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トップティアのクリプトVC、HashedはなぜAxieや投資できたのか?(スペースまとめ前編)

こんにちは。Skyland Venturesのshutoです。

この内容は、2023年8月9日に開催されたHashedのBaekさん、起業家のKiyoさんとSKyland Ventures木下さんとのX(旧Twitter)スペースの内容を記事用に編集したものです。



Hashedとは?

木下:SKylandVenturesの木下です。代表パートナーをしています。2021年くらいから日本円で50億円を集めて、国内海外問わずクリプト領域に投資しています。よろしくお願いします。

Kiyo:Kiyoと申します。アメリカのサンフランシスコでNoxxという偽名経済に関するスタートアップをしています。

このスペースを企画したきっかけとしてはHashedがグローバルでトップティアのクリプトVCで、その3人のGPのうちの1人のBaekが、日本で生まれ育って愛着もあって日本語もペラペラだというので、もっと日本の人にBaekのことを知ってもらいたいし、Baekにも日本のWeb3のスタートアップのエコシステムにも繋がって欲しいという機会をちゃんと設けたいなと思っていました。それで今回企画しました。

Hashedについては後で説明があると思うんですけど、面白い会社で投資の部署だけでも色々あってイマージングマーケットにフォーカスする部署もあったりして、すごく面白いので、この後色々聞いていきたいと思います。

この前、Baekとご飯を食べながらクリプトのマーケットの話をしてたんですけど、彼が考える今後のクリプトマーケットの知見がすごく参考になったので、そんな話ができたらな思っています。後で質問を受けつながら、インタラクティブに参加してもらえればなと思います、よろしくお願いします。

じゃあBaek、簡単に自己紹介してもらっても良いですか?

Baek:HasedのBaekと申します。Hasedは2017年に設立されて、その時はグローバルで見るとクリプトはブルマーケットのサイクルでした。

きっかけとしては、当時の韓国に初期からクリプトエコシステムにファウンダーが来ていて、その時にHashed Loungeというミートアップを主催しました。

その時に、OmisegoやKyber Network、EthereumのファウンダーのVitalikなどたくさんのクリプトのファウンダーが来ていて、そこでこの領域の面白さや機会の多さを感じてHashedをつくることになりました。

Hashedのパートナー3人はみんな技術的なバックグラウンドがあり、僕もロボティクスにバックグラウンドがあったりして、みんなExitの経験もあります。

でも、2017年の当時は、3人ともVCがやファイナンスから来たわけではなかったので、どうやってクリプトファンドをやって良いかもわからなかったので、まずはファンドを作るのではなく600Kドルを個人資本を出し合って始めました。

最初は会ってくれたファウンダーたちにインキュベーションや投資をしたのがHashedの始まりです。今は250人規模のグループで投資もするし、インキュベートをするUNOPENDというスタジオやインドやアフリカのイマージング市場に投資する部門もあります。

韓国では、KODAという一番大きいデジタルアセットのカストディアルのシステムもオペレートしています。よろしくお願いします。

Kiyo:250人もいるんですね。すごいですね。

Baek:ベンチャーファンドの方には35人くらいです。それ以外にベンチャースタジオやインド、KODAに、人が多くいて合計250人になっています。

Kiyo:本体の投資部門、ベンチャースタジオの部門、インドとアフリカのイマージングファンド、そしてカストディーの事業ということで全部で4つくらいの部門にわかれているんですよね。

Baek:はい、そうですね。

Kiyo:今ってファンドサイズはどれくらいなんですか?

Baek:2020年の12月に120Mドルの1号ファンドを作って、2021年の終わりにまた200Mドルの2号ファンドを作って、今は2号ファンドから投資活動をしています。

最初に言った$600K始めてのファンドもプリンシパルビークルとしてトークン投資、OTCなどを行っています。ベンチャーファンドではエクイティの投資にフォーカスしています。

Kiyo:なるほど。今のファンドのチケットサイズはどれくらいから出資されるんですか?

