数々のVTuberキャラクターやゲーム向け3DCGキャラクターを制作してきた「株式会社なのです」がモデリングのノウハウを公開! 第2回「キャラクターデザイン」
有名ゲームやVTuberのハイクオリティな3Dモデリングで有名な「株式会社なのです」がモデリング技術をし公開!新刊『Blender リアルタイムCGキャラクター制作入門』から紙面の一部を公開します。
第2回は、第1章「モデリングの準備」から「キャラクターデザイン」を公開します。
Section 01-02 キャラクターデザイン
モデリングをはじめる前にデザインが決まっていないと制作作業に移れません。キャラクターデザイン自体も多くの労力と時間が必要になってきます。
本書はモデリングの解説が中心となっていますので、キャラクターをデザインする工程の詳細は省き、事前にサンプルのデザインを用意しました。この章では、このデザインにたどり着くまでの内容を解説します。
01-02-01 キャラクターデザインとは?
キャラクターデザインというと、まずはビジュアルをどのようにするか考え始めますが、実はキャラクターデザインと一口に言っても、考える範囲は非常に広く、難しいものです。
人ひとりをこの世に存在させるには、世界が必要で、文化、環境、歴史、家族、現在まで生きてきたストーリーなどからはじまり、性格や口癖、好きな食べ物などの事細かな設定が必要になってきます。
道徳として、「人を見た目で判断してはいけない」と言われますが、キャラクターデザインについては、見た目がその人を表しています。生い立ちや生まれ育った環境や性格でそのキャラクターの好む髪型や服の嗜好が決まってくるからです。
とはいえ、今回はアバターのデザインということで、世界観やキャラクターの人格設定を深考えず、次項の条件でイラストレーターのしぐれういさんに依頼しました。
01-02-02 モデリング初心者に適したキャラクターデザイン
ゲームやアバター、VTuberなどのキャラクターデザインにて、モデリングの容易さを考えてデザインされることはありません。もっとも重要視されるのは、「魅力あるキャラクター」であることです。しかし、魅力を追及していくと制作が難しくなることもあります。
本書では、モデリング初心者を対象としていますので、完成に導けるように難易度を下げたキャラクターデザインにしています。具体的には以下のような条件でキャラクターデザインを依頼しました。
本書のキャラクターデザイン方針
詳細につきましては、以下の通りとなりますが、出来るだけモデリングの難易度を下げつつもモデリングは労力と時間がかかりますので、モチベーションが保てるようにかわいさも両立させたいと考えました。
女子高生、制服
女子高生を描くことに拘りのある「しぐれうい」さんなので、素直に女子高生の制服でデザインを依頼しました。また、明るめの色味でアニメ・マンガのヒロイン感がほしいことを伝えました。髪は肩までの長さ
髪にボリュームがあるとそれだけ制作する量も増えます。また、ロングヘアは物理演算の設定で貫通防止などの難易度が高くなります。スカートは膝上くらいの長さ
こちらも髪と同様で物理演算の設定で貫通防止などの難易度を下げるためです。初心者でもモデリングしやすいデザイン
複雑な形状や細かい装飾はモデリングの難易度を上げるため、極力避ける。
モデリングが難しくなるデザイン
その他、モデリング初心者には難しい形状は以下の通りとなります。
肩から腕を覆うような服
ケープ、マント、大きめのフードなどは、キャラクターを動かすための頂点ウェイトの設定が難しくなります。フリルやレース
ポイントとしてデザインすることは問題ありませんが、多用すると制作難易度が上がったり、労力・時間がかかったりします。フサフサしたもの(毛玉、羽根、服のダメージ加工など)
ポリゴンで表現が難しい素材となります。テクスチャで表現することが多いですが、テクスチャを作成するテクニックも求められます。●極端にロールした髪
髪に限らずねじれのあるものは、制作の難易度が上がる傾向にあります。特に髪の場合はねじれに加え、房の枝分かれの表現があります。さらに揺れものになりますので、ボーンやウェイト設定の難しさが加わり、かなり難易度が高くなります。服のデザインが左右非対称
モデリングは基本的にミラー(反転コピー)で作業することが多くなります。
左右対称のデザインであれば、左半分を作成していけば、自動的に残りの半分が作られていきます。
左右非対称のデザインは、制作する部位が増え、全体のバランスをとることも難しくなります。鎖や金属のベルト
鎖の輪を1つずつ作ることも、物理演算で動かすことも難しいです。このようなデザインは、ある程度、省略されたり、それっぽく見えるように誤魔化したりしますが、初心者には難易度が高くなります。U字のぶら下がりもの
サスペンダーを肩にかけずにたらしたデザインやウォレットチェーンのようなU字のぶら下がりものは物理演算の設定が難しくなります。以上がよく見かけるデザインでモデリングが難しいパターンのものになります。
モデリング初心者のうちはフリルやリボン、アクセサリーなどの揺れものは極力少なくすることをおすすめします。ただし、キャラクターの魅力を上げるには、揺れものがあると効果的です。モデリングに慣れてきたら、追加するなどチャレンジしてみてください。
