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本の言葉はじわじわ効いてくる。


今、川上未映子さんの「黄色い家」を読んでいます。


川上未映子さんの言葉には引力があり、ぐいぐい引っ張られる。そのあと圧倒的に迫ってきて感情に訴えてくる。


読んでいるその瞬間は、痛いし、苦しいし、ウルっとし、怒りが込みあげてきたり、目をそらしてしまったり。


「文字を読んでいるだけなのに、どうしてこんなに感情が揺さぶられるのだろう?」と考えてしまいます。


読後は、しばらく宙を見つめたまま余韻に浸ることもありますが、訳がわからなくなり、これはどうなっているのか? 読後すぐに放心状態になってしまうこともあります。


川上未映子さんの本だけではありませんが、重厚な物語や、ノンフィクションなど気持ちがフリーズしてしまうことがよくあります。いろんなことを考えてしまうのだけれど、明確な自分の思いがわからなくなる。


これは、どういうこのなのか? どうなっているのか?


先日、BS日テレの「深層NEWS」に川上未映子さんが出演、話をされていました。そこで、文学や小説の影響力あるいは、効用のような話が出てきました。


少しあとになって効くっていう…ちょっとおそい。文学とか小説とかは個人的にはおそいという思いがあって…うん、おそいと思う。

BS日テレ「深層NEWS」2023年6月
6日


まさにその感覚なんですね。読み終わった直後は、心がかき乱されてわからない。


けれど


考えてしまう。
考えないといけない。
でも、考えることができない。


これは、どういうこのなのか? どうなっているのか?


本を1冊読むのは時間がかかります。
動画を見ているような感じにはなかなかなりません。


タイムパフォーマンスは悪いと感じます。


しかし


確実に自分の深層に、何か根を張っていくものを感じるのです。


その根が時間を追うごとに伸びてゆき、じわじわと効いてきます。


そして


ふとしたときに、気づくことがあります。


あのときのあの描写は。あの子の言いたかったことは、そういうことだったのか!


時間が過ぎ、攪拌された澱がしだいに沈んでゆき、透きとおってきて、見えてくるものがあります。


今の世の中、何でも便利な方向に向かい、即効性を求めたり、AIに答えを委ねたり、そうすることで「本当の自分の気持ちが見えにくくなってきているのではないだろうか?」と思っていたときの川上未映子さんの言葉。


ちょっとあとになって効いてくる本の言葉は、不安な気持ちを拭い去る「大きな力」を獲得するのだと。


「深層NEWS」BS日テレ 2023年6月6日放送


いつも読んでいただきまして、ありがとうございます。それだけで十分ありがたいです。