電子帳簿保存法に対応する利益・不利益 『即効!電子帳簿保存法対応マニュアル』⑤
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第5回は第1章「電子帳簿保存法ってどんな法律?」から第4節「電子帳簿保存法に対応して、利益はあるのか」、第5節「電子帳簿保存法に違反するとどのような不利益があるのか」を公開します。
1-4 電子帳簿保存法に対応して、利益はあるのか
電子帳簿保存法に対応した場合、以下の優遇措置があります。
過少申告があった場合の加算税が5%軽減される
青色申告特別控除が10万円上乗せされ65万円になる
電子帳簿保存法に対応する場合の優遇措置
電子帳簿保存法では、「優良な電子帳簿」を備え付けて電子データで保存している事業者は、過少申告加算税の軽減措置や青色申告特別控除額について優遇措置が認められます。(「優良な電子帳簿」の要件については、第3章で説明します)。
過少申告加算税の軽減措置とは、所得税・法人税または消費税に係る修正申告などがあった場合、申告漏れに課される過少申告加算税が軽減される措置です。過少申告加算税の金額は、新たに納めることになった税金の10パーセント相当額です。(新たに納める税金が当初の申告納税額と50万円とのいずれか多い金額を超える場合、その超える部分については15パーセント)。この過少申告加算税の税率が5%軽減されます。
税金の計算は複雑です。正しく計算したつもりでも、税務調査などで予想しなかった申告漏れを指摘されることはよく聞く話です。申告漏れのあった場合に、本来払うべき税額に加えて課されるペナルティが過少申告加算税です。過少申告加算税の税率が5%軽減されれば、申告漏れとなった税額が大きい場合、大きな利点になります。
所得税の青色申告特別控除とは
青色申告特別控除は、青色申告の承認を受けて一定の要件を満たしている場合に、所得税の控除を受けられる制度です。優良な電子帳簿で保存を行っている場合には、この控除額が通常の55万円から65万円になるため、10万円多く控除を受けることができます。
1-5 電子帳簿保存法に違反するとどのような不利益があるのか
電子帳簿保存法に違反した場合に考えられる不利益には、以下のものがあります。
青色申告の取消
推計課税を受けたり、重加算税が課される可能性
会社法違反として、100万円以下の過料が科される可能性
電子帳簿保存法に違反した場合の不利益
電子帳簿保存法に違反した場合の不利益として、まず青色申告の取消しがあります。青色申告による確定申告では、最大65万円の青色申告特別控除や純損失の繰越・繰戻しなど、多くの節税メリットを受けることができます。青色申告を取り消されるとこのメリットを失うことになります。
青色申告の承認が取り消されると白色申告者となってしまいますが、白色申告では、青色申告に適用されていた特例がないだけでなく、「推計課税」を受けるリスクがあります。
「推計課税」とは、税務署が所得税や法人税の額を推計して決定し、課税することです。推計であるため、税務署の考える計算で税額が決められてしまい、会社としては予想外の納税額となります。
さらに、電子帳簿保存法に従って、書類の電子データ化や保存を行っていない場合、それ以外の国税に関する帳簿書類も規定された方法で保管されていないと判断されるケースも考えられます。悪質な隠ぺいや改ざんで納税額を少なく申告したとみなされると、重加算税が課されます。重加算税は通常追徴税額の35%ですが、電子取引データ、スキャン保存データについて(電子取引データは第2章で、スキャン保存データは第3章で説明します)、故意にデータの削除・改ざん等を行って、重加算税が課せられると、さらに10%加重された45%の金額を納めなければなりません(重加算税が課される場合の詳しい説明は2-7節を参照してください)。
また、会社法第976条には、100万円以下の「過料に処すべき行為」が記載されています。そのなかに、帳簿や書類の記録・保存に関する規定があり、虚偽の記帳や保存義務の違反を行った場合の罰則を定めています。電子帳簿保存法に違反することは、保存義務の違反に該当する可能性があり、100万円以下の過料を科せられる可能性があります。
目次
第 1 章 電子帳簿保存法ってどんな法律?
1-1 電子帳簿保存法が適用される事業者は?
1-2 電子帳簿保存法は何のための法律か?
1-3 電子帳簿保存法はなぜわかりづらい?
1-4 電子帳簿保存法に対応して、利益はあるのか
1-5 電子帳簿保存法に違反するとどのような不利益があるのか
1-6 電子帳簿保存法で対応すべきことは? 保存対象の書類とは?
1-7 保存に必要とされる条件はどこで決まる?
第 2 章 電子取引データの保存方法について知ろう
この章の学習範囲
2-1 電子取引データの保存制度とは?
2-2 電子取引に該当するものにはどんなものがあるのか?
2-3 電子データで保存するための基本要件とは?
2-4 必要とされる検索機能は?
2-5 改ざん防止として、必要とされる措置は?
2-6 電子取引の電子データを保存するにはどんな点に注意すればいいか
2-7 どんな場合、重加算税の加重対象となるのか
第 3 章 帳簿書類の電子データ化について知ろう
この章の学習範囲
3-1 PC等を利用して作成する帳簿について求められる要件は?
3-2 優良な電子帳簿の要件を満たすのは?
3-3 マイクロフィルムを用いた保存はどう行うか
3-4 過少申告加算税の軽減措置を受けるには
3-5 適用を取りやめるにはどうすればよいのか
第 4 章 スキャナ保存できる書類を知ろう
この章の学習範囲
4-1 スキャナ保存対象となる書類はどんなもの?
4-2 入力で求められる要件は?
4-3 出力の要件は?
4-4 検索機能はどのようなものが必要?
4-5 一般書類・過去分重要書類の取扱いはどうすればよいのか
第 5 章 適格請求書等保存方式との関連
5-1 適格請求書等保存方式の概要
5-2 インボイス制度で保存すべきデータは?
5-3 電子インボイスとは?
5-4 受領した適格請求書等を電子データで保存するには、どのような対応が必要か
第 6 章 電子データ化、ペーパーレス化の実践ポイント
6-1 ペーパーレス化するメリットの社内共有
6-2 段階的ペーパーレス化の検討
6-3 電子データで保存する書類はどのように決めればよいか
6-4 会議書類の電子データ化、電子申請による経費精算、電子契約の導入
6-5 優良な電子帳簿を作成するために、検討すべきことは
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