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at 道東 with ドット道東 ①釧路・塘路

道東のアンオフィシャルガイドブック、ドット道東を持って旅に出た。

7月21日 東京→釧路、塘路

ピーチ航空の591便で成田から2時間、ちょっと高台にある釧路空港。東京とは全く異なる気温、空気、密度、景色。

バスで釧路駅へ向かい、すぐ近くの和商市場へ。極端に観光客を扱い慣れている魚屋の呼び込みに多少ビビりながら、言われるがままに魚を頼み、買ったご飯に乗せていく勝手丼を食す。エンガワのとろみ、サーモンやアブラガレイのジューシーさ、つぶ貝の歯ごたえ。まずは腹の中から道東に浸る。普段の我々ならばビールも日本酒も飲んでいるところだが、ぐっと我慢。まだ飲んではいけない。

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釧路駅14時16分の列車に、ギリギリで滑り込んで一路塘路へ。1両編成の列車は平日だというのに席は埋まり、入口付近に立つ。普段からこのくらい乗っていればいいが、連休でなければ数人いるだけなのではないだろうか。

市場で買った500mLのおおとも牧場の飲むヨーグルトを開ける。蓋がガバガバ。あら、飲み切らないと。

東釧路、遠矢と過ぎ、列車は左手に釧路湿原と釧路川を眺めながら、少し頑張るような音を出して徐々に標高を上げていく。釧路川が近づいたり離れたり。湿原とは言いつつも下草と低木で、草原のような感のところもあり、見飽きない。冬に来た時は一面銀世界だった。その下にはこんなに豊かな植物達が隠れていたのだ。

線路の状態はお世辞にもいいとは言えない。ガタガタと揺れる。しかし、日に数本しか走らないのに保線の人によってしっかり雑草は刈り取られているようだ。

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少し土地が開け、線路が3線に増えると塘路駅。砂利のホームばかりのここら辺の駅では珍しく、ホームがアスファルトで舗装されている。カフェ営業している、外装だけちょっとチープな改装をされた元駅舎を抜けると何もない駅前広場。店舗らしきものはあるけれど、確実に営業していない。

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塘路の宿、the geek

駅を出て右手に坂を登っていくと今日の宿、the geekに着く。元別荘というゲストハウスは、1階にバーカウンターを備え、一段下がったリビングが落ち着きを覚えさせる。

スタッフの方に案内された2階の部屋からは釧路湿原の緑が何にも邪魔されずに広がる。そう、こういうのが見たいの!

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the geekの部屋から見える景色

1階に下りると、出かけていたというオーナーが戻って来ていた。出してくれた冷たい水が、意外と暑い道東の夏の空気を吸い込んだ喉を冷やす。

「この後何か予定はあるんですか?」「釧路川のカヌーを予約してて」「えーうちから予約してくれれば安くなったのに うちに泊まってるって会話にねじ込んで笑」「匂わせます笑」

宿を出て近くのカヌーツアーへとことこと歩いていく。塘路は小さな町だ。町内だけなら全部徒歩でも1時間もかかるまい。5分とかからず着いた先では、優しげなおっちゃんが待ち受けていた。the geekに泊まっていることを匂わせる以前に、標茶町の遊ん得キャンペーンを利用して1人4000円も引いてもらうことができた。なんと。それも含めてちょこっと手続きを済ませると、車で塘路湖畔の船乗り場へ。ビールも日本酒も我慢してたのはこのため。

「カヌーは乗ったことある?」「カヤックなら」「カヤックもカヌーも変わらないから、じゃあ大丈夫だね」「お?」(結局ガイドさんと同乗だから、大して漕げなくても大丈夫そうだったけれどね。)

本当に簡単に漕ぎ方を教わると、もう湖上の人となった。湖から釧路川の支流の川に入っても非常に穏やかなままで、のんびりと川の両側の緑、青空、遠くに見える山々を眺められる。連休前のおかげで我々2人だけで独占。明日からは忙しくなるんだとか。

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ーここ最近全然雨が降らないからね〜。水量は少ないし、気温も下がらないし。

確かに両岸を眺めても、いつもはそこまでは水があるだろうと思わせる線が水面よりも4〜50cm上に見える。湿原にしては少し乾いたような土と、緑ではない草の線。

右に左に時折方向を変えながら、下っていく。後ろからあっ、と言う声が聞こえたかと思うと、右岸にミンク。外来種だけれども、可愛い。可愛いゆえに飼って、途中で放してしまったのだろうか。

さらに、エゾシカ、タンチョウヅルが姿を見せてくれた。船ならばすぐには近づけないと知っているのか、エゾシカは子供連れなのに、途中から座って草を食み始める。

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「タンチョウヅルが水に潜ってるのは珍しいな。あんまり見たことないよ。しかし、あんまり動物見れないね。もっと見せてあげたいのに。」

道東にしては珍しく高い気温に、昼間の活動を抑えているのかもしれない。ミンク1匹、エゾシカ3頭、タンチョウヅル2羽。野生動物の動き出す夕方はいつもはもっと見れるらしい。

それでも普段は見られない動物達を目の前で見れて、とても満足。朝ちょっと早起きすれば、夕方には道東でカヌーに乗って野生動物を見れるなんて!道東って近い??

細岡のカヌーポートでカヌーツアーはおしまい。乗ってきたカヌーを後ろに載せた車で塘路まで送ってもらった。

宿に戻ると、オーナーさんがタンクトップ姿。今からサウナをつけるんだと。こんな暑い中?!

「夕飯決めました?」