【詩】香り
2年前に書いた詩のようなもの。香りは人を、街を、過去を思い出させる。依存していた主治医のこと。大好きだったあの子。苦しかった日々でも、時々変にあたたかかったかのように錯覚することもある。そんな感じのこと。
香り
絡まったイヤフォンをいじりながら
BGMで街を遮る
見慣れた景色を眺めながら
前の人に倣って傘をさす
リアルのようなフェイクのようなそんな日々
涙はいつの日か枯れ果てた
木々は喋らず目もくれない
雨だけが僕に寄り添った
角を曲がるとあの日の香りがした
あの日の彼女の香りだった
甘くて優しくて頼もしい香りだった
僕はそれを追った
会いたい
寂しい
苦しい
切ない
息のし辛さが僕を訴えた
辛かったはずのあの日が
なぜかあたたかく感じられた
形のないそれを手にすることは
できなかった
僕の判断は正しかったはずなのに
大きな過ちを犯したような気がした
会いたい
それは罪深い感情であった
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