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ウズベキスタンでリアルRPGをクリアして塔に登って最高の景色を見た話

地球の歩き方に気になる記述を見つける

大学のサークル同期と修了旅行で行こうとしていたものの、コロナで断念せざるを得なくなった中央アジア(カザフスタンとウズベキスタン)にリベンジしに行くことにした。(この記事は2024年5月当時の情報です)

あんまり事前情報がなさすぎると楽しむこともできない。そこで地球の歩き方Plat ウズベキスタンを買って、行こうと思っている観光地を見ていると、サマルカンドのレギスタン広場について、何やら興味深い記述が。

SPOT 1 北側のミナレットに上ろう
ウルグベク・メドレセの北側(ティラカリ・メドレセ側)の塔(ミナレット)には有料で上ることができる。(中略)
30,000so'mをミナレット下のショップ係員に渡して入口のカギを開けてもらう。2階の教室跡なども見学できる。

宮田崇編(2023)『地球の歩き方 Plat ウズベキスタン』P12

怪しい。非常に怪しい。ウズベキスタンはおろか中央アジアでも随一の観光地と言われるサマルカンドの最も中心的な観光スポット・レギスタン広場。日本で言えば京都の金閣寺や南禅寺や産寧坂のような観光地の中の観光地。

そんなところに「30,000so'm(≒360円)をミナレット下のショップ係員に渡して入口のカギを開けてもらう」などという場所がありうるだろうか。どう見ても非公式の入り方にしか思えない。半ば賄賂のような塔の登り方。面白いじゃないか。(なお、ウズベキスタンスムと日本円のレートは行った当時の2024年5月頃の0.012円で計算。以下同じ。)

ならば行くしかない

れっきとした観光地なのに、そんなところがあるなら行ってみたい。

しかし、賄賂のような入り方に我々4人は少々の不安を覚える。怪我する可能性は?その時助けてくれるのか?本当は禁止されているのでは?怪我したときに保険はおりないのでは?

そんな中、1人が言う。「あの塔傾いてるね」

ウルグベク・メドレセ

そう、我々が登ろうとしているウルグベク・メドレセ(レギスタン広場の入口側から向かって左)の向かって右の塔は写真でもわかる通り傾いている。それも色んな方向から見ても傾いている。

いよいよ怪しい。そして登って展望しているらしき人も全く見当たらない。本当に入ることができ、登ってよく、崩れないところなのか?少しの逡巡ののち、我々は決めた。

まあいいから登ってみるか。

ショップ店員に声をかけよう

地球の歩き方の通り、まずはショップ店員に声をかけなければならない。しかし記載された場所がどこだか全くわからない。ウルグベク・メドレセの中にショップがあるようなのだが、入口やショップの位置がわからない。仕方がないので、とにもかくにもと思い、隣のティラカリ・メドレセのショップは見つけたので、店員に声をかける。

自分「あの塔に登りたいのだけど」
店員「Go to politsiya

警官???

・・・

警官に声をかけるの???

しかし冷静になると、警官に声をかけて入るのならばなんとなく安心な気がする。ああ、じゃあいいか。警官を探そう。しかし、街で人に声をかけると「この人に聞いてみて」と言われるなど、RPGのようだ

警官に声をかける

さて、警官を探さねばならない。ショップの近くにはいなかったので、一旦建物を出て周囲を見渡す。するとティラカリ・メドレセの向かって右側(下の地図参照)に警官が立っているではないか。

自分「あの塔に登りたいのだけど」
警官「うーん・・・ この近くの低い方なら50,000so'm(≒600円)、高い塔は80,000so'm(≒960円)だよ

何、最初の間は?そしておっと、値上がりか?地球の歩き方では30,000so'mだったが2倍以上になっている。なんとなくふっかけているような気もする。が、警官が言うなら正しいのだろうと我々は無邪気に信じることにした。倍以上と言っても960円だしね。しかし、翌日に我々は真実を知ることになる。