Baek:500Kドルから30Mドルくらいで投資していて、ターゲットサイズは1Mから10Mくらいまで、シード投資からシリーズA投資がフォーカスしているステージです。

Kiyo:では、Hashedは実際にどんなプロセスで投資しているんですか?自分たちからスタートアップにアウトリーチなどはしているんですか?例えば、今聞いている人の中でHashedから出資を受けたいみたいな人たちはどうすれば良いんですかね?

Baek:僕たちからアウトリーチしていることもあります。Hashedの強みと言えば、今まで150以上のプロジェクトに6年間投資しているので、Hashedのポートフォリオの中でクリプト業界のエコシステムが作られているんです。

そしてHashedのポートフォリオの中でシナジーを作るためにコネクションを作ったりコミュニケーションを取っているんですけど、その中で今どういうソリューションやインフラが必要なのかというコミュニケーションはしています。

僕たちの投資先のファウンダーからのフィードバックから中で次どの領域で投資するのかというブレインストーミングをしています。

クリプトのマーケットはサイクルがあるじゃないですか、ブルマーケットもあれば、ベアマーケットもある、いつもブルマーケットでは凄いアプリケーションやDefiやNFTのように新しいインフラの技術が出てくるタイミングがあったりします。

その時にいつも考えるのは、まだこれは準備が足りていないんじゃないか?と考えることです。もうちょっとイノベーションができそう、まだスタートアップが入る余地があると見込めたときには、その領域で挑戦しているファウンダーにアウトリーチをすることはあります。

それと、今ポートフォリオが150以上なので、そのプロジェクトたちの中のコファウンダーとかエンジニアのメンバーが会社を出て、新しくプロジェクトを始めるときにもアウトリーチして一緒にやりませんかと声をかけますね。

それとHashedはやはり、アジアと米国にすごくアクティブに投資しているクリプトファンドというイメージがあるので、米国にいるファウンダーがアジアのマーケットを狙いたいといって声をかけてくれることもあるし、逆にアジアではもう少しグローバルにやっていきたい、アメリカを狙いたい、Business Developmentをしたいというファウンダーが声をかけてくれますね。

Kiyo:ありがとうございます。

Hashedができた経緯

木下:僕からも聞いていいですか。どうやってHashedの3人のパートナーは出会ったんですか?

Baek:僕が一番若いGPでSimonRyanとは10くらい年齢が離れています。Simonは韓国にいて、Ryanはシンガポールに、僕はサンフランシスコ/アメリカにいますね。かなり違うバックグラウンドだけど、みんなスタートアップのファウンダーだったこと、エンジニアの出身だということで繋がることができました。

RyanとSimonは高校のときから友達であ、(当時)韓国のスタートアップエコシステムは大きくなってはいるもののまだ小さいコミュニティだったので、その中でアイデアを壁打ちするような友達だったようです。

そして、2016年、EthereumのICOとかビットコインの価格が上がっているタイミングでSimonは韓国版のマッチングアプリで2回イグジットさせたところで(それぞれ韓国で1位,2位)、一方Ryanはスマートコントラクトのエンジニアだったんですが、データサイエンティストになってビッグデータを扱うスタートアップをイグジットさせていて、

(Baekが)2016年は次に何をしようか迷っていて色々ブレインストーミングしている所でSimonにコネクトして、クリプトの投資を一緒にやってみようということになったんですね。その時に僕はアメリカにいたんですけど、成功したと呼べるようなプロジェクトをやっているわけではなかったので、シアトルにあるアマゾンでエンジニアとして働いていました。

仕事が終わったら、そこの大学にある図書館へ行き、Ethereumのホワイトペーパーを読んだりビットコインのミートアップに参加したり、Ethereumのハッカソンに行っていました。

その時考えていたのは、20代のときにどうやったらもうちょっとエネルギッシュなコミュニティでファウンダーになれるかなという風に、次にどんなキャリアが良いのかを模索していた時なんです。

僕は高校生の時からロボティクスとかVR、AI、IOTとかの領域でデモデイやハッカソン、ミートアップには参加していましたが、クリプトのミートアップに行った時ははじめて、この人たち(参加者)は怖いなと思いました。

すごくパッションを持っていて、この領域でイノベーションを起こそうと考えているんだと伝わりました。その時にこういうコミュニティで働ければ、個人的な成長はできるんじゃないかなと思ったんです。

そうして、クリプトが跳ねる機会はどこにあるだろうと探していました。その時にSimonとRyanに出会いました。そして、Hashedを作ることになり2018年から韓国に引っ越しして投資を始めました。

なぜHashedはAxieやSandboxに投資できたのか

木下:今の話の延長で聞いてみたいんですけど、Hashedの6年の歴史を3段階くらいでわけていくと、どんな感じになるんですかね?

