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女子高生がHMDをかぶる未来は来るのか

先日の記事で、シフカのデザインチームが定期的に開催している情報交換会の様子を紹介しました。

その日の情報交換会ではヘッドマウンドディスプレイ(以下HMD)が話題となりました。HMDの完成度は着実に向上しているものの、まだ世間一般に浸透したとは言えない状況です。上記の記事内でも「女子高生に流行ったら世間でも流行る」という流行のバロメーターを例に挙げ、「今のHMDを女子高生がかぶるとは思えない」というコメントが出てきます。

HMDが世間的に盛り上がらないとなれば、シフカが期待しているAppleのVision Proの成功もおぼつきません。実際にはAppleの精鋭たちが画期的な企画を考えているはずなので我々が心配する必要は無いのでしょうが、せっかくの機会なのでHMDが世間で受け入れられるようになるためのアイデアを、件の情報交換会に出席していないスタッフにも聞いてみましょう。


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HMDってどう?

早速、今のHMDについて女性イラストレーターに意見を求めると、開口一番「見た目が怖い」という辛辣なコメントが。現状のHMDは見た目が無機質過ぎて可愛げがないと感じるそうです。他のスタッフからはシンプルなカッコよさに振っているのだとの擁護も出ましたが、デザインが今より可愛くなれば女性からの興味も増すはずという指摘は確かに同意できるものでした。

またHMDが顔、とりわけ目を覆ってしまうことへの抵抗感を指摘する意見もありました。同じく顔を隠してしまうものとしてマスクがありますが、そちらは抵抗を感じないそうです。その差はどこから来るのでしょうか。

目は一番盛れる場所、メイクの腕の見せ所でもあります。逆に目から下、顎のラインにかけてはどうしても骨格としての立体感があるのでメイクでカバーが難しい領域。結果として、勝負どころの目を隠しウィークポイントのフェイスラインだけを外に晒してしまうHMDは、他人がいる場面で装着するのが怖いと感じてしまうのだとか。なるほど。

その女性イラストレーターも、情報交換会の記事中で紹介されていた「炊事をしながら動画を見る」という利用例には大きな魅力を感じたそうです。

料理しつつスマホでレシピ動画を見ることが良くあり、その際に濡れた手で操作するのにストレスを感じたとのこと。そのため紹介例のようなHMDの便利な使い方には心が動くものの、HMDをかぶっている自分の姿を想像するとやはり手が出ないと話してくれました。


キモズムを越えて

「新しいテクノロジーへの心の抵抗」がHMDの普及を阻んでいる一因ではないかと指摘する声もありました。新しい技術が登場した際には、その技術に夢中になっている人に対して否定的な目が向けられる傾向があります。

これをGOROman氏は「キモズム」と名付けました。新しい技術=キモい、という図式ですね。そしてこの新しい技術が何らかのイノベーションを得てキモズムを超えた瞬間に「モテ化」する、つまり一気に普及するという主張です。

例えば、個人向けのコンピュータがマイコンと呼ばれていた頃に嬉々として利用していた人たちは変わり者扱いでしたが、利用しやすいOSやアプリケーションの登場を経てパソコンと呼ばれる頃には多くの人に受け入れられ、今では誰もが当たり前に使うものとなりました。

ポケベルは当初電話からポケベルへ合図を送る機能しかなく、業務上必要な人だけが使うもので、持たされた人には同情が寄せられることもありました。やがて10文字程度の数字が送れるようになると、それを文字として読み替える使い方が編み出され、学生同士が夢中でメッセージを送り合う青春の必須アイテムになったのです。

どちらの例も新たな技術がキモズムを超えた事で広く受け入れられ、見慣れた光景となって「モテ化」した例ですね。

現在のHMDは、まだ一部の新しい物好きが利用するものとして位置づけられている状況でしょう。そのため冒頭でも指摘されたような様々な要因で遠ざけられてしまうのだとも言えます。

どうにかしてキモズムを超え、世の中に当たり前のものとして浸透させるためのキッカケが必要です。では何がそのキッカケになるのでしょうか。


HMDを当たり前の存在に

HMD自体が今よりずっと軽く、小さくならないと食指が動かないというのが多くの方の本音でしょう。眼鏡のような気軽さで利用できるのなら全く抵抗なく利用してもらえるはずです。

それが現状ではまだ無理となれば、まずは白以外にもカラフルなモデルを用意したり、人気作品とのコラボデザインがあると良いかもしれません。自分で好きにデザインをカスタマイズできると愛着が増すのではないかとの意見もありました。まずはHMDのデザインが変わらないことには女子高生にもかぶってもらうのは難しそうですね。

またHMDを目にしたり実際に触れる機会が増えることで心理的な抵抗が減るのではないかとの意見も。例えば「カッコいい使われ方をしているHMD」をよく目にするようになれば、自分でも使ってみたいと思う人が出てくるはずです。テレビや映画などでアイドルや俳優が当たり前のようにHMDをかぶっている姿で出てくれば効果的かも。

テーマパークのアトラクションでHMDが活用されれば、認知度や許容度が増すのではないかとの指摘も出ました。例えばTDLやUSJなどのアトラクションでHMDを楽しんだ人は、だんだんHMDへの抵抗がなくなるのではないかとの推測です。

いっそのこと、学校でHMDを学生に配るようになれば良いのではとの提案もありました。そうなれば確かに学生たちがHMDをかぶることに違和感を感じることは無くなりそうです。HMDなら理科の授業で太陽と地球の動きのような立体的な理解が必要な場面で威力を発揮しそうですね。

