数々のVTuberキャラクターやゲーム向け3DCGキャラクターを制作してきた「株式会社なのです」がモデリングのノウハウを公開! 第1回「制作計画を立てよう」
有名ゲームやVTuberのハイクオリティな3Dモデリングで有名な「株式会社なのです」がモデリング技術をし公開!新刊『Blender リアルタイムCGキャラクター制作入門』から紙面の一部を公開します。
第1回は、第1章「モデリングの準備」から「使用目的に沿った制作計画」を公開します。
Section 01-01 使用目的に沿った制作計画
キャラクターモデリングは非常に多くの労力と時間が必要です。特に初心者のうちに目標を高く設定すると挫折を招いてしまいます。
また、目的・目標がないままキャラクターモデリングをはじめてもモデルを使用する環境によって設定が異なりますので、完成が近づいたと思っても、作業のやり直しが発生する場合があります。まずは、しっかりと目的・目標を決めて、作業に取り掛かりましょう。
01-01-01 目的は?
まずは、何に使用するキャラクターモデルなのか決めましょう。何も目的がないままキャラクターモデリングをはじめる人は少ないと思いますが、ゲーム制作のためのキャラクターモデリング、VTuberになるためのモデリング、アバター用のモデリングなど、使用目的によって、仕様が異なります。
また、アバター用としても、どのアプリケーションで使用するかによって仕様が変わってきますので、モデリング前にしっかりとした仕様の確認が必要になってきます。
なお、本書では最終的に「VRChat」で使用するアバターを作ることにしますので、「VRChat」の仕様を基準にモデリングを説明していきます。
01-01-02 各種制作条件を把握する
3DCGキャラクターといっても、目的によって様々な仕様があります。ポリゴン数だけでも、映像用のハイポリモデル(10万ポリゴン以上)からスマホ向けローポリモデル(5000 〜1万ポリゴン程度)など、使用する環境によって変わってきます。
制作条件となる仕様項目の一例
●ポリゴン数
ポリゴンとは見た目を構成する三角形の板状のものです。ポリゴン数が多くなるほど、PCの処理に負荷がかかり、動きが遅くなったり、表示速度のバラつきが起こったりします。ポリゴン数を少なくすると処理は軽くなりますが、極端に少なくすると見た目で角が目立ってきたり、安っぽく見えたりします。
また、ポリゴンの塊を「ポリゴンメッシュ」または「メッシュ」と呼びます。
●テクスチャとボーン構造
テクスチャとはポリゴンに張り付ける画像データで、シールやステッカーみたいなものです。
テクスチャの大きさとは画像のピクセル数のことです。テクスチャは基本的に正方形で作成されます。よく使われるテクスチャの大きさの例として、「512×512ピクセル」「1024×1024ピクセル」「2048×2048ピクセル」となります。
このテクスチャが大きくなったり、枚数が増えたりするとPCへの負荷も高くなります。反対に小さくしたり、枚数を少なくしたりすると処理は軽くなりますが、見た目で画像の粗さが目立ってきます。
ボーンとは文字通り「骨」です。キャラクターを動かす骨格となり、関節の位置を設定します。
また、本当の骨とは違って、動かすものはすべてにボーンを設定します。瞳や髪、スカートなどにもボーンを設定します。
●物理演算の有無や数
髪の毛やスカートなどを「揺れもの」といいます。キャラクターの動きにあわせて自動的に揺れるように設定を行います。この揺れものも多くしたり、複雑な設定をしたりすると処理が重くなります。また、設定の難易度も高くなります。
ただし、揺れものはキャラクターのかわいさの演出としては効果的ですので、処理の負荷と演出のバランスを考えましょう。
●透過の有無
ポリゴンを透過させる設定もあります。テクスチャを使って、半透明にしたり完全に透明にすることもできます。
使用する例としては、前髪の透かしや服のレースの透明部分などがあります。
透過を設定すると処理に負荷がかかりますので、仕様によっては透過設定が使えない場合もあります。
本書のモデルの目安
今回は、「VRChat」のアバターを制作しますので、下記の条件で制作を行います。
ポリゴン数:3万ポリゴン程度
テクスチャの大きさと枚数:2045×2048ピクセル×5 〜 6枚程度
ボーン構造:Unity Humanoidに準拠
物理演算の有無や数:有(今回は仕様の条件ではなく、初心者モデリングを考慮して少なめに設定)
透過の有無:顔などのテクスチャに使用
※「VRChat」の仕様は「VRChat」のバージョンなどにより変わる場合があります。
その他、利用する環境もバージョンによって仕様が変更になる場合がありますので、制作前に事前に確認しましょう。
01-01-03 作業工程を把握する
キャラクターモデリングには多くの作業工程があります。前述の通り、モデリング前に準備として必要なこともあります。おおよその作業工程は以下の通りとなります。
仕様の確認と決定
