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Daily Life Essay「あじわい亭」 ~1品目~

Daily Life Essay「あじわい亭」
感じていたことを伝えられなかったこと、ずっと自分の中で心にひっかかっていたことや感情、はじめて食べたご飯のような新たな気づき、覚えておきたいこと。週替わりでメニューが変わる幕の内弁当のように、いろんなエピソードが詰まった、日常を味わうエッセイマガジン。
それがDaily Life Essay(日常のエッセイ)「あじわい亭」です。

ハレとアメ


晴れの日は晴れの楽しみ方、雨の日は雨の日の楽しみ方ができる人は、ある種の才能だと思う。野球をしていた小中高時代は、雨が降ってほしいと願いつつも、降ったら降ったで何をしようか悩んでいたことを思い出す。

最近読了した小説「日日是好日」の中で、こんな表現があった。

雨の日は、雨を聴く。雪の日は、雪を見る。夏には、暑さを、冬には、身の切れるような寒さを味わう。…どんな日も、その日を思う存分味わう。

<途中省略>

私たちは、雨が降ると、「今日はお天気が悪いわ」などと言う。けれど、本当は「悪い天気」なんて存在しない。雨の日をこんなふうに味わえるなら、どんな日も「いい日」になるのだ。

森下 典子著「日日是好日」より


この表現を思い出しながら、雨上がりの太陽を感じながら散歩してみると、近所の神社で河津桜が咲いていた。



さらに歩を進めると、名前はよく分からない美しい花が咲いている。車で通り過ぎると気付けない、散歩したから出会えた花。花や植物の名前を知っている人って、物知りだと思う。


布団を干す、自然光を浴びながらいい気持ちになる、外を走る。晴れの日だから出来ることをやり切った日は、自然と眠りが深くなっている気がする。植物の成長に日光が必要なように、人間らしく生きるために太陽が不可欠なのだと、こういった場面で再実感するのだ。


今年は雨や雪が多い。直近も雨や曇りの日が多く、休日に「今日何して過ごしたんだっけ…」とひとり反省会をしていることもしばしば。それでも、雨の過ごし方を悩んでいるなりに、溜まったレシートをスプレッドシートの家計簿にまとめたり、お茶とお菓子をペアリングしてみたり、本を借りたり、気になっていた洋菓子店に行ってテンションを上げつつ、雨の冷たさや吐息の白さを確かめたりしている。


雨の日を味わう、寒さを味わうという点では、まだまだひよっこだけど、小さい「こと」や「プチイベント」を自分の中でつくりながら、それをクエスト的に達成していくのが自分に合っている。そんな仮説に出会えた。


アメだから出掛けない、ハレだから出掛ける。という方程式に自分を落とし込む必要はなくて、前もって何も予定がなければ、その日の天気で出来ることを探せばいい。そう思えるだけで、天気の良し悪しで気分の波に影響を与えることを逓減(ていげん)出来るのだ。



2月も残りわずか、春はもうすぐ。
明日はどんな天気を味わえるのだろうか。


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