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デザイン力を身につけるには

GWも終わり、また忙しい日々が戻ってきました。4月からデザイナーとして新たなキャリアをスタートさせた皆さんも毎日必死にデザインと向き合っていることと思います。そういった方へのアドバイスを以前記事にしていますので、ぜひ参考にしてください。

さて、新人や若手のデザイナーの中には「デザイン力を身につけるにはどうしたら良いのか」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。そんな悩みに応えるような記事は既にたくさんありますが、シフカでもデザイナーとしての再確認を兼ねて、デザイン力を身につける方法をまとめてみました。

なお、デザインという分野は非常に広範であり、デザイナーと一口に言っても、そのジャンルや仕事内容は多岐にわたります。それぞれの分野によって必要とされるスキルや知識は異なりますので、すべてのデザイナーに本記事の内容が完全に当てはまるわけではありません。本記事はシフカでの日々のデザイン業務から得た経験と知見を基に作成されたものですので、あくまで一つの参考として読んでもらえれば幸いです。


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「デザイン力」とは何か

そもそも、「デザイン力」とはなんでしょうか。デザイン力をデザイナーとしての総合的な力量だと考えれば、デザイン力とは単一のスキルではなく、複数の要素が組み合わさったものだと言えます。

アイデアやコンセプトをゼロから創造し、それをビジュアルとして目に見える形に具現化して相手に伝達する。デザインが指し示す範囲はあまりにも広く、それに応じたデザイン力の身につけ方について語るには多くの時間が必要でしょう。そこで今回はシフカの業務でメインとなっているUIデザインに絞ってお話したいと思います。

UIデザインにはある程度の段階があり、次のように分類できそうです。

  • レイアウトのセオリーに則った表現

  • ユーザビリティ、使いやすさの追求

  • TPOに応じた思考

  • エモーショナルな表現、満足度をプラス

それぞれの段階ごとに必要となるスキルがあり、それを身に着け磨くことがデザイン力の向上に繋がります。重要なのは、各段階ごとに順を追って学ぶこと。それぞれの段階で必要な力をしっかりと身につけるようにしましょう。では実際にデザイン力を身につけるにはどうしたら良いのでしょうか。


やっぱり基礎が大事

これまで何度も耳にしてきた言葉かもしれませんが、やっぱり「基礎が大事」です。デザイナーにとっては柔軟な発想から生まれるアイデアが価値の源泉ですが、アイデアが頭の中に合ってもアウトプットできないと意味がありません。自分のアイデアを思い通りにアウトプットできるよう、まずは基礎を固めることから始めましょう。

まずは自分の手足となる基本的なツールの習得です。FigmaやPhotoshop、Illustratorなどを思い通りに操作できるようになるまで使い込みましょう。ベクターやパスが苦手なら有名な企業のロゴのトレースするのもよい勉強になります。よく使う表現は効率よく作成する手順ごと手に覚えさせてしまいましょう。

当たり前とされているレイアウトの定石も確実に抑えましょう。文章の各行は頭を揃える。複数の要素は均等に配置する。図形としての正しさ、パスの綺麗さを意識する。グリッドシステムの活用、適切なマージンの確保、視線誘導など身につけることが沢山あります。色の持つ意味や心理効果、色同士の適切な組み合わせを理解することも重要です。優れたデザインのサイトをトレースしてみるのも良いでしょう。トレースしたレイアウトの一部をわざと違う風に変えてみると定石の力が分かりやすいかもしれません。

単に知識として仕入れるだけでなく、Daily UIなどにチャレンジして実際のUI作りで試してみるのも効率的。慣れてきたら、同じクオリティのものをより早く作れるように意識してみましょう。作るたびに、覚えたことや気づいたことをメモしておくと後で役立つこともあるでしょう。出来栄えを信頼できる職場の先輩に見てもらうのも良い考えです。

こういった基礎は、スポーツで言えばフィジカルの強さに当たるもの。簡単に身につくような特効薬はありませんが、基礎をしっかり身につけることでその後のスキルアップの土台となってくれるはずです。頑張りましょう!


意思を持ってインプットする

デザイナーにとってインプットの重要性は言うまでもありません。シフカのデザイナーにインプットの方法を尋ねた記事も書いたことがあります。

インターネットが当たり前になる前は、デザインのインプットといえば雑誌がメインでした。デパートのテナントの装飾を見て歩いたという話もあります。それが今では有用な情報がネット上に溢れるほど存在しています。デザイン系の専門学校を出ていればその時点で多くのインプットを得ているとも言えるでしょう。

ここまで大量の情報があると、情報の取捨選択が必要になってきます。知らない知識の価値を評価することは難しいのですが、それが今の自分にとって本当に必要な情報なのか、常に自問することを忘れないようにしたいものです。

またインプットにあたって、ただ漫然と見ていても効果は薄いもの。最初から最後までただボンヤリと眺めただけで、何だかスキルアップしたような気持ちになっていないでしょうか。植物の葉を見て「キレイな緑色だ」という感想だけでは心許ありません。葉はどんな形状か、どんな模様が入っているか、葉の位置が互い違いになって光に効率よく当たっていると気付けるか。同じソースを見ても意識の持ち方で得られる情報量は大きく変わります。

