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短歌:孤独な庭

主人逝き女主人も帰らないでも花たちはけなげに開く/銀猫
あるじいきおんなあるじもかえらないでもはなたちはけなげにひらく

 父はずいぶん前に他界し、母は独居が難しくなり施設のお世話になっています。住む人がいなくなった実家を放っておく訳にもいかず、定期的に様子を見に行っています。

 かつては、植物の専門家であった父方の祖父が作り上げた見事な庭があったのですが、祖父の死後、その面倒を見切れなかった母(父はもともととする気などなく)が、独自の嗜好で独自に開拓した庭のようなものが残されています。

 それでも母は花好きなので、祖父が植えた花をそれなりに残しつついろいろな花を植えました。春になるとそれらが次々と咲き、一気ににぎやかになります。

 ちなみに、北国の花たちには咲く順番などありません。桜も梅もチューリップもムスカリも、ほとんど同時に次々と咲くのです。

 先日、庭を見てみると、クロッカス、チューリップ、ヒヤシンス、ヒマラヤユキノシタなどが満開になっていました。

 わたしの中で母という存在は人生最大の悩みではあるのですが、庭を見ていると、

あなたたちを愛でる人がいなくてごめんなさいね。

と、ちょっぴり花たちに申し訳ない気持ちになったことは事実です。


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