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遠藤一郎さん「ほふく前進 御百度参り100回目」が、5/17 無事終了

【さいたま国際芸術祭2020:当面の間延期中】

『Sightama Art Center Project』招聘作家、遠藤一郎さんの「ほふく前進 御百度参り 100回目」が本日無事終了しました。

ご協力いただきました皆様、支援、応援していただきました皆様に深く御礼申し上げます。

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一郎さんは、2020年2月8日にさいたまに入り、ほぼ毎日、日本一長いと言われる約2kmの氷川神社参道をほふく前進でお百度参りし、石を並べていました。

氷川参道について(さいたま市ホームページより)
 武蔵一宮氷川神社の参道である氷川参道は、ケヤキを中心としたおよそ700本の樹木が南北約2キロメートルにわたり続いており、本市における歴史・文化的資産として、都心部に残された貴重な緑の空間となっています。
 この氷川参道を中心として、氷川神社、大宮公園、盆栽村などがまとまって立地し、氷川神社とさいたま新都心をつなぐ氷川参道の並木が緑のシンボルとなっています。


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2020.2/15 「ほふく前進お百度参り」を始めた頃の様子 
まだまだ寒く気温がマイナスだった日も。


そして、本日、100日目の5/17。

氷川参道は緑が濃くなり、季節の変化も全身で体感しながら最後の日の出発となりました。

午前11時にさいたま新都市、一の鳥居からスタート。

最後のスタートに合わせ、その姿を見ようと数名の方も集まり、声をかけあいます。


「お願いします!」の声とともにゆっくりとしゃがみ、ほふくの体勢に。

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拳には、拝殿に並べる石を握り、ズルズルという音を立てながら少しずつ少しずつ進んで行きます。

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100回目の最後ということもあり、参道を行き交う人からも「頑張って!」「今日で最後だね!!」「お疲れ様!よくやった!もう少しだよ!」など、応援の声かけが多く、これまで一郎さんが積み上げてきたものを強く感じる時間となりました。

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100回目を見に来た地元住民から「頑張って!」という声が繰り返しかけられます。


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初夏の陽差を感じる晴れ、最高気温29℃。汗も多く滴ります。

休みながらまた、少しずつ少しずつ進んで行きます。

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そして、午後1時頃。累計約200kmの道のりの到達点。

その瞬間が訪れます。

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最後の鳥居をくぐり抜け、「ほふく前進お百度参り」達成!!!


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一郎さんの目に流れる涙がありました。



自然と拍手が湧き上がり、「おめでとうございます」の声が飛び交います。


それを一郎さんはそのままここにいるすべての人たちへ「おめでとうございます」を返します。


これまでの道のりを反芻するかのような時間が流れる中、次第に呼吸も整います。


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立ち上がり、拝殿へ。



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最後の石を並べました。



その後、一郎さんの姿を見たいと集った皆と、三密を避け、凍結状態の芸術祭の会場「旧大宮図書館前 野外空間にて」100回目の御百度参り達成をアーティストトークで共有しました。

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「ほふく前進の中での山場の時期とその越え方は?」の質問に対して、

「1つ目の山場は、1回目のほふく前進。約9時間かかった。それを終えて、これを100回やろうとしていることは【勘違い】だと思った。それでも、なぜか止めずに続けた。ほふく前進をしていると、はじめの頃は、すれ違う人からきつい言葉をかけられたり、視線が鋭かった。しかし、80回目あたりからそれらが大きく変化した。これを感じた時、いつやめてもいいなと強く実感した。やめないからその山を越えることができたのではないか。」

という言葉が印象的でした。


一郎さんにさいたまで「何かをやってもらいたい」と2019年頭から準備を進め、2020年3月、予定していた芸術祭が無期延期になり、新型コロナウイルスによって生活が一変しているような状況の中、今日がこのような形で訪れることは想像できませんでした。しかし、2月から一郎さんの制作を傍で見て、記録していく中で、この制作は今、世界に必要なことであると感じています。


その中で一郎さんに率直に聞いてみたいことを10つ質問させていただきました。


遠藤一郎さんへの質問

1:100回を終えて今の気持ちは?

2:なぜ、100回できたのか?

3:なぜ、さいたまでほふく前進をしようと思ったのか?

