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精神科や閉鎖病棟のリアル

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10代の頃から精神科に通院し、閉鎖病棟への入退院を繰り返してきた私が考える、精神科のリアルについてお話ししています。
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この世界の端っこの鍵のついた部屋のお話。

誰にでも「嫌いな音」というものは、あると思う。特にトラウマや精神疾患を持っている人は、怒鳴り声や人混みの中のざわざわなど、様々な「できれば避けたい音」があるのではないだろうか。私にも、ある。ある日までは、1番嫌いな音は、「母が自室に近づいてくるスリッパの音」だった。子どもの頃から、夜寝ている時もその音を聞き分け、「何をされるのだろう」と震えていた。 そんな私が今1番嫌いな音は、閉鎖病棟で隔離される時に、看護師さんが閉める鍵の音だ。 その音が聞こえると、私は自分の力では部屋

「底無し」の寂しさ

「あなたの持っている寂しさは、他人(ひと)には埋められないよ」 この言葉は、初めての入院の時にベテランの看護師さんから言われたものだ。20歳になりたてだった私には、この言葉の意味は全くわからなかった。 私は、いつでも「誰か」に依存することで、自分の寂しさを埋めようとしてきた。友人・好きな人・教師・カウンセラー・養護教諭。特定の1人を決め、その人に依存した。依存の仕方も言葉で伝えるならともかく、私の場合は自傷をすることで気を引こうとしたり、相手を困らせることで自分への愛情を

私の人生の主人公は精神科医なのか?

※私の出会ってきた精神科医の話なので、全員に当てはまるわけではありません。 今、私はとても感情が動いている。この感情に名前をつけるとしたら、「怒り」「失望」「絶望」辺りだろうか。 今日、診察があった。そこでSNSやブログを始めたことを、やっと言った。これまで言わなかった理由は、99%反対されるだろうと思っていたからだ。 悲しいことに、希望の1%にはならなかった。 「気分の波がある人は、SNSや発信をやらないでください。」 とはっきり言われた。 悲しかった。悔しかった。

ダブルマイノリティの生きづらさ

私は精神疾患を持っている。それに加えて、LGBT当事者である。このように複数のマイノリティ性を持っていて、生きづらさを抱えている当事者を「ダブルマイノリティ」というらしい。今回は、私が感じる「ダブルマイノリティ」ならではの生きづらさをお話ししようと思う。 1番大きな生きづらさは、「どのコミュニティにも入りづらい」ということだ。例えばLGBT当事者の集まりに行くと、 「普段はどんなお仕事をしているんですか?」 と聞かれる。それに対して、 「精神疾患を持っていて療養中なんです」