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短歌:そういう気分

いつもより十分余計に歩いても今日は路面電車に乗りたい/銀猫
いつもよりじっぷんよけいにあるいてもきょうはろめんでんしゃにのりたい

 わたしが育った家からの最寄り駅は、地下鉄の駅です。ふだんはだいたいどこへ行くにも、まずはそこから地下鉄に乗って出掛けました。
 ですが、多少歩くことを厭わなければ、路面電車の電停もあります。そこまで徒歩二十分くらいでしょうか。

 わたしは小さな頃から路面電車が好きで、二歳のときには勝手に自宅を出てひとりで電車を見に行き、当時の若き母が肝を冷やしたことがあったそうです。もっともその頃住んでいたのは現在の実家ではなく、もっと近所を電車が走っていた場所にあった家でした。記憶はありませんが。

 まだ実家住まいだった頃、何か考えごとをしたかったり、ひとりになりたかったりしたときは、路面電車に乗りました。歩きながら考えたり、流れる風景を見ながらぼーっとしたりしていました。地下鉄には景色がありませんから、こんな些細なことで気分転換ができていました。

 いまのこの家に住んでからは、滅多に路面電車に乗らなくなりました。また電停の近くに住んでみたいなあ、なんて、ときどき思います。

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