そしてインプットしたものは、試してみて身につける必要があります。「逆立ち」を紹介する動画を見ただけで逆立ちが出来るようになるわけではありません。何度も繰り返し試すことで手順を覚え、コツを掴み、加減を把握するのです。何事も実験だと思って色々試してみましょう。

自分の力量との兼ね合いも重要なポイントです。持っている知識の量で「見る」ことの解像度も大きく変わります。あまりにも実力とかけ離れたインプットを得ても、理解するまでに時間がかかる上に、結果として持て余すことにもなりかねません。派手なスキルは魅力的に映りますが、慌てず着実なステップを刻んでいきましょう。


合理と非合理の間で

デザインにおいて「セオリー」とされている表現には、そう評価されるだけの理由があります。特にUIの世界では、ユーザビリティの面から「お約束」の表現を採用する場面が少なくありません。一般的に使われている表現に合わせるほうがユーザーにとっても使いやすいからです。一目で把握しやすい色の組み合わせや、安心感のある色味などもある程度決まってきます。「多くの人」にとって「同じように使いやすい」ものにするならば、こういった慣用表現を適切に組み合わせることが必要になります。アート的な思考よりも、論理的な思考が求められる場面です。

一方で、このような合理的なデザインが常に正解というわけでもありません。誰に向けたデザインなのか、対象に合わせて表現も変わってきます。例えば、ファッションブランドは周りと同じ服を作っているだけでは成り立ちません。同じようにブランド性の強いケースでは、基本的な部分を押さえつつ、見た人に驚きや感動を与えるための小さなサプライズが必要になってきます。このような場合、合理的な表現だけでは正解とは言えず、非合理的なデザインも求められるのです。

一般的な使いやすさを考えるならセオリーから大きく変えないほうが無難でしょう。でもセオリーだけでは印象に残りません。だからといって斬新な表現にし過ぎるとユーザーが使いづらくなってしまいます。どの程度を合理的な表現とし、どの程度を非合理的な表現とするのか。そのバランスはデザインする目的、対象、場面などによって異なります。今回のデザインではどの程度のバランスがベストなのか。TPOに応じた思考を磨くことが大事になります。

と言われても難しいですよね。まずは自分の周りの人に気配りするくらいから始めても良いと思います。ここだけの話、デザインも根っこの部分はちょっとした気遣いだったりすると思っています。

「非合理的な人が世界を変える」という言葉があります。合理的な人たちは世の中の仕組みに合理的に合わせられるので、世界を変える必要がない。一方、非合理な人たちはその非合理性から自分達の居場所を作るために世界を変えないといけない。そのため、世界を変えるのはいつだって非合理的な人たちだ、という指摘です。非合理性が持つ創造性と合理性が持つ心地よさ、そのどちらも大事にしつつバランスを適切に調整することを心がけていきましょう。


広く興味を持つ

若い頃ほど自由に使える時間があるものです。そうは言っても当人としては今でも目が回るほど忙しいと感じているかもしれません。今は大変な時期かもしれませんが、もう少し経って余裕が出てきたその時こそ、新しいジャンルにチャンレジをしてみましょう。若い頃に一通り試して身につけたことが、その後手持ちのカードとして大いに役立つことになります。

グラフィックデザインだけでなく、コーディング、3D、動画編集などを経験していれば、それぞれを極めるレベルまでにならずとも、組み合わせることでバリューを生む場面は多々あります。やがてフロントに立ってクライアントとやり取りをするようになった時、先方の様々なジャンルに及ぶ要望を理解し、適切な提案ができるだけでも価値があるのです。

そして、これは業務に関係する範囲に留まりません。あなたがTikTok好きならデザインの知識を使って動画にチャレンジしてみてはどうでしょうか。趣味のご朱印集めが後々タイポグラフィにヒントをくれたりするかもしれません。世の中はデザインに満たされています。直接デザインと関係ないジャンルでも、巡り巡って手持ちのカードになりデザイン力の糧になるはずです。そして時には興味がなかった領域に敢えて足を踏み入れてみることも大事。デザイナーにとって好奇心こそが一番の原動力なのです。

ベテランになるとこれまでの経験が邪魔をして自由度がなくなる面もあります。危機回避能力とも言えますが、最短の経路で一定の結果を出せるが故に、大きな失敗はしないが新しい場所にも辿り着かないジレンマに陥りがちです。ゲームをしたことがある人は分かると思いますが、宝箱は回り道しないとたどり着けない場所にあるのがお約束。若いころから保守的になり過ぎないようにしたいものですね。広く興味を持って、失敗を恐れず大いにチャレンジしていきましょう。


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今回はデザイン力をどのように身につけるのかについてまとめてみました。どの項目も、目新しい内容では無いと思います。一気にデザイン力が向上する近道はありません。地道に、でも正しい方向に一歩ずつ進んでいきましょう。この記事がデザイン力を身につける一助になることを祈っています。

一緒にデザインを楽しく学んでいきましょう!!


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