サイトを見れば載っているんですけど、Aptos、Alchemy、Ceramic、Dfinity、Circle、Etereum、COSMOS、NEARなどみんなが知ってるL1からインフラ系のものもあれば、後AxieやdYdXも投資していて、あらゆるクリプトスタートアップに投資していると思うんですけど、はじめからそれをやっていたというのか、それともフェーズごとに変遷していったのか、そのあたりを聞きたいです。

Baek:はい、はじめは僕たち(Hashed)があんまり資本がなかったので、大きなサイズのベンチャーキャピタルのような投資はできませんでしたが、その当時のクリプト領域はVCが投資するような見方をしていませんでした。

なので、ファウンダーたちにちょっとだけ投資してインキュベートしてクリプトのコミュニティをデリゲートするか、どうやってICOするのか、どうやってトークンエコノミクスをデザインするのか、どうやってグローバルなコミュニティを作っていけるのかという所をヘルプするファンドとして始めました。

それで、はじめはほとんどアジアのファウンダーと一緒に仕事をしていました。韓国ではICONとかカカオのKlaytnというLayer1メインネットも僕たちが一緒にインキュベートしていました。

日本の親しみのある所でいうと、LINEのブロックチェーン、chainLINKも投資をしていましたし、2018・19年あたりはベトナムとかシンガポールのスタートアップもすごく多くて、そのときに、カイバーネットワーク、これが初めてのDEXプロジェクトになったんですが、僕たちがアドバイザリーしてUIデザインとかトークンのローンチまでサポートしました。

それで、色々なプロジェクトがグローバルでアテンションを貰うようになってきて、こういうプロジェクトをインキュベートしているということでHashedに興味を持ってもらえて、業界から注目され始めましたね。

2019年以降はAUMが大きくなっていた所で、ベアマーケットだったじゃないですか。その時はアジアの状況がよくなくて、中国のVCやトレーディングファームがシャットダウンしていて、SAFTトレーディングと言っていたんですけど、投資して投資した契約をセカンダリで売買しているという事実がありました。

その時にHashedはLPがないから、自己資本でやっていたので、売るというプレッシャーがなかったので、長い時間ホールドしていたし、その時に売ってなかったことで、さらにHashedのブランディングにボーナスポイントになったんじゃないかと思います。

それで、クリプトのファウンダーたちからするとHashedを見るときに
このファンドははじめのブルマーケットのときにすぐトークンを売って現金化せず、テクニカルで長期的な視点を持っているファンドという評価を受けましたので、それからもうちょっとインターナショナルな投資を始めました。

そして、2019年からサンフランシスコに移住して、ベアマーケットだったんですけど、ハッカソンに行くと、ビットコインの価格とは関係なく、みんな一生懸命にビルドしていて、次のイノベーションは何かと模索していて、それでヨーロッパやアメリカでインフラレイヤーとかDefi領域にリーダシップがあるファウンダーに投資を始めました。

2019年以降の投資を見ると、60%がアジア、残りの40%くらいがアメリカとヨーロッパに投資していることになります。

木下:何社か、この会社へこのタイミングで投資したのがターニングポイントだったというのはありますか?

Baek:ベンチャーキャピタルというのは投資したタイミングでファンドにインパクトがあるということはあまりないんですけど、何年後かに振り返ったときにこの投資が重要だったな、というのはあると思います。

はじめは韓国でドミナントでプレゼンスがある所に投資するのが、KlaytnとかchainLINKの例で、次はAxieとかゲーミング領域ですね。

Hashedが投資をするスキルがあったのが、インフラストラクチャー領域でした。

そしてその投資をする理由は、ブロックチェーンという技術をマスアダプションをしたいというのがミッションであり、それを実現していくためにアダプションのゲートウェイが必要でそのゲートウェイになるのが、コンテンツとエンターテイメントから来るんじゃないかと思っていて、その時からゲームがクリプトのベストパートナーだと思い投資していました。