また人手不足の昨今、先生が足りていないという話が多く聞かれます。塾などで有名な教え上手の講師がHMDを通して授業を受け持ち、教室の先生は理解が追いつかい生徒のフォローに回るといった分担が可能になれば、先生と生徒の双方にメリットがありそうです。


HMDでしかできない体験を

HMDの存在を珍しくないものにする努力と並行して、体験できるコンテンツの拡充も求められます。

すぐに思いつくアイデアとして、やはりアーティストのライブは強力なコンテンツでしょう。最近はオンライン配信で数千円といったライブの形態も珍しくありません。その発展として空間オーディオと組み合わせた臨場感のあるライブ体験は一般の人にも想像しやすいはずです。実際にメタバースでのライブは盛んに行われていますので、HMDの入り口として期待が持てます。

リアル世界なのにバーチャル空間のような体験ができるコンサート会場としてラスベガスの「スフィア」が話題になりました。ぜひ現地で体験したいものですが、訪れるのが無理でもHMDなら疑似体験が可能です。

そこまで大掛かりな仕掛けをせずとも、本格的な室内管弦楽を高音質でじっくり楽しんだり、大好きなビックネームが目の前で歌ってくれるような体験も素敵です。レコーディングスタジオでの収録に立ち会えるような体験ができたら嬉しいとのコメントもありました。

また、博物館はHMDと相性が良さそうという意見も。今でも音声ガイドがありますので、HMDによるガイドも違和感なく受け入れられるはずです。

HMDで見ると展示品の周囲に説明が表示され、該当箇所を矢印で示してくれると理解度が増しそうですね。展示品が実際に使われている場面をアニメで表示したり、スペースの都合で提示できない収蔵品を参考表示することもできるでしょう。

展示品にあわせた演出を加えることも考えられます。以前、法要の際に仏像がドローンで浮上する演出をしているお寺が話題になりました。仏像は浮遊するだけでなくLEDによるライティングもされている凝りようです。

これは悪趣味なウケ狙いではなく、もともと雲に乗り「来迎」されるのが仏さまの本来の姿であり、その本来の姿に近づけるというコンセプトなのだとか。有名な仏像でも背後に後光の表現がされているものがありますね。

同様に、HMDを活用すれば「展示品が本来見せたかった姿」に近づけることも可能になるはずです。また、悠久の時を経て渋い色合いとなった彫刻や建築物を建立当時の色合いに戻すことも出来ます。廃墟となった遺跡に往時の街並みを重ねることだって不可能ではありません。HMDのおかげで展示品への理解が段違いに増すことに繋がるのです。

更に、人気のVtuberが館内を一緒にツアーガイドしてくれたら人気が出そうというアイデアも。これには「俺は是非とも山田五郎氏に説明してもらいたい」とのコメントが出ていました。どうでしょうか。HMDを使いたくなってきますよね。


HMDがある日常とは

様々な場面でHMDが活用されれば、普通の人もHMDを使うことを躊躇しなくなるはずです。そうなれば、あとは日常的に使えるようにするだけです。女子高生が毎日HMDを利用する生活とはどんなものになるのでしょうか。

話を聞いた全員が一致したのは、結局のところコミュニケーションツールが一番強いという点です。若い子の間でBeRealが流行してるのも、他愛もない日常が共有できるのが良いからだと言います。あるスタッフの娘さんは、スマホで音声通話を繋ぎっぱなしにして友達と他愛もないおしゃべりをしているそうです。

これに関しては最近の子に限った話ではなく、「友達とずっと話していたい」という需要は昔からあったとの指摘が。あるスタッフは学生の頃、学校から帰宅したあと友達と毎日4〜5時間は電話で話していたそうです。もっと年配のスタッフは料金が高額になるので電話は使えず、代わりに「シチズンバンド」を使って夜な夜な友達と話していたのだとか。

ポケベル、ケータイ、スマホにLINEと、最新の技術もコミュニケーションに使われてきました。今のスマホならビデオ通話でお互いの顔を見ながら会話することも可能ですが、それでも音声のみで繋がることを選ぶことにこそ意味があるはずとのコメントも。

面と向かってではなく、いつも隣にいるような関係性が良いのでしょう。HMDでも、まるで隣にいるように感じられる相手と他愛もないコミュニケーションができるサービスが重要になりそうですね。

またメイクしながら話すといったような「ながら利用」も大事な要素のようです。無音だと寂しいので音楽をかけるのと同じような感覚で友達と繋がっているのかもしれません。相手も同じ感覚だからこそ、悪い気もせず会話に付き合ってくれるのでしょう。

現在のHMDは装着するのに一手間必要なことから、この「ながら利用」には壁があるのが実情です。この壁を超えることができれば、女子高生が日常的にHMDをかぶってくれる日が来るに違いありません。

これまでも多くの便利で高機能な技術やサービスが、キモズムの壁を超えられず消えていったはずです。HMDにはその轍を踏まず、ぜひとも「モテ化」に至ってもらいたいものですね。


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いかがでしょうか。今回はHMDが女子高生の間で流行るためのアイデアについてスタッフの意見を聞いてみました。

色々な意見が出てきましたが、女子高生からは遠い位置にいるスタッフたちが出したものなので、どれも夢物語なのはやむを得ません。こうなったら、当人たちの話を聞きたいですね。読者の中に現役の女子高生さんがいらっしゃいましたら、是非ともコメント欄で意見や感想をお聞かせください!


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