01-02-03 下絵について
何もない空間に形を作っていくことは、非常に難しいので、下絵を画面上に配置します。まずは、これをガイドに制作を進めていきましょう。
ただし、下絵は工業製品のような図面ではなく、イメージとなりますので、制作過程で下絵に沿わない箇所もでてきます。
下絵データの準備
今回はしぐれういさんのキャラクターデザインをもとに下絵を作成しています。
ダウンロードした画像データを画面に配置し、モデリングを行っていきます。
オリジナルのキャラクターデザインなどを制作する場合は、下記の下絵を参考に準備をしてください。下絵のデータは、サンプルファイル内の「下絵と資料の画像」フォルダにあります。
本書はできるだけモデリングしやすいように多めに下絵を準備しました。モデリングに慣れてきましたら、下絵は衣装が描かれたものだけでできるようになります。
また、下絵がない状態でモデリングを行うこともあります。
●縦横比、パースなどについて
縦横比がオリジナルから変わってしまっている状態やパース(遠近感)が強いイラストは下絵としては使えないため、描きなおすか、別のイラストを用意しましょう。
●データ形式
様々なデータ形式に対応していますが、一般的によく使われている「JPEG」、「PNG」がよいでしょう。
●解像度
特に決まりはありませんが、デザインがよく分かる程度の解像度にしてください。低解像度の下絵を配置しても、デザインの詳細が分からなければ、配置した意味がありません。
●背面や裏面のデザイン
下絵として使用する機会は少ないですが、デザインが不明瞭な場合は、考えながらモデリングを行うことになりますので、作業時間が大幅に増えてしまいます。
また、デザインが未確定な状態で進行した場合、正面から見たデザインと背面から見たデザインの整合性が保てなくなり、大幅なデザイン変更を制作途中で行う場合もあります。
モデリング前にしっかりとデザインを決めておきましょう。
●その他資料
その他にあるとよいデザイン画として、「顔のアップ」「表情パターン」「小物などの詳細デザイン」など、資料はたくさんあるほどよいです。
本書の目次
Chapter01 モデリングの準備
01-01 使用目的に沿った制作計画
01-01-01 目的は?
01-01-02 各種制作条件を把握する
01-01-03 作業工程を把握する
01-02 キャラクターデザイン
01-02-01 キャラクターデザインとは?
01-02-02 モデリング初心者に適したキャラクターデザイン
01-02-03 下絵について
01-03 Blenderの初期設定と基本操作
01-03-01 Blenderのダウンロード
01-03-02 初期設定の変更
01-03-03 各種ウィンドウの説明
01-03-04 基本操作
01-03-05 座標軸について
01-04 下絵の配置
01-04-01 モデリングを行うための下準備
01-04-02 下絵の配置
01-04-03 「コレクション」の活用
01-04-04 「Filter」の活用
01-04-05 モデリング時の視点について
01-04-06 ファイルの保存
Chapter02 顔のモデリング
02-01 準備と計画
02-01-01 作業計画
02-02 顔のベースとなるポリゴンの構成をつくる
02-02-01 基本となる「目」「鼻」「口」のポリゴン構成をつくる
02-02-02 顔全体のポリゴン構成をつくる
02-02-03 下絵をもとに顔面を調整
02-02-04 さまざまな角度から顔面の調整
02-02-05 顎先から首の造型
02-03 顔の造り込み
02-03-01 瞳の作成
02-03-02 仮のマテリアル(材質)を設定
02-03-03 まつ毛の作成
02-03-04 眉毛の作成
02-03-05 耳の作成
02-03-06 後頭部の作成
02-04 髪の作成
02-04-01 パーツ分けを考える
02-04-02 ヘアバンドを作成
02-04-03 前髪を作成
02-04-04 その他の髪の作成1
02-04-05 後ろ髪(サイドとリア)の作成
02-04-06 その他の髪の作成2
02-05 全体のバランス調整と細部の造り込み
02-05-01 ポリゴンの表裏を確認
02-05-02 頭部全体の調整
02-05-03 細部の造り込み
Chapter03 素体のモデリング
03-01 準備と計画
03-01-01 準備
03-01-02 計画
03-02 素体の作成
03-02-01 体のベースとなる円柱を配置
03-02-02 胴、腕、脚の形状を調整
03-02-03 胸の形状を作成
03-02-04 胴、腕、脚、胸をつなげる
03-02-05 腰から股の作成
03-02-06 足先の作成
03-02-07 手の作成
03-02-08 肩の作成
03-02-09 関節の調整
Chapter04 素体のスキニング
04-01 ボーンと頂点ウェイトについて
04-01-01 ボーン構造について
04-01-02 頂点ウェイトについて
04-02 ボーンの作成と設定
04-02-01 基本のボーンの作成
04-03 頂点ウェイトの設定