4:印象に残っていること

5:手応えを感じた時期

6:山場とそれの越え方

7:今の状況をどう捉えているか

8:これからやりたいこと

9:なぜ、カッパ師匠ではなく、遠藤一郎で制作したのか

10:さいたま国際芸術祭が再開した時に向けての抱負やメッセージ


以上の回答は後日アップする映像で共有したいと思います。

(追記:2020/05/21 以下、Youtubeにアップしました。)

「ほふく前進 御百度参り100回目」達成後のアーティストトーク


本来であれば、さいたま国際芸術祭2020の最終日にあたる5/17。


この日に達成の目標を掲げて積み上げてきたことについて訪ねると

「(ほふく前進が)イベント的になってしまっていたら最後まで来れなかったのではないかと思う。」と心境をつぶやいていました。



4月初旬に一郎さんが独自に制作したプレスリリースを改めて読み返すと、芸術祭への考えや、「ほふく前進」についての並々ならぬ熱意を感じます。


以下プレスリリースより抜粋し紹介します。

遠藤一郎は、招聘アーティストとして「さいたま国際芸術祭2020」に参加予定でしたが、 同芸術祭はコロナウィルス禍の影響を受け、無期限の延期となりました。しかし、遠藤は2 月上旬から氷川神社参道の約2kmにて実施していた「ほふく前進御百度参り」を中止せず今も継続しており、現在80回目に迫ります(5月17日最終100回予定)。その様子を外出自粛中 でも鑑賞できるようYouTubeにて毎日更新しています。また、旧大宮図書館の入口扉にドロ ーイング「にげねぇ」を無料無観客展示にて発表し、独自に芸術祭を開幕させました。 芸術や文化イベントの在り方へ一石を投じることのみならず、混迷した世相や社会に向け、 また違った側面のアプローチを示しています。
■活動の背景(本人コメント)
生命維持のために活動を自粛し家にこもり、生活維持のために経済や保証のことを考えることも大事 だと思いますが、矛盾した双方に重点を置き過ぎてしまうと思考も行動も何かと窮屈に縛られ、信念 がいつの間にか衰えてしまいがちです。進んでいく、生きていく力が衰えていきます。3.11東日本大 震災のとき人命救助と平行して人々がまず行ったのは、道端のお地蔵様を立て起こし、町の神社を再建することでした。それは生きていく力を確認し心の場所をつくることでした。 とにかくできるかぎり精一杯の何かが必要です。意味が無かったとしても。
いつのときも未曾有の事態に本当に頼るべき土台となるものは、まずは「生きる熱」です。それを最大限に表現できるはずの芸術に何もできないわけがありませ ん。芸術祭は無くなりましたが独自に芸術祭を開催継続します。ほふく前進をし、絵を展示します。どうなるかわかりませんし保証などありませんが進むつもりです。無理はしないと思いたいですが、とにかく二度とない今にできるかぎりの精一杯を放てるならば、これにまさる意味もありません。社会にその情熱を保持するために日々地面を這い進んで行きます。なんとか100回まで貫徹したいと思います。

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100回をともに共有したいと集まった方と、アーティストトークの後、
距離をあけて集合写真


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一郎さんの展示作品「にげねぇ」を野外に出して記念写真

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「にげねぇ」
東日本大震災の生活支援情報欄の新聞紙にクレヨンで書かれたペインティング作品(4/11-5/17に旧大宮図書館正面ウインドウに展示していた。)  



一郎さんが講師を務める美学校の「未来美術専門学校」のテキストを最後に紹介します。

どうしようもなく役立たずだけど、究極に役に立つ、最強のど素人、夢バカ。やりたいことをやるのは苦しいけど、負けない。何がアートなのかなんてことを授業でやるつもりはなくて、やりたいことをどういうふうに実現するか、ひも解いていきたい。本当にお前がやりたいことは何なのか。自分の思い描く、こと、もの、夢。世の中や時代にあわせて夢を変えていく。そうではなくて、お前の夢を好きなまんまにやれ、わがままに。それは自分にとっても世の中にとってもたった一つのわがままな夢だから、今はまだ社会にその実現方法はない。だからその方法を具体的に考える。課外授業が多くなるだろう。ヒントは外に転がっている。ようは何が好きかということ。常識をいきなりぶち壊すことはできないけど、常識にはまっている自分を壊すことはできる。そこから始めたい。何をやっていいいかわからないという理由の多くは、生き方の幅がきまっているから。仕組みの中で生きてる。子供の頃から世の中の仕組みをしきりに教えてもらうけど、それは仕組みだからすでに仕組まれていることで。けど実は全部が、全員が、はじめから仕組まれていることは何一つない。プログラムなどされてない。大きな課題としては、仕組まれた価値観からの脱却、その先に広がる自由への踏み出し。それはかなり難しい。でも好きなことに命かけていいじゃん。命なんだし、人生なんだし、一つなんだし。あたりまえの自由、それを開放する。

