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毎週木曜21時に、新作映画の評論を投稿してます🎦     X(Twitter)は、映画や本について投稿しています🍿

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映画評 碁盤斬り🇯🇵

『凶悪』『死刑に至る病』の白石和彌監督による初時代劇作品。古典落語の演目『柳田格之進』を基に、冤罪事件によって娘と引き裂かれた男が武士の誇りをかけて復讐を挑む姿を描く。 草彅剛演じる柳田格之進は、清廉潔白であることを心掛け、武士の誇りを自負し実直であろうとする人物として描かれる。柳田の人柄を表す記号として囲碁が用いられる。「自分に正直な碁を打つ」と語るだけでなく、対局相手からは「真っ直ぐな人格が現れている」と評価される。さらに、賭け囲碁で実力を見せつけ、金儲けを第一に考えて

    • 映画評 関心領域🇬🇧 恐怖に恐怖が重なる劇場体験。

      マーティン・エイミスによるアウシュヴィッツ強制収容所の隣で暮らす家族を書き綴った同名小説を原案とし、『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』のジョナサン・グレイザー監督によって映画化。第76回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞。第96回アカデミー賞作品賞含む計5部門ノミネートされ、国際長編映画賞と音響賞の2部門を受賞するなど国際的に高く評価された一作。 アウシュビッツ強制収容所の所長ルドルフ・ヘス(クリスティアン・フリーデル)と妻ヘス(サンドラ・ヒュラー)と5人の子供たちの一家は、収

      • 映画評 猿の惑星/キングダム🇺🇸

        名作SF映画『猿の惑星』をリブートした『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』『猿の惑星:新世紀(ライジング)』『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』に続くシリーズ第4弾。『メイズ・ランナー』シリーズを手がけたウェス・ボール監督によって新たに産声をあげた。 本作は『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』の続編にあたるため、事前にリブートシリーズを予習しておくと物語に没入しやすくなる。シーザーとは誰なのか、シーザーの教えの意味と想い、なぜ猿が言語を話し人間は退化するに至ったのか。

        • 映画評 ゴジラxコング 新たなる帝国🇺🇸

          『ゴジラ』と『キングコング』のリブート映画『ゴジラVSコング』の続編で、『GODZILLA ゴジラ』から始まった、モンスター・ヴァースシリーズの第5作目。怪獣たちによる迫真の演技が観れるという革新的な映画であると評価できる一方、今後のシリーズ展開に不安を残す内容であった。 本作における怪獣と人間の役割は過去の怪獣映画と類を見ないほどかなり歪だ。怪獣映画の基本構成は、人々の生活圏に怪獣がやってくることで巻き起こる人間ドラマや人間視点で描かれる戦闘がメインで描かれる。怪獣はあく

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          映画評 青春18×2 君へと続く道🇯🇵🇹🇼

          ジミー・ライの紀行エッセイ『青春18×2 日本漫車流浪記』を『新聞記者』『余命10年』の藤井道人監督・脚本で映画化。既視感満載の王道ストーリーではあるが、台湾の景色をはじめ、本作で映し出される美しい景観と、主演を務めたシュー・グァンハンと清原果耶の演技とスター性が光る内容であった。 本作はシュー・グァンハンと清原果耶の恋愛映画だ。仕事が立ち行かなくなったジミー(シュー・グァンハン)が、日本を旅行しながら、18年前に台湾で出会った日本人女性アミ(清原果耶)を過去回想として思い

          映画評 青春18×2 君へと続く道🇯🇵🇹🇼

          映画評 悪は存在しない🇯🇵

          ベネチア国際映画祭で銀獅子賞を獲得した『ドライブ・マイ・カー』『偶然と想像』の濱口竜介監督による最新作。両者の立場からなる対立と相互理解、自然との共存共栄など、現代的とも言える易しいテーマの映画ではない。自然を舞台としたからこそ浮かび上がる悪の存在を目の当たりにした。 森の木々や枝を見上げるように長々と映し出されるファーストショットから巧(大美賀均)が湧水を汲み、娘の花(西川玲)と森の中や凍った湖を散策し、帰宅して薪を割る一連の展開が30分弱坦々と何の変哲もなく描かれる。何

          映画評 悪は存在しない🇯🇵

          映画評 異人たち🇬🇧

          山田太一原作の小説『異人たちとの夏』を『さざなみ』『荒野にて』のアンドリュー・ヘイ監督によってロンドンを舞台に改変し再映画化。監督の性的嗜好を全面的に反映させた結果、原作または大林宣彦監督版が持ち合わせていた面白さの本質からかけ離れた挙句、非常に説教くさい内容に改変された珍作だ。 原作小説及び松竹制作の大林宣彦監督による『異人たちとの夏』から大きく改変された変更点は、主人公がゲイとして描かれていることだ。アンドリュー・ヘイ監督自身がゲイであることが影響しており、アダム(アン

          映画評 異人たち🇬🇧

          映画評 ソウルフル・ワールド🇺🇸

          『インサイド・ヘッド2』の公開に先立ち、アカデミー賞2部門に輝いた本作が劇場初上映。ジャズミュージシャン志望のジョーと人間として生まれることを拒むソウル”22番”の冒険を描くストーリーは、人生について深く哲学された内容であった。 本作で度々登場する「煌めき」がキーワードとなっており、「生きる意味」として用いられる。ジョーはプロのジャズミュージシャンになり演奏すること。対照的に22番はやりたいことや夢中になれることを見つけられず、コンプレックを抱えている。結論からいえば、「煌