キャラクターモデルを使用する環境にあわせて制作条件を確認したり、決定を行います(01-01-02参照)。キャラクターデザイン
デザインが何もない状態からモデリングを開始すると、必要以上に時間がかかったり、途中で目標を見失い制作をあきらめてしまう可能性があります。
まずは、どんなキャラクターを作るのかを決めましょう。造型
キャラクターデザインができたら、本格的にモデリングの開始です。まずは形を作っていきます。ボーンの作成
形を作っただけでは、キャラクターは動きません。
文字通り、ボーン(骨)を作り、キャラクターの骨構造を決めていきます。ウェイトの設定
ボーンを作っただけでは、まだ、動いてくれません。ボーンが動いたときにポリゴンがどのように追従して動くかを設定します。マテリアルの設定
材質の設定です。肌、布、金属など、材質を基本に設定していきます。UV展開
マテリアルの設定だけでは、見た目が不十分です。よりよい質感や模様を描いたテクスチャを貼るために立体的な形を平面に落とします。
ペーパークラフトの展開図のようなものです。テクスチャの作成
UV展開をもとに質感や模様などをペイントソフトで描きます。フェイシャルの作成
表情を作成します。目を閉じた状態や口を開いた状態などを作成し、表情を豊かにすることで存在感がアップします。各種セットアップ
使用環境に応じたセットアップを行います。また、髪やスカートなどの揺れものもここで設定を行います。本書では、「VRChat」のアバターとしてセットアップを行います。
造型後の行程の順番は必ず決まった順番はなく、状況により変わってきたり、制作者の作りやすい順番があったりしますので、制作に慣れてきたら、自分なりに作りやすい順番を探ってみてもよいでしょう。
本書の目次
Chapter01 モデリングの準備
01-01 使用目的に沿った制作計画
01-01-01 目的は?
01-01-02 各種制作条件を把握する
01-01-03 作業工程を把握する
01-02 キャラクターデザイン
01-02-01 キャラクターデザインとは?
01-02-02 モデリング初心者に適したキャラクターデザイン
01-02-03 下絵について
01-03 Blenderの初期設定と基本操作
01-03-01 Blenderのダウンロード
01-03-02 初期設定の変更
01-03-03 各種ウィンドウの説明
01-03-04 基本操作
01-03-05 座標軸について
01-04 下絵の配置
01-04-01 モデリングを行うための下準備
01-04-02 下絵の配置
01-04-03 「コレクション」の活用
01-04-04 「Filter」の活用
01-04-05 モデリング時の視点について
01-04-06 ファイルの保存
Chapter02 顔のモデリング
02-01 準備と計画
02-01-01 作業計画
02-02 顔のベースとなるポリゴンの構成をつくる
02-02-01 基本となる「目」「鼻」「口」のポリゴン構成をつくる
02-02-02 顔全体のポリゴン構成をつくる
02-02-03 下絵をもとに顔面を調整
02-02-04 さまざまな角度から顔面の調整
02-02-05 顎先から首の造型
02-03 顔の造り込み
02-03-01 瞳の作成
02-03-02 仮のマテリアル(材質)を設定
02-03-03 まつ毛の作成
02-03-04 眉毛の作成
02-03-05 耳の作成
02-03-06 後頭部の作成
02-04 髪の作成
02-04-01 パーツ分けを考える
02-04-02 ヘアバンドを作成
02-04-03 前髪を作成
02-04-04 その他の髪の作成1
02-04-05 後ろ髪(サイドとリア)の作成
02-04-06 その他の髪の作成2
02-05 全体のバランス調整と細部の造り込み
02-05-01 ポリゴンの表裏を確認
02-05-02 頭部全体の調整
02-05-03 細部の造り込み
Chapter03 素体のモデリング
03-01 準備と計画
03-01-01 準備
03-01-02 計画
03-02 素体の作成
03-02-01 体のベースとなる円柱を配置
03-02-02 胴、腕、脚の形状を調整
03-02-03 胸の形状を作成
03-02-04 胴、腕、脚、胸をつなげる
03-02-05 腰から股の作成
03-02-06 足先の作成
03-02-07 手の作成
03-02-08 肩の作成
03-02-09 関節の調整
Chapter04 素体のスキニング
04-01 ボーンと頂点ウェイトについて
04-01-01 ボーン構造について
04-01-02 頂点ウェイトについて
04-02 ボーンの作成と設定
04-02-01 基本のボーンの作成
04-03 頂点ウェイトの設定
04-03-01 素体の頂点ウェイトの設定
04-03-02 「モディファイアー」の適用
04-03-03 頂点ウェイトや形状の微調整
04-04 揺れもののボーンと頂点ウェイト
04-04-01 髪の設定