自分「OK!80,000so'mでいいから高い塔に登らせて」
警官「19時にならないと開けられないのだけど、ちょっと待って」

Google Mapsより
レギスタン広場と中の建物の位置関係

そう言うと警官はどこかに電話をし始め、話し始めた。ここまでの会話も実は両者ともに英語がガバガバ(ウズベキスタンではウズベク語かロシア語を喋るべき)なので、なんとなくの意思疎通にとどまっており、ちゃんと伝わっているのか、相手が言いたいことを理解できているのかわからない。無理かもしれないと思ったその時

警官「よし、ついてきてくれ」
我々「おお!!行きます!」

いよいよ塔へ!・・・?

警官がウルグベク・メドレセの方角に向かって歩きはじめる。これは行けるっぽい。と思っていると、ウルグベク・メドレセの手前で警官から明らかに私服で警官ではない別の男性に引き継がれる。え?登場人物3人目?流石にRPGすぎるて。

??「塔に上りたいというのは君たちかい?ついてきな!」

怪しい。ノリも軽い。非公式臭がすごい・・・。頼みの綱の警官は持ち場に帰って行ってしまった。

しかし、ここでとどまっていてもしょうがない。怪しいノリの軽い男性についていき、建物に入る小さな扉から入り込み、ショップの横の扉に向かう。

ウルグベク・メドレセの1階。左の扉から2階に上がっていく。
この奥のショップ店員に声をかければ、一発で入ることができる可能性もある。

これまた小さな扉から2階に向かう。

ちょっとかがまないと入れないくらいの扉だ。

「君たちのために訳してあげよう!『立ち入り禁止』だ!ハハハ」

2階に上がってからまた扉。怪しい男性がここの鍵を開けてくれる。なるほど、塔に向かう鍵の番人のような人物だったのか。

鍵を開けるや否や
鍵の番人「早く!早く!」

どうやらあんまり他の人に見られないように早く入れということらしい・・・。いや、鍵の番人というのはわかってもまだ怪しいな。

ドアには何やら貼り紙が。Google 翻訳を使おうとすると。
鍵の番人「君たちのために訳してあげよう!『立ち入り禁止』だ!ハハハ
我々「アハハハ笑 え??」

ウズベク語とロシア語で「立ち入り禁止!」

我々の不安はよそに鍵の番人はずんずんと進んでいく。扉を閉めるとさらに階段を上がり、恐らく3階へ。

2階から3階への階段

3階につくと
鍵の番人「上に荷物を持って行くのは危険だからここに荷物を置いていきな。」
素直にしたがって、貴重品以外はそこに置いていく。

荷物を置いたのを見ると
鍵の番人「塔はそこの階段を登って行けばいいよ」

え、ついてこないん?勝手に行くタイプ?またしても不安がよぎる。荷物本当にここで大丈夫?勝手にいけるの?

登るぞ!

どんなルートなのか全くわからないが、ここから先は自分たちだけで登っていく。しかし、いかんせん塔が細すぎる。階段の幅も狭く、写真の通りロープが必要なのもわかるほど。

踏面の狭い、細い階段を登る

下を見るとこんな感じ↓。人がすれ違うのは本当にぎりぎりの幅だ。

心もとないロープ・・・。

こんなところを1~2分登っていくと上から光が差し込んでくる。

動画のキャプチャなので少し画質が悪いが・・・。

ついに、上から見渡せるのか?期待に胸を膨らませて顔をあげると。

RPGの先の最高の眺め!

上から差し込んだ光の、1人が頭を出すのがやっとな、小さな隙間から頭を出すとなんと素晴らしい眺めが広がっている!レギスタン広場とともにサマルカンドの町を眼下に見下ろしながら、対面のシェルドル・メドレセの正面をばっちりと見ることができ、さらには左にあるティラカリ・メドレセの中庭などを覗くことができる。

シェルドル・メドレセ(手前はレギスタン広場の広場部分)
レギスタン広場とその先に広がるサマルカンドの町
ティラカリ・メドレセの中庭

上の写真で少しわかるかもしれないが、塔に登るといっても塔の展望台のフロアまで登るという意味ではなく、文字通り塔の上まで登る

何を言っているかよくわかるように、広場の逆方面を見てみると、この通り屋根の上に来るのだ

屋根の上まで来てしまう。
屋根に開いた穴からはなんでも入り放題のようだが、雨の日はどうしているのだろうか?