04-03-01 素体の頂点ウェイトの設定
04-03-02 「モディファイアー」の適用
04-03-03 頂点ウェイトや形状の微調整
04-04 揺れもののボーンと頂点ウェイト
04-04-01 髪の設定
04-04-02 胸の設定
Chapter05 Unityでの素体の動作テスト
05-01 FBXエクスポートとUnityインストール
05-01-01 Unityとは
05-01-02 BlenderからFBX形式でエクスポート
05-01-03 UnityHubのインストール
05-01-04 Unityのインストール
05-02 Unity起動前の準備
05-02-01 Unity Hubでサインイン
05-02-02 Unity Hubでライセンスの取得
05-02-03 新規プロジェクトの作成
05-03 Unityでの基本操作
05-03-01 各ウィンドウの説明
05-03-02 Unityプロジェクトのファイル構造
05-04 Unityへのインポート
05-05 既存アニメーションで動作テスト
05-05-01 モデルのリグをヒューマノイドへ変更
05-05-02 ダンスアニメーションの適用
05-05-03 タイムラインの設定
05-05-04 モーションを再生
05-05-05 問題なく動作するのを確認
05-05-06 プロジェクトの保存
Chapter06 衣装のモデリング
06-01 素体をもとに衣装全体のベースを作成
06-01-01 衣装の下絵の配置
06-01-02 オーバーニーソックスの作成
06-01-03 靴の作成
06-01-04 ベルトの作成
06-01-05 ジャンパースカート(下部)の作成
06-01-06 ジャンパースカート(上部)の作成
06-01-07 リボンの作成
06-02 衣装のベースに仮スキニング
06-02-01 素体から「ウェイト転送」
06-02-02 ボーンの追加
06-02-03 追加したボーンのウェイト設定
06-03 細部の作成
06-03-01 靴のディティールアップ
06-03-02 ジャンパースカート(下部)のディティールアップ
06-03-03 ジャンパースカート(上部)のディティールアップ
06-03-04 その他のディティールアップ
06-03-05 形状やウェイトの確認などの仕上げ作業
Chapter07 マテリアルの設定とテクスチャの作成
07-01 マテリアルの設定
07-01-01 各種マテリアルを作成
07-02 UV展開
07-02-01 UV展開の方法
07-02-02 各パーツのUV展開の例
07-02-03 UVマップのエクスポート
07-03 テクスチャの作成
07-03-01 塗る前に
07-03-02 色分け
07-03-03 アンビエントオクルージョン
07-03-04 影塗りハイライト塗り
07-03-05 アルファチャンネル
07-03-06 仕上げ
Chapter08 フェイシャルの作成
08-01 フェイシャルの解説
08-01-01 「シェイプキー」の設定
08-01-02 フェイシャル一覧
08-02 基本フェイシャルの作成
08-02-01 代表的なフェイシャルの作成
08-03 フェイシャルの調整と仕上げ
08-03-01 モディファイアーの適用
08-03-02 フェイシャルの仕上げ
08-04 VRChatに必要な「シェイプキー」の追加
08-04-01 目の「シェイプキー」
08-04-02 口の「シェイプキー」
08-04-03 オブジェクトの結合
Chapter09 Unityでのセットアップ
09-01 ユニティちゃんトゥーンシェーダー2.0のインストール
09-02 キャラクターのFBXエクスポート
09-03 インポートしたキャラクターの設定
09-03-01 キャラクターモデルのインポート
09-03-02 キャラクターモデルの設定
09-04 マテリアル・テクスチャー・シェーダーの設定
09-04-01 表情テクスチャーの設定
09-04-02 マテリアル・シェーダーを設定
Chapter10 VRChatのセットアップ
10-01 VRCライブラリのダウンロード
10-01-01 VRChatでアカウント作成
10-02 VRCコンポーネントのアタッチ
10-03 テストとアップロード
10-04 FXレイヤーの設定
10-04-01 表情のアニメーションを作る
10-04-02 FXアニメーションコントローラーを作る
10-04-03 FXアニメーションコントローラーへ表情アニメーションを割り当て
10-04-04 PlayableLayersにFXアニメーションコントローラーを割り当てる
10-05 揺れものの設定
10-05-01 VRC PhysBoneのコンポーネントを追加
10-05-02 VRC PhysBoneに揺らすためのボーンを設定
10-05-03 他のスカートのボーンにもVRC PhysBoneの追加
10-05-04 コライダーの設定
10-05-05 スカートにコライダーを適用
10-06 キャラクターのプレハブ化
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