大学生活で色々やってたため書けることは割とあり、更に安全保障という民間で代替することが極めて困難な志望動機だったのもあって面接カードの作成自体はスムーズに進んだ。

数回添削を出して友人と組んだ自主ゼミや予備校で、あとは京僚会で面接練習をこなして『もう大丈夫』という太鼓判を得て、面接対策は終了。想定問答集もちょっと作ったが、京僚会の人から『想定問答集作りすぎると読み上げてる感じがするから程々にね』とのアドバイスをもらいそこまでガチガチには固めなかった。演技力が高い人ならガチガチに固めるのもアリ。ここは個人差があると思う。

企画提案試験対策

何だかんだ一番時間をかけたのがこの企画提案試験対策であった。私は一橋大学の方で『偽情報と民主主義』というプログラムに参加しており、既に偽情報に関する知見がある程度あったので資料収集や知識の整理は案外スムーズに行うことが出来た。が、肝心の政策の用意に関しては大苦戦し、結局試験までに用意できたのは『プラットフォーム事業者に対する規制法案』・『学校や企業に対するリテラシー教育』・『政府における偽情報対応・分析機関の創設』・『ファクトチェック団体の量的・質的拡充』の4つしか用意できなかった。

尤も、今年は題材が中々タチが悪く(試験で求められている行政が主体となる政策は結構な確率で表現の自由やプラットフォーム事業者の営業の自由と衝突することが大きい上に、先行事例が乏しく題材の専門性も高いのでポッと出の政策が打ちにくい)、他者との差別化が難しそうだなという感想を抱いた。

ともかく用意した政策を携えて、予備校の模擬1回と京僚会の模擬1回、後は有志で組んだ自主ゼミで3回ほど練習をした。そこで穴がある部分について詰めてもらい、練習後に修正するという作業を繰り返し、先述した4つの政策を以て本番に挑むことになったのである。

政策課題討議試験対策

ディスカッションの練習を重ねた。以上。それ以外やることがない。

これは面接についても言えることだが、余裕がある人は民間企業のグループディスカッションとかにも参加しておくといいかも。

二次試験当日(一日目)

①試験前

一次試験同様集合時刻は朝9時である。但し会場は地下鉄乗り換え2回を挟ませる立地の大学だった一次試験と違い、新快速が止まる超便利駅新大阪の駅チカビルだったので若干ゆっくり寝ることができた。ちなみに前日は京大の11月祭へ高校同期に会いに行っていた。北部祭の飯のレベルが異次元に高かったです。

それはともかく。5時に起床し朝食を摂った後にスーツを着込み、準備を済ませて家を出て、新大阪に着いたのは朝7時半ごろ。流石に会場に入るには早かったので新幹線改札前のスペースに腰かけて事前に用意した政策の見直しや想定問答集の復習をしながら時間を潰し、集合時間30分前に会場入り。

私の席は前から3番目。この席順はそのまま企画提案試験の順番となるため、比較的早めに試験が済みそうなことに一安心した(事前にこの『企画提案試験の待ち時間』が教養区分二次試験で一番つらいと聞いていたので)

②企画提案試験

前半『レジュメ作成』
受験者全員が集合し、諸確認が済むとまずは企画提案試験の前半、企画レジュメの作成パートが1時間半で始まる。課題文と参考資料が配られ、試験開始の合図と同時に一斉に作成開始。
今年のテーマは『各個人が身に付けるべきICT活用のためのリテラシーの向上及び偽・誤情報による弊害を防ぐための具体的施策を提案せよ』というものであった。概ね事前の予測通り、リテラシーについて触れろと指定されているのは予想外だったがその政策についても用意していたので無事対応できた。
ただそれまでレジュメ作成練習をA4用紙の目一杯を使ってやっていたのに対して、本番のレジュメ用紙はA4用紙の中に枠が書かれており、そこに書き込む形式だったので若干詰め込まないといけなくなったのはやや焦った。ともあれ、一つ目のリテラシー教育を40分程度で書き切り、2つ目の施策をどうするか5分程度悩む。結局一番詰めていたプラットフォーム事業者に対する規制法案についてこちらも40分程度で書き切り、何とかレジュメ作成は終了。