          映画評 ソウルフル・ワールド🇺🇸

          映画評 貴公子🇰🇷

          『新しき世界』『THE WITCH 魔女』シリーズのパク・フンジョン監督による、莫大な遺産を巡る攻防に巻き込まれた青年と自らを”友達”と名乗る謎の男「貴公子」による執拗な追跡を描くアクションノワール。パク・フンジョン監督の作家性が垣間見える一方で、アクションの描き方には疑問符が湧く内容であった。 冒頭、囚われた貴公子が椅子に括られたところを脱出し、『イコライザー』のマッコールのような手際の良さで、敵を斬殺するシーンは、まさにパク・フンジョン監督作品に登場するキャラクターを体

          映画評 貴公子🇰🇷

          映画評 変な家🇯🇵

          2024年、今年一番のサプライズは『変な家』に間違いない。YouTuber雨月氏による、家の間取りを用いて展開されるミステリー小説を原作とする本作は、封切りから4週連続のVを獲得し、興行収入も30億を突破するなどの大ヒットを記録している。だが肝心の内容は「この間取り、なんか変なんです」ならぬ「この映画、なんか変なんです」と言いたくなるような内容であった。 基本的に筆者のスタンスを明確にさせていただくと、酷評よりだ。大ヒットを記録しているということから、どんな内容なのか気にな

          映画評 変な家🇯🇵

          映画評 パスト ライブス/再会🇺🇸

          第96回アカデミー賞にて作品賞と脚本賞にノミネート、第81回ゴールデングローブ賞作品賞含む5部門ノミネートされるなど、賞レースで注目の的となった本作は、運命に惑わされる男女をロマンティックに描いた暖かくも切ない恋愛映画であった。 ノラとヘソンの関係性及び2人が紡ぐ人生を”運命”以外に括ることはできない。12歳で離れ離れになり、24歳でオンラインを通じて再開するもすれ違い、36歳でNYで直接再開する。韓国語でイニョン(인연)和訳すると”縁”や”運命”という言葉が度々、台詞の中

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          映画評 あの夏のルカ🇺🇸

          2021年、パンデミックによって劇場公開が見送られ、ディズニープラスにて配信スルーされていた本作が、『インサイド・ヘッド 2』公開に先立ち、2週間限定で劇場公開が実現。楽しめる要素は多いが、マクガフィンの甘さと現実から離れすぎた理想には一言言いたくなる内容であった。 冒頭、人間とシー・モンスターが、それぞれ互いに恐れ合っていることが示されるシーンは、フランシス・ベーコンが提唱する思い込みを紐解く四つのイドラのうちの一つ「種族のイドラ」を放物とさせられる。人間がシー・モンスタ

          映画評 あの夏のルカ🇺🇸

          映画評 オッペンハイマー🇺🇸

          原子爆弾を発明したアメリカの物理学者ロバート・オッペンハイマーの栄光と没落の生涯を『ダークナイト』『TENET テネット』のクリストファー・ノーラン監督で映画化。第96回アカデミー賞で作品賞を含む計7部門受賞した本作は、クリストファー・ノーラン監督の集大成とも言える作品であった。 第2次世界大戦中、物理学者のロバート・オッペンハイマー(キリアン・マーフィー)は、核開発を急ぐ米政府のマンハッタン計画において、原爆開発プロジェクトの委員長に任命され、優秀な科学者らを率いて世界初

          映画評 オッペンハイマー🇺🇸

          映画評 四月になれば彼女は🇯🇵

          川村元気による同名小説を、米津玄師『Lemon』など有名ミュージシャンのMVを手掛けた山田智和による長編映画初監督作品は、映画監督として厳しい船出となってしまった。 精神科医の藤代俊(佐藤健)のもとに、かつての恋人である伊予田春(森七菜)から手紙が届く。ボリビアのウユニ塩湖から出されたその手紙には、10年前の初恋の記憶がつづられていた。その後も春は、プラハやアイスランドなど世界各地から手紙を送ってくる。その一方で藤代は現在の恋人・坂本弥生(長澤まさみ)との結婚の準備を進めて

          映画評 四月になれば彼女は🇯🇵

          映画評 私ときどきレッサーパンダ🇺🇸

          2022年、パンデミックによって劇場公開されず、ディズニープラスにて配信スルーされていた本作が、『インサイド・ヘッド 2』公開に先立ち、2週間限定で劇場初上映。思春期ならではの悩みを描けてる一方で、ラスト主人公の選択に疑問が残る内容であった。 伝統を重んじる家庭に生まれ、両親を敬い、親の期待に応えようと頑張るティーンエイジャーの少女メイ。本当は流行りの音楽やアイドルが大好きで、恋をしたり、友達とハメをはずして遊んだりと、やりたいこともたくさんある。母親の前で本当の自分を隠す

          映画評 私ときどきレッサーパンダ🇺🇸

          映画評 デューン 砂の惑星 PART2🇺🇸

          第94回アカデミー賞で6部門に輝いた『DUNEデューン 砂の惑星』の続編。『メッセージ』『ブレードランナー2049』のドゥニ・ヴィルヌーブ監督が、前作に引き続きメガホンを取った本作は、駆け足で展開されるストーリーに、DUNEの世界観に没入しきれない物足りなさが際立った。 アトレイデス家とハルコネコン家による、制するものが全宇宙を制する砂の惑星”デューン”を巡る両家の戦い。ハルコンネン家の陰謀により一族を滅ぼされたアトレイデス家の後継者ポール(ティモシー・シャラメ)は、ついに

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