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「人は、なぜ他人を許せないのか?」 中野信子


正義中毒が脳に備わっている仕組みである以上、誰しもが陥ってしまう可能性があるのです。」



「人は、なぜ他人を許せないのか?」 中野信子



なぜ人は他人を許せないのか?


それは考えるだけ時間の
ムダかもしれません。
だって脳がそう感じているのだから。


脳科学者・中野信子さんは言います。

人の脳は、裏切り者や、社会のルールから外れた人といった、わかりやすい攻撃対象を見つけ、罰することに快感を覚えるようにできています。

他人に「正義の制裁」を加えると、脳の快楽中枢が刺激され、快楽物質であるドーパミンが放出されます。

この快楽にはまってしまうと簡単には抜け出せなくなってしまい、罰する対象を常に探し求め、決して人を許せないようになるのです。


このことを中野さんは、本書の中で「正義中毒」と呼んでいます。


テレビを見ていると、僕自身「正義中毒」に陥ってしまっているのではないか?自分の意見と違う人の物言いを見たり、世間の感情とズレた発言をする政治家やえらそうな態度の人を見ると、ついつい無意識のうちにテレビに向かってブツブツ言っているのですね。

正義中毒が脳に備わっている仕組みである以上、誰しもが陥ってしまう可能性があるのです。


怖いですよね。自分と異なるものを「悪」だと考えることが脳に搭載されているのなら。中野さんはさらにこう語っています。

実際に人と接するリアルの世界では我慢できるのに、ツイッターやフェイスブックなど、インターネットやSNSの世界では攻撃的になってしまうというケースが多々あります。

というより、ネットの広がりが正義中毒を顕在化させ、より強めているのではないかと考えられます。


とくにSNSの広がりにより、今まで隠れていた正義中毒者が「見える化」してしまいました。さらにネット社会が正義中毒を加速させてもいます。


自分ではそういうつもりはなかったのに、悪気はなかったのに、と思いつつ、動画やネットやSNSを見ていると正義中毒が発動されてしまう。でも、やめられない、止まらない。脳がそうさせているのだから。


「正義中毒から抜け出したい」


しかし、どうすれば正義中毒から抜け出せるのか?コミュニケーションに悪影響を与えることや、他人への迷惑や、自分の感情の消耗にならないようにするにはどうすればよいのか?


それには「許せない仕組み」(脳の仕組み)を知ることが有効なんですね。
目には目を、脳には脳を!


テレビやインターネットを見ていて怒りの感情が湧いたとき、まずは一呼吸置くこと。あわてない、あわてない、「今中毒症状が来ている」と意識すること。


「許せない」と思ってしまう状態を自分で客観視できれば、正義中毒の抑制になると中野さんは語っています。


また「正義中毒」を緩和し、客観視できる脳の働きがありました。


それが


正義中毒を抑制してくれる機能を持つ前頭前野とメタ認知です。

前頭前野は分析的思考や客観的思考を行う場所です。

ここがうまく働いていれば、目先の損得に惑わされず、長い目で見たときの得を選びとることができ、社会経済的地位も高くなることがわかっています。

何らかの衝動を押し殺したりやむを得ず、状況に合わせたりするという状態であれば、一応前頭前野は働いていると考えられます。

(中略)

前頭前野の働きが保たれていると、前頭前野の重要な機能である「メタ認知」を使うことができます。メタ認知とは、自分自身を客観的に認知する能力のことです。

(中略)

常に自分を客観的に見る習慣をつけ、メタ認知を働かせることが、前頭前野を鍛えることにつながります。


客観的に自分を冷静に見ることは、仕事に活かすことができます。また、あらゆる緊張状態に遭遇したときにも非常に役立つのです。


それには前頭前野を活性化させること。新しいことにトライすることや読書もいいみたいですね。とくに読書は今まで読んでこなかったジャンルや関心のなかった本を読んでみるのがいいみたいですよ。


そういえば少し前に、NHK「あさイチ」の読書の特集で前頭前野のことに触れていました。


40代の方に一ヵ月毎日、本を2ページ読むことを続けてもらいます。そうすると驚くべき結果が出ました。


40代の方の記憶力が、おおむね20代後半程度の記憶力まで上がったというのです。脳の前頭前野は記憶力を司っていて、本の活字を読んでいる時の脳を画像で見ると、前頭前野が活発に動いていました。


動画を見ているときの脳の状態と比較していましたが、動画を見ているときは前頭前野は使われていませんでした。また、最近の研究では創造力も上がると言われているそうです。


前頭前野やメタ認知が正義中毒を乗り越えるカギであることが、本書を読んでよくわかりました。


それは


他人を許せない→攻撃→ドーパミン

という脳の仕組みから

自分自身を客観視→冷静に判断・行動→心穏やか→他人を許す

という脳の働きに変換するカギなのです。



【出典】

「人は、なぜ他人を許せないのか?」 中野信子    アスコム


いつも読んでいただきまして、ありがとうございます。それだけで十分ありがたいです。