04-04-02 胸の設定
Chapter05 Unityでの素体の動作テスト
05-01 FBXエクスポートとUnityインストール
05-01-01 Unityとは
05-01-02 BlenderからFBX形式でエクスポート
05-01-03 UnityHubのインストール
05-01-04 Unityのインストール
05-02 Unity起動前の準備
05-02-01 Unity Hubでサインイン
05-02-02 Unity Hubでライセンスの取得
05-02-03 新規プロジェクトの作成
05-03 Unityでの基本操作
05-03-01 各ウィンドウの説明
05-03-02 Unityプロジェクトのファイル構造
05-04 Unityへのインポート
05-05 既存アニメーションで動作テスト
05-05-01 モデルのリグをヒューマノイドへ変更
05-05-02 ダンスアニメーションの適用
05-05-03 タイムラインの設定
05-05-04 モーションを再生
05-05-05 問題なく動作するのを確認
05-05-06 プロジェクトの保存
Chapter06 衣装のモデリング
06-01 素体をもとに衣装全体のベースを作成
06-01-01 衣装の下絵の配置
06-01-02 オーバーニーソックスの作成
06-01-03 靴の作成
06-01-04 ベルトの作成
06-01-05 ジャンパースカート(下部)の作成
06-01-06 ジャンパースカート(上部)の作成
06-01-07 リボンの作成
06-02 衣装のベースに仮スキニング
06-02-01 素体から「ウェイト転送」
06-02-02 ボーンの追加
06-02-03 追加したボーンのウェイト設定
06-03 細部の作成
06-03-01 靴のディティールアップ
06-03-02 ジャンパースカート(下部)のディティールアップ
06-03-03 ジャンパースカート(上部)のディティールアップ
06-03-04 その他のディティールアップ
06-03-05 形状やウェイトの確認などの仕上げ作業
Chapter07 マテリアルの設定とテクスチャの作成
07-01 マテリアルの設定
07-01-01 各種マテリアルを作成
07-02 UV展開
07-02-01 UV展開の方法
07-02-02 各パーツのUV展開の例
07-02-03 UVマップのエクスポート
07-03 テクスチャの作成
07-03-01 塗る前に
07-03-02 色分け
07-03-03 アンビエントオクルージョン
07-03-04 影塗りハイライト塗り
07-03-05 アルファチャンネル
07-03-06 仕上げ
Chapter08 フェイシャルの作成
08-01 フェイシャルの解説
08-01-01 「シェイプキー」の設定
08-01-02 フェイシャル一覧
08-02 基本フェイシャルの作成
08-02-01 代表的なフェイシャルの作成
08-03 フェイシャルの調整と仕上げ
08-03-01 モディファイアーの適用
08-03-02 フェイシャルの仕上げ
08-04 VRChatに必要な「シェイプキー」の追加
08-04-01 目の「シェイプキー」
08-04-02 口の「シェイプキー」
08-04-03 オブジェクトの結合
Chapter09 Unityでのセットアップ
09-01 ユニティちゃんトゥーンシェーダー2.0のインストール
09-02 キャラクターのFBXエクスポート
09-03 インポートしたキャラクターの設定
09-03-01 キャラクターモデルのインポート
09-03-02 キャラクターモデルの設定
09-04 マテリアル・テクスチャー・シェーダーの設定
09-04-01 表情テクスチャーの設定
09-04-02 マテリアル・シェーダーを設定
Chapter10 VRChatのセットアップ
10-01 VRCライブラリのダウンロード
10-01-01 VRChatでアカウント作成
10-02 VRCコンポーネントのアタッチ
10-03 テストとアップロード
10-04 FXレイヤーの設定
10-04-01 表情のアニメーションを作る
10-04-02 FXアニメーションコントローラーを作る
10-04-03 FXアニメーションコントローラーへ表情アニメーションを割り当て
10-04-04 PlayableLayersにFXアニメーションコントローラーを割り当てる
10-05 揺れものの設定
10-05-01 VRC PhysBoneのコンポーネントを追加
10-05-02 VRC PhysBoneに揺らすためのボーンを設定
10-05-03 他のスカートのボーンにもVRC PhysBoneの追加
10-05-04 コライダーの設定
10-05-05 スカートにコライダーを適用
10-06 キャラクターのプレハブ化
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