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vsベガルタ仙台

【試合前雑感~殻を打ち破るか、いつもみたいに連敗してしまうのか】
鳥栖でコロナ感染者が発生したため1週間の期間があった仙台とアウェイ連戦&週中に首位川崎F相手に大敗したセレッソ。コンディションは仙台の方が良いものの、選手としての地力や戦術・コンセプトの浸透度ではセレッソに分があるだろうと見ていた。ちなみに個人的にはベガルタ仙台は好きなチーム。ユアスタのサポーターは「遠路はるばるアウェイに来たよ」と言えば喜んで迎え入れてくれたし、ユアスタ近辺で親子連れが楽しげに試合会場に向かう姿もよく見れる。そして何より予算が限られている中でも常にJ1に居続け、時にはカップ戦の上位にも進出している。そしてアイリスオーヤマという地元非上場大手企業がトップスポンサーを務めている点もセレッソ(トップスポンサーがヤンマー)と似ている。
話は逸れたが、仙台は長年率いてきた渡邉監督から昨年まで山形を率いていた木山監督に変更。成績こそ芳しくはないが、守備/攻撃のコンセプトを落とし込みつつ、西村、赤崎、長沢、椎橋、スウォビクと特徴的な強さ/能力を持ったメンバーも擁しており、川崎を一時打倒しようかという勢いもあった。ロティーナの言葉の通り、ルヴァンカップと違って楽な展開にはならないだろう、と見ていたが、そんな試合のスタメンは以下の通り。

【仙台の保持〜ライン間を強く意識した配置】
仙台のどの選手も中間ポジションを取ることを徹底させられていた。その1段階目はDF。相手の2FWに対して余裕をもってボールを持てる位置にいることで、仮にミスしても大丈夫な時間を確保してボールを持つ。そこから攻撃のスイッチを入れるパスを繰り出すのだが、そのパターンは大きく分けて2つ。1つはSBがセレッソのSBとSHの間に立ってSBを釣り出してその裏を狙う形。

もう1つはSB-CB-IH-SHの間で受けるWGが大外のSH、SBの意識を向けさせてオーバーラップするSBを使う形。

特に右サイドではWGとSBはチェンジも可能であり、柳が4人の間で受ければ大外で仕掛ける力のある真瀬が待ち構えて流動的だった。木山監督の試合後コメントの通り、この形によってある程度セレッソ陣地でプレーできていた。しかし後半の仙台は左SBの押し上げが弱くなって攻撃が停滞していた。要因はドリブルで相手を押し込める西村が下がって4-4-2に変わったこと、石原が大外で待つことが増えたためにSBが上がるスペースが消えたこと、体力的な難しさなどが原因だろう。そのため後半は常に押し上げられる右SBで戦う局面が増えてしまった。またこの仕組みはセンタリングを上げるまでは良いのだが、1トップにしている中で中の枚数をどう増やすか、という課題が残っているようだった。どうしても関口は今の年齢では最前線にも飛び込みつつ、ライン間のタスクも背負うとなると厳しいところがある。そのため失点した後からデゲスと赤崎の2トップにして枚数を増やしたのだろう。裏を返せば、ここに厚みが出ればベガルタが一段と進化する可能性があった。山田がその厚みを増やす選手であって欲しい。身体能力にも恵まれている素晴らしい逸材であることは間違いないので、セレッソ以外のJ1ライバルチームを蹴散らしてほしいところである。

【仙台の非保持〜川崎と柏のコンセプトを混合した前からのプレッシャー&サイドが狙い所/ボランチと最終ラインは人に強く】
相手の様子やプレーの流れを受けて4-4-2(関口が前に出る)と4-3-3の2パターンを採用していた。

ピッチの幅と長さは決まっており、これまでの試合を観てもベガルタは基本的に中を締めてゴールから遠い大外でのパスは許容。そこで中途半端なパスでも出ればWGのプレスバックとボランチかSBのうち1枚の合計2枚が守備に回ることで数的優位を作り、奪って近くのWGへトスすることで素早く攻撃へと転じようとするのが狙いだったのだろう。攻撃と守備はトレードオフの関係にあるが、直近戦ってきた川崎、柏、仙台は「前線で引っかけて素早く攻撃へ」に比重を置いているチームだったと言える。

【セレッソの保持~SBの裏とボランチの背後を突いて突きまくる】
まずはスカウティング通り非保持では4-4-2でセットする仙台に対し、キックオフから藤田orデザバトを最終ラインに吸収して3バック化&SBの押し上げを図り、清武と坂元はボランチの脇に位置取る。(ただ仙台が4-3-3も併用したので、臨機応変に藤田とデサバトは立ち位置を修正)今節で注目したのは松田が大外に立っていた点。普段は内側に入って坂元へのパスコースを作りつつ、大外が使えなければビルドアップに参加する桜のキーマンだが、今節はビルドアップの起点になる動きよりも大外で受けるプレーが多かった。

これはパス数のスタッツからも明らか。

普段はヨニッチ/デサバト/藤田⇔松田のパス数が多い(=右サイドは相手を引き出し、中央経由で逆サイドの清武に届ける)のがセレッソの特徴/強みだった。しかし今節では「坂元を内側に配置する時間を増やし、ゴールに近いところに枚数をかけてゴールを脅かそう」や「SBを引っ張り出してその後ろを坂元が狙う」という意図があったので、松田は丸橋と同じく大外で受けるプレーが増えたのだろう。1点目も2点目もまさにこの形で相手を切り裂けていた。川崎戦後に短い期間しかなかったが、しっかりと攻撃の戦術が落とし込めている印象を受けた試合だった。