このテキストを改めて読み返すことで、今回のさいたまの現場での一郎さんの活動を振り返ると、そのままを本当に実行し実現したのだと強く実感します。


遠藤一郎:プロフィール(美学校ホームページより抜粋)

1979年、静岡県生まれ。未来美術家、island JAPANプロデューサー、多摩川カジュアルデザイナー、DJ。
車体に大きく「未来へ」と描かれた、各地で出会った人々がそのまわりに夢を書いていく『未来へ号』で車上生活をしながら全国各地を走り、「GO FOR FUTURE」のメッセージを発信し続ける。
アートイベントで展示やパフォーマンスを行うほか、現在、凧あげプロジェクト「未来龍大空凧」を各地で開催。2012年から、日本列島にメッセージを描くプロジェクト「RAINBOW JAPAN」を立ち上げ、日本列島を縦断、日本全体を勇気づけるメッセージを描く。
主な参加イベントに「別府現代芸術フェスティバル2009 混浴温泉世界」わくわく混浴アパートメント、「TWIST and SHOUT Contemporary Art from Japan」BACC(バンコク)、「愛と平和と未来のために」(水戸芸術館)「六本木アートナイト2012」(六本木ヒルズアリーナ)他。2008年から『美術手帖』(美術出版社)連載。



関連動画

遠藤一郎 「ほふく前進 御百度参り 65回目」
後のインタビュー
https://youtu.be/_uEyMcdYwwg

遠藤一郎 「ほふく前進 御百度参り 66回目」
https://www.youtube.com/watch?v=yd5UD...

遠藤一郎 「ほふく前進 御百度参り 95回目」
https://youtu.be/AKcNJ5B0q2Y

遠藤一郎 「ほふく前進 御百度参り 96回目」
https://youtu.be/6oG_kMWZaWI

遠藤一郎 「ほふく前進 御百度参り 99回目」
https://youtu.be/IwZKKmRHIPI

遠藤一郎 「ほふく前進 御百度参り 100回目」

遠藤一郎 「ほふく前進 御百度参り 100回目 アフタートーク」



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『Sightama Art Center Project』(以下SACP)は「さいたま国際芸術祭2020」のプロジェクトの1つ。

「生活都市さいたま」で、市民や来場者自身のライフスタイルに合わせた「アートへ参加する習慣」をつくりだすプロジェクトです。今回の芸術祭を機に、作家と市民が協働し継続的なアートの場づくりを試みる「浅見俊哉・青木裕志・山本未知・懸谷直弓・小林未季」の5人のメンバーが集いプロジェクトを展開しています。

5人がそれぞれ分野の異なる創造力を持ち寄り、「日常賛花―さいたまでアートに参加し・伝え・感じ合う」を合言葉に、2019年8 月から芸術祭会期中まで、約70のアートプログラムを継続して開催しています。芸術祭後も続く、しなやかで逞しいアートの場を皆さんとつくっていきたいと考えています。
                                 
(しかし、さいたま国際芸術祭2020は、現在4/12 新型コロナウイルス感染拡大防止のため開幕延期中になっています。)
                                 
芸術祭が開催されていたら、4/10の19:00-21:00に活動のレクチャー、作品展示を4/11から5/17まで、旧大宮図書館で開催の予定でした。過去のSACPのプログラムでは、2019年12/1に「ついにくるのか!?あのカッパ茶屋!!(さいたま初上陸)」を実施。


●「さいたま国際芸術祭2020」公式ホームページ
https://art-sightama.jp/jp/

●「さいたま国際芸術祭2020」遠藤一郎紹介
https://art-sightama.jp/jp/artist/uFoQfN2b/

●「Sightama Art Center Project」の詳細
https://art-sightama.jp/jp/artist/uFoQfZSn/



⚫︎写真作家・造形ワークショップデザイナー ・キュレーター・「時間」と「記憶」をテーマに制作。2012年〜ヒロシマの被爆樹木をフォトグラムで作品制作 ●中之条ビエンナーレ2019参加アーティスト ●さいたま国際芸術祭2020 市民プロジェクトコーディネーター