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厳しさの裏に隠れた本質、そして愛情~「20代で身につけるべき『本当の教養』を教えよう」~

 優しい嘘で誤魔化されることと、厳しい現実を突きつけられること、どちらがお好みだろうか。
 或いは、どれだけ出来ていなくても小さなことを見つけて褒めてくれることと、出来ていないことに対し正面から「出来ていない」と指摘し、改善点を提案されること、どちらの境遇に立ちたいだろうか。
 人それぞれ、状況にもよるだろうから、回答にはきっとばらつきが出るだろう。
 しかしもし、貴方がどれだけ厳しい言葉でもいいから金言、箴言が欲しいとお望みなら、こちらの本は如何だろうか。


「20代で身につけるべき『本当の教養』を教えよう。」(著:千田琢哉、学研プラス)

読もうと思ったきっかけ
 この著者の別の著作「作家になる方法」という本を読んでいて、この本から本格的に自分の書きたいことを書くようになったという旨を述べていたので、どういう内容かが気になった。「作家になる方法」も厳しいことを書いているが面白味のある本だったので興味が沸いた。
 それと、もう遅いかもしれないがギリギリ20代の内に読んでおきたかったというのもある。

どんな内容の本か


 文字通り教養についての本であるが、世間一般で言われている教養とは少し違う。本書で言う教養とは、l著者の思う「皆が話さない、人によっては不都合な真実」のことだ。
 所謂上流階級は何を判断基準にしているか、どういう人間と付き合い、どういう人間を排除しているのか、上流階級に潜り込むために必要な「教養」とは一体何で、どのようにして身に付ければよいのか、といったようなことが、十のセクションに分けられ十個ずつ、合計百個掲載されている。

個人的な感想


 正直な話、とても読む人を選ぶ本だと思う。実際、Amazon等のレビューも真っ二つに分かれていた。
 理由としては、著者の文章が高圧的に映り、ものによってはかなり極端な思想が垣間見えることが挙げられると思う。
 じゃあ一体、お前はどういう感想を抱いたのだと言われれば、一言で言えば「愛に溢れた一冊」と言える。
 ここで言う愛とは、何をしても全てを受け入れてくれるような愛情ではなく、多少傷つけたとしても忌憚ない言葉で現実を突きつけ導こうとする、厳しさの中に見え隠れする愛情のことである。
 なんでもかんでもMBTIに結び付けてしまい申し訳ないが、私はこの著者をINTJだと推定する。根底に流れる価値観が、私とよく似ている(四流どころか五流の人間にこんなことを言われたくないと思うが)。
 全てを挙げようとするとキリが無いので一例を。教養とは学び続けることという意味でもあるので、学びに対する姿勢も論じている。その中で著者は全ての学びは繋がっていると言い、勉強すればするほど理解が早くなり楽しくなる。きっと、受験勉強が楽しくて楽しくて仕方がなかった人も居たに違いないと、今では思うと語っている箇所がある。
 私は常々思っていたのだ。皆勉強が辛い苦しい、出来ることならやりたくはないと言うが、学びたくて仕方なく、楽しんで勉学に励んでいた人だってきっと居たのではないか、と。分からないことが分かる瞬間の快感に勝るものは無いと、貪欲に知識を吸収し続けた人だって居ただろうと、そう思っていた。
 勿論そういう人たちというのは実際に居て、偉大な成功者達はそういう人だったのだろう。
 著者はどの本でも学歴の高さが必要であるということを説いているのだが、学歴が高い=そういう貪欲に知識を仕入れたがる努力家、教養人である可能性が高い、という図式が成り立つからこそ言っているのだろう。蓋を開けてみればその限りではないのだろうが、少なくとも、外から見て客観的に分かりやすい勤勉さ、継続力の高さの指標は学歴である、という主張に私はそこまで違和感を覚えない。
 こういった賛否両論ありそうな話を、言葉を選ばず主張する様は、人によっては「偉そう」「上から目線」と思うだろう。実際「言い過ぎじゃない?」と感じる場面はそれなりにあったし、元々偉そうな言説が苦手でこういう本を避けてきていたから、その気持ちはよく分かる。
 しかし、私はこの著者に対して嫌悪感よりも親しみを覚えた。それは根底の思想が似通っていそうだから、というのも勿論あるが、誤解を恐れず毅然とした態度で現実を突きつけてくれるところに好感を抱いたのだ。そしてそこに、人と違う形の愛を見た。

まとめ


 実際に本書を読み、著者の魅力の一端に触れて欲しいのだが、如何せん万人受けするかは分からないところにジレンマを覚える本だった。
 好みに合うかは分からないけれど、非常に学べる箇所が多いので、興味を持ったら是非読んでみて欲しい。
 厳しい言葉の中に、貴方を救う言葉がきっとあるはずだ。
 私もいくつもの言葉に救われる思いがした。つぶさに語ることはしないが、この記事を通して本書を読んでくれた貴方が、私と同じ想いを抱いてくれたのなら、万感の思いでいっぱいだ。


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