屋根に穴をあけてしまって、そこから頭を出せるようにしているのである。上や横を邪魔するものが一切ないから当然景色が良い。

階段の高さ的に一般的な身長であれば腰よりも上に屋根が来るので落ちることはないと思うが、これを手すりなしで登れるようにしているのは流石としか言いようがない。日本よりは命が軽いかもしれない。

そしてここに来て非公式らしきルートでしか登ることができない理由がわかる。人が全然いられないのだ。外に頭を出すことができる位置に立つことができるのは1人だけ。そしてすれ違うのもやっとやっととすると、公式に開けてしまって何十人も来たら大渋滞でたまったものではないし、後ろから押されたりしたら危なくてしょうがない。

事実、我々は4人だけであったが、1人1人頭を出すために狭い階段の中でなんとか立つ位置をやっとのことでかえ、20分ほど居続けてそれぞれが外を眺め、写真を撮り終わるほど。友達と一緒に行くにしても、1回5~6人が限界と思われる。

眺めたり写真を撮ったりしながら、てっぺんで長居し続けていると、下から声がかかる。流石に居座り続けたか。帰りも階段が急なので、慎重に下って行き、荷物の場所に。荷物も無事で帰ろうとすると。

鍵の番人「だーれが支払うんだい??(笑)」
危ない。支払いを忘れて帰るところだった。4人分の320,000so'mを支払い、また立ち入り禁止の扉を逆から出て塔にさようならをした。

後日談・警官への賄賂はいくらだったのか?

さて、960円ほどなのでまあいいかと思った塔への入場料。しかし地球の歩き方に書いてある30,000so'm(≒360円)からはかなりの値上がり。多少鍵の番人が受け取る金額が増えていたとしても、いくばくかは警官に入っているのではないか?

怪しんだ我々は翌日、再度塔に登るのはいくらかを別の警官に尋ねてみることに。

自分「低い方の塔に登りたいのだけど」
警官②「1人あたり200,000so'mだ

え???昨日50,000so'mって言われたところが200,000so'm???4倍?

自分「いや、それはない。昨日50,000so'mと言われた」
警官②「じゃあ1人150,000so'm」
自分「高すぎるでしょ」
警官②「じゃあ1人100,000so'm」

いやいや、どんどん下がるんかい!値段交渉ガバガバすぎでしょ笑
しかし、昨日言われたのよりも高い。帰国日が近いので現金が心もとないのもあり、辞めてもいいかと思い、手を振ると。

警官②「待って待って1人50,000so'm
自分「30,000so'mは?」
警官②「NO!泣 1人50,000so'm泣
自分「40,000so'mは?」
警官②「NO!泣 1人50,000so'm泣

喋り方の本気度からすると、これが限界らしい。鍵の番人が受け取る正規(非公式だろうが)の金額が低い方は50,000so'm、高い方は80,000so'mが現在の一応レートのよう。(地球の歩き方は2022年10月の調査と2023年2月の追跡調査に基づく情報であるから、1年あるいは1年半以上経って金額が変わったことは考えられる。)

思い返せば、初日の警官は鍵の番人に引き継ぐなり持ち場に戻って行って、支払いに立ち会っていなかったので善良な警官でマージンを取っていなかったのかもしれない。

最初に200,000so'mという4倍の金額を提示して、1,800円ほどのマージンを取ろうとしていた警官②を信用できなくなった我々は、まあもう登らなくてもいいかと思い直し、その場を後にした。

この塔の直近の入場料を知っている人がいれば情報をお寄せいただきたい。

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