【試合を見終えて~スーパーマン片山への憧れとジャッジについて】
川崎戦の大敗後、さらに負けが続いてしまうのがこれまでのセレッソ。しかし名古屋が独走する川崎に土を付け、再度近づけるチャンスが訪れる中、セレッソは勝ち切れた。とは言っても後半に思うような展開ができなかったので、まだまだ伸び代があるとも言える試合ではある。特に前半終了間際~後半に入ってからの丸橋はパフォーマンスが落ちたため、仙台の右サイドでの攻撃が活性化されてしまった。連戦の疲れに加えてインナーラップとオーバーラップを自在に操れる若い柳と真瀬が疲労感なく果敢に挑んできたのは厄介だった。そこでロティーナの選んだ交代カードは小池ではなく片山。今季の片山は両SB、両SHとマルチに役割をこなしており、5人交代制となった今季はさらに出場機会を増やしている。ところで強豪ではない高校のサッカー部出身の片山(その後一般入試で早稲田大学に合格してから大学サッカー部経由でプロ入り)のネックは十中八九ボールコントロールだと思う。特に柿谷、香川、乾、清武、南野などを見てきたセレッソサポーターには明らかに劣後して見えているはずだ。でも足元の巧拙はフットボールの巧拙と必ずしも合致しない。片山はプロの中でも上位の身体能力に加え、IQがとても高いのだろう。だからこそチームコンセプトを理解しながら、両サイドの前後で(ロティーナが使わないだけでCBやFWもできるはず)滞りなくプレーができる。しかもロティーナセレッソにおいてポジショナルプレーが導入されたことで、お互いの立ち位置は局面で決まっているので、「認知→判断→実行」という一連のプレーにおける"認知"と"判断"の時間が短縮される。そのためボールコントロールが劣後していても時間的な余裕を持っているため、技術面をチームコンセプトでカバーできていることで片山の強みが活きている。今季の頼もしい片山のプレーを見るたび、もしこんな戦術を子供の頃から教わっていれば…と何度も思う。小中高時代に指導された時は「頭を使え!判断は早く!」と言われた。でもその指導を受けるたび、「頭をどう使うの?出し手の判断の遅さはボールホルダーだけのせいなの?」と思いながらコーチの言うことを聞いていた。(ただノーと言えない日本人なので「ハイ、すいません!」が口癖・・・)片山には「足元の技術だけがフットボールの巧拙を決めるんじゃない」という存在として、これからも目一杯活躍してほしい。下手だった自分にとって、そのような選手がプロで活躍してる姿(特に同い年だからこそ)はとても刺激的である。
次に…小田さんが試合後にツイートしていたように、柿谷は報復行為をすべきでなかった。不快にならないように厳しい意見を書ける小田さんは本当にプロフェッショナルな番記者である。前に何をされたかは喉輪をすることに全く関係ないし、イエローで済んだのがラッキー、というのが個人的な意見。むしろうまく時間を使いながらイエローカードを受けないのが巧みなプレイヤー。柿谷はラストキンチョウのジュビロ戦で山田を小突いたこともあったし、数年に1度やってしまうのは今年を最後にして頂きたい。とはいえ何年も柿谷のプレーを見てきたので、柿谷がフェアプレー精神の強い選手であることも知っている。また、前節にはG大阪の東口も同じような行為でイエローカードを受けたようだが、今季の審判は本当にそれで良いのだろうか?前々から何度も言っているが、厳しいコンタクトプレーと危険なプレーは全くもって質が違う。Jリーグよりも体格の大きいプレミアリーグではフェアに激しいコンタクトが多いのであって、当然ながら危険なプレーには笛が吹かれている。(怪しげなジャッジもある点については話の本質とズレるので割愛)
とは言え川崎戦や鳥栖戦でジャッジが相手側寄りに感じたシーンもあったので、今回はうち寄りに傾いただけだと思いたい。ジャッジの偏りもシーズン通せばどのチームもプラマイ0くらいになるだろう。山本主審は(怪しいジャッジもあったけど)「取らない!取らない!」、「ホールディングしない、見てるよ!」のように大声で各局面の状況/ジャッジを伝えながら、割とフェアにジャッジしていたというのが個人的な感想である。

【最後に~関口はやっぱりどこに行っても愛される】
今節のMVPは好きなプレイヤーへの色眼鏡をかけて関口。揉め事になりそうなシーンで間に立って試合をコントロールしていた。セレッソに居たこともあるからこそできたのだろうが、「ベテランたるものこう動こう」の素晴らしい見本だった。こういう風にコントロールしつつも試合では熱いプレーを見せるからこそ、ファンもチームメイトも関口のことが大好きなのだろう。そもそも35歳でフル出場しているだけですごいし、再開後もリーグ、カップ戦の1試合ずつ以外ではすべて先発している。セレッソを去る時になかなか次のチームが決まらずに心配したが、今季の活躍ぶりを見てセレッソ戦以外でもっともっと活躍してほしいと心の底から思えた。

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