後半『プレゼン発表』
昼を挟んで午後からは書いたレジュメに基づいてプレゼン発表。先述した通り席の前の方から順番に案内されるのだが、自分の順番が来るまでの待機時間がかなりキツい。と、いうのも『資料を参考したりすれば順番が後ろの受験者が有利になり、試験の公平を害することになる』という理由でこの待機時間は読書禁止スマホ禁止、更にはトイレに行くのすら挙手の許可制という筆記試験中かと思うようなレベルの虚無待機時間を過ごすことになるからである。
大体1人当たり準備時間10分+発表時間5分+質疑時間20分+移動その他5分の40分かかるので、3番目の私は大体1時間半待たされた。発表前の緊張と何も出来ないストレスとで正直参っていたが、自分の番が回ってくると気持ちを切り替え、準備室へと向かった。
10分の準備を済ませ、小部屋に移動するといよいよプレゼンスタート。正面には電子式のタイマーがあり、時間の心配はしないで良かったのは助かった。ほぼ5分ピッタリ使って発表を済ませた後、試験官からの怒涛の質疑が始まった。政策のコスト面や実施スパン、既存政策との差別化点などかなり細かいところまで詰められ、ずっと分かったような分からないような顔をしている面接官の姿も併せて正直な話はよ終わってくれと試験時間中祈っていた。
しかし何とか全部の質問にある程度論理的(だと思いたい)に返すことができ、『分かりません』という返答はすることなく1分オーバーくらいでプレゼンは終了。会場から退出した時にかなり大きな安堵の息を漏らした。

取り敢えずそこまで大きな失敗をしなかったと信じることにして、その日は早めに帰路に就いた。翌日の政策課題討議試験と人物試験は正直消化試合だと思っていた。

二次試験当日(二日目)

①試験前

私は午前実施だったので、前日同様朝5時に起床し、全く同じ旅程を辿り新大阪へ。何度でも言うけど神戸会場を作ってほしい、切実に。待機場所に着くと、どうやら前日とは席が違うらしく結構後ろの方に席が移動していた。

これは余談だが、企画提案試験で激詰めされて完全にポッキリ心を折られて二日目を欠席する人がいるらしいと事前に聞いていた。蓋を開けてみると十数人規模でホントに休んでてビックリしたのをよく覚えている。

②人物試験

午前実施組はまず人物試験である。席がズレたおかげで自分は前日よりも後の順番になることに。1人当たり20分ほどの時間を取られるので、私の番が回ってきたのはちょうど1時間程たった後だった。この待機時間、前日の虚無待機時間と違って本を読んだり飲み物飲んだりとかなり自由だったのでそこまでストレスはなかったが、緊張で胸がバクバクになって本を読むどころではなかった。

係官に案内され、面接の部屋に入る。着席を勧められ席に座るなり、『緊張してますか?』と問われたので正直に『結構緊張しています』と答えると『リラックスしてください、素のあなたを見せて欲しいです』と言われた(が、人生かかっている以上そんなもん無理な話である)。面接の内容は驚くほど事前に提出した面接カードに沿って行われ、虚をつく質問やストレス耐性を見るための質問などは一切なかった。正解がないというかとんちみたいな問題はあったが。終始和やかな雰囲気で面接は進み、20分ちょうどくらいで面接は終了。

分量的には殆ど『学業に関する事項』『社会的生活に関する事項』『趣味や日常生活に関する事項』の3つが均等に質問された。かなり推敲した志望動機について全く触れられずに終わったのでちょっと不安になった(後で話を聞くと大阪会場で受けた受験生の殆どがそうだったらしく、方針的なものがあったのかもしれない)。

これは午後実施組の友人から聞いた話だが、午後組は人物試験が後ろに行ったので終わり次第さっさと帰ることが出来たらしい。本を読んだりと前日の何もできない虚無待機時間と比べれば割と自由だったので良かった。ちなみにこの間に性格診断試験があったが、大体自動車教習所とかでやるようなのと同じなので割愛する(たまに統合失調症を炙り出すようなヤバい質問があるくらい)。

③政策課題討議試験

人物試験後は政策課題討議試験。今年のテーマは所謂『買い物難民』について。争点はこれらの買い物難民への支援を国や地方自治体が積極的に支援するべきか(立場A)国や地方自治体の関与は最小限にして民間事業者に委ねるべきか(立場B)だった。私は立場Aを選んだ。書いてる途中にシャーペンの芯が詰まるというアクシデントがありつつも、何とか書きたいことまで含めて30分で書き切ることに成功。

しばらく待機した後、各グループごとに部屋に分けられた。私のグループは1人欠席者がいたため5人1組で討議スタート。この時グループには予備校で知り合ったA君とR君がおり、この時点で政策課題討議試験は貰ったなと確信した。

私を含めた4人がAの立場を、1人がBの立場を取っていたが、今回は立場が賛否で分かれておらず、どちらかというと行政の関与の度合いというグラデーションの上で立場をどうするかという違いとなっていたため、妥協案を練りやすかったように思う。