Axieに投資していたときは2018年の終わりから2019年くらいだったんですけど、その時にクリプトのマーケットでのゲームは、ほとんどがカジノのようなギャンブルゲームばかりだったので、TRONとかEOSチェーンでギャンブリングをするゲームしかなかったんですよ。

僕たちはそうじゃなくて、ゲームとかIPとかストーリーがある、コンテンツがあるゲームがクリプト領域で出てきたら大きいインパクトが出るかなと思い、探し始めてたんですけど、全然ゲーム領域のファウンダーがいなくて、それで自分たちでHashed Labsというゲーミングのアクセラレーターのようなものを2019年に立ち上げました。

(Hashed Labsは)その時しかしてないんですけど、その時にピックしたゲームのファンドが、AxieとかSandboxで、シードラウンドをHashedがリードインベスターとして投資しました。

また、Mythical gamesというアメリカの会社や、League of Kingdomsというイタリアの会社に投資しました。Axie Infinityはみんな知られているように東南アジアでアダプションを作って、トークンモデルはパーフェクトではなかったんですけど、トークンインセンティブがどうやって、アダプションを作ってグローバルなマーケットで通用するのかということをヒントを示してくれました。

それと、SandboxはRobloxやマインクラフトみたいなクリエイティブやUGCコンテンツがWeb3でできるんだということを示してくれました。それはソフトバンクビジョンファンドからも投資を受けましたし、Mythical gamesLeague of Kingdomsa16zから投資を受けました。

Hashed Labsの4つのプロジェクトが全部3年以内にユニコーンになってすごく成功したプログラムになりましたね。だけど、その時やってたときは本当に成功するかはわかりませんでした。それは、他のクリプトファンドがゲーム領域に投資をしていなかったので、僕たちはすごく変なことをしているんじゃないかと感じていました(笑)

木下:Sandboxやその他いくつかのプロジェクトでその当時、投資判断できたのはどの部分だったんですか?

Baek:やっぱり僕たちがクリプト領域におもしろさを感じている所は、トークンが経済のシステムをリデザインできるツールだと考えているんですけど、例えばスマートコントラクトからデジタルアセットのオーナーシップとか貢献のインセンティブや非中央集権的なガバナンスです。

以前はゲームの開発者が開発した部分の範囲内でのみユーザーは楽しめたわけですけど、未来のゲームやメタバースの体験はもっとオープンで僕たちが住んでいるソシャイティに近いアーキテクチャになるだろう、そのためにはクリプトの技術が必要だとうと考えていました。

Sandboxは完璧ではなかったんですけど、その最初の一部を見せてくれたと思います、ランドがあってその上で不動産を立てたり、ライブを開催したりできる、その中にトークンとNFTがあってエコノミーを作れる、そのような世界の一端を見せてくれました。

VRとかがあれば人たちはそれをメタバースだと言うけど、僕はディズニーランドに行くような感じで、僕がそこに行って買い物をする、例えばお金を払って食べ物を食べるし、乗り物にも乗りますよね。

でもそこ(ディズニーランド)を出たらその世界は終わってしまい、パークとは全然関係ない世界です。そしてパークが成功しても僕には関係ありません、パークが悪くてなにかフィードバックをしてもパークは変わりません。

でも、ブロックチェーンでシステムを変える、つまり、ガバナンスとエコノミクスとオーナーシップと再デザインをしたら、もう少しサステイナブルな本当のメタバースができるんじゃないかと思い、投資をしました。

(後半へ続く)

Skyland Ventures
日本の独立系VC。Vtuber事務所のAnyColorなどに投資。2022年からWeb3領域に特化した50億円規模の4号ファンドを設立。
https://skyland.vc/

Hashed
クリプト領域のトップティアVC。AxieInfinityに初期から投資するなどクリプトのエコシステムをVCとして育ててきた。
https://www.hashed.com/

Kiyo
アメリカ・サンフランシスコで活躍する日本人起業家。偽名経済をエンパワーするサービスnoxx の共同創業者
https://www.noxx.xyz/



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