傷だらけの編集者が教える「売れない本」の作り方
売れるのは運が良かっただけ?
売れる本の企画を考える。
編集者の至上命題ですが、これが難しい。
たくさん売れた本を作ったセンパイの編集者たちに聞いても、
「売れたのはたまたま」「運が良かった」
と答える人ばかり。手の内を明かさないようにしているだけかと思いきや、本当にそうでもなく、けっこう後付けが多いという話はよく耳にします。
編集者は誰しも、いい本にしよう、一人でも多くの人に読んで欲しいと思って作っているので、売れたら売れたで「●●したから売れた」と言うことはできるはずなんです。
でも、それを満たせば必ず売れるわけではないということなんでしょうね。
ベストセラーの条件は偉大なる先人たちがいろいろ言ってくれてはいます。
「新しい」「オリジナリティがある」「タイトルが斬新」「女性読者がつく」
など、改めて書き出すと普通な気がします。それだけ普遍であると言えるのかもしれません。
ただし、敏腕編集者が編み出した法則は、その人が敏腕だから成功できている可能性が高く、私のような凡百の編集者にはあまり参考にならないケースも多い。
理屈じゃない?
では、どうすればたくさん売れる本が作れるのか?
逆説的な言い方になりますが、売れない本を作らないようにすること大事なのかもしれません。
これは私ではなく、数々のベストセラーを送り出した編集者の方(名前は失念、失礼!)がたぶん何かで発信して仰っていたことなのでご安心ください。
どうやったら本が売れるかはタイミングや運にも左右されるのでわからないけれど、売れなかった本の理由はわりとわかる。つまり「こうしたら失敗する」悪手をやらないようにしていけば自ずとヒットの確率は上がる、みたいなことを言っていたと記憶しています。
失敗の数には自信のある私の編集者人生ですので、思いつくまま書き出してみます。
・二番煎じをやる
・何となく時流にのっかる
・思いつきやノリだけで作る
・読者をイメージできていない
・著者やテーマの肝がつかめきれていない
・内容がそこまで抜群に面白くないのに妥協して出してしまう
……たくさんありすぎてつらいので割愛します。
世の中には成功物語ばかり溢れているように感じます。
でもその成功者も失敗を重ねたからこそ成功をつかんでいるのではないかと思います。
まぁでも、理屈を詰めていくこともすごく大事ですが、編集者が熱狂して、とてつもない熱量が込められていれば、すごく売れるかどうかはわかりませんが、売れないことはないようが気がしますね。
最近、スポーツライターの藤島大さんの書籍『事実を集めて「嘘」を書く』を担当したのですが、編集者の才能は「惚れ込む力」だと言っていました。そして、スポーツであれ何であれ、対象が好きで好きでたまらない、という思いは何物にも勝る、と。
先日、井上尚弥と戦ったボクサーたちを取材したノンフィクション『怪物に出会った日』の著者・森合正範さんの出版記念イベントでも、同じような話が出ていました。高校時代、勉強が嫌いで授業中も大好きなボクシングの雑誌を夢中で読んでいた森合さんは、後楽園ホールでアルバイトしていた兄に「お前も大学に行ったら後楽園ホールでアルバイトできるぞ」と言われ、ボクシングの聖地でアルバイトをするために大学進学を決意。志望校は後楽園ホールのある水道橋駅の近くから選んだそうです。
東京新聞に入社してからも、ほぼボクシングだけを追い続けたそうです。
ボクシングさえ取材できればいい。ボクシングさえ書ければいい。そんな雰囲気がイベント中もありありと伝わってきました。
どれだけその著者に惚れ込めるか。好きになれるか。数少ない私の中での売れた本もそれがあったように思います。好きだから理解できるし、どうやって伝えられるのか死ぬほど考える。
そこをおざなりにすることなく企画を考えろ。魂込めろ、ということですね。
ちなみに、マスコミの仕事は「広く浅く」か「狭く深く」だと言われますが、困ったことに私は「狭く浅い」のでときどき絶望的な気持ちになります。
良いアドバイスがあればお願いします。
話が随分とっちらかりましたが、今から書き直す気力もないのでこれで締めます。
どうでもいい記事を読んでいただきありがとうございました。お元気で。
文/アワジマン
迷える編集者。淡路島生まれ。陸(おか)サーファー歴23年のベテラン。
本づくりの舞台裏、コチラでも発信しています!
Twitterシュッパン前夜
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