【共通認識のすり合わせ】
①最初に『地方部の買い物弱者と都市部の買い物弱者のどちらを重視するか』という話になり、一先ずメインを『地方部の買い物弱者』とすることを決定。
②AもB、どちらの立場を取るにせよ行政の支援自体は必要であるという意見は一致したため、具体的な施策検討に移行。ここまで凡そ10分程度

【各施策についての詳細検討】
参考資料や各人のレジュメに示された各施策案などを検討し、議論する論点を①移動販売事業②交通インフラの整備③貨客混載バスやタクシーの整備の3つに絞ることを決定。 
①移動販売事業
参考資料に移動販売事業の成功例が記されていたので、これを参考に議論を深掘りした。行政は老朽化した市営バスの車両などを安く事業者に払い下げたり、バス停留所の使用を許可するなどの形で支援したりすることが可能であるという形で一致した。また、参考資料で挙げられているような成功例について国が主体となって調査及びマニュアル化を行い、都道府県に対して各地域の地理的特性に合わせて改良されたマニュアルを配布するという形で移動販売事業を広めていくことが重要であることで一致した。
②交通インフラ整備
鉄道やバスなどの既存の交通インフラが撤退しないようにしっかり行政が下支えしていくことが重要であるという話が出た。変電施設の増強や駅間距離の改善、和歌山電鐵の成功例などを参考に地方鉄道の収益性と利便性を高めることで撤退することを予防し、これ以上の買い物難民発生を抑制することが重要であるという認識で一致した。
③貨客混載バスの拡充
地方は人口減少においてバスの乗客減少に苦しんでいるので、いっその事乗客を乗せる部分を減らしてその分を貨物スペースに割いた形でのバス運用を提案した。

【まとめ】
ここまでで35分程度。10分ほど残ったので、議論のまとめをした上で『都市部の買い物弱者』の検討に移行。あまり時間もなかったので『郊外の買い物インフラ自体の強化と都心部のインフラ延長』という案を手早くまとめて時間終了。

議論後の意見発表でも概ね意見は一致しており、試験官の反応を見るにそこまで評価は悪くもない、というかかなり深いところまで突っ込んで議論ができたのでそこそこいい評価がもらえたのではないかと感じている。議論を引っ張ってくれたA君とフォローが神がかっていたR君に感謝の気持ちしかない。

④試験後(余談)

全部合わせて2時頃に終了し、その場で解散。ここまで昼飯抜きなので猛烈にお腹が減っていたため、ディスカッションで一緒だったA君とR君、そして彼らの友人を加えた4人で新大阪駅の串カツ屋に直行し、皆で無事に試験を終わらせたことを祝して乾杯。ジョッキを掲げた時に『やっと終わったかぁ』と何とも言えない感慨に浸っていた。窓際に席に座っていたが、真昼間からスーツを着込んで串カツ片手に酒を飲んでいるサラリーマン風の集団(中身は大学生)の姿が珍妙だったのか、通行人からやたらと視線を集めていた気がする。

手応えを聞くと全員口をそろえて『企画提案で足切られてなかったら多分受かってるんじゃね?』とのこと。結構細かいところまで詰められた人もいたらしく、自分はまだマシだったのかとハッとしたことを覚えている。

私以外の3人は京大生だったので京都に帰る彼らを見送りつつ、私も神戸へと直帰し、その日は家でさらに酒を流し込んで布団に倒れ込み爆睡した。

終わりに

大きな失敗もなく二次試験を終えることが出来て、個人的には満足なパフォーマンスを出せたかなと思います。思えば官僚を志して早3年が経とうとしており、その道への切符を手にするまであと少しというところまで迫っているのがまだ信じられない気持ちもあります。

予備校の講師陣、様々なアドバイスを下さった京僚会の皆様、模擬練習から本番まで手厚く助けてもらった友人たちには感謝をしてもし切れません。まだ結果は分かりませんが、どのような結果が出たとしても、その結果に真摯に向き合い、将来に活かすことが出来ればよいなと考えております。今は、12月13日の結果発表を座して待つことしかできませんが……

相変わらずの冗長な駄文でしたが、①と併せてここまでご笑覧いただいた読者諸兄も誠にありがとうございます。①でも申し上げた通り、教養区分試験の受験によって国家公務員、官僚への道を志そうと考える人にとって、この文章がその一助となればとてもうれしく思います。

(追記:教養区分最終合格してました。これについても後日noteを書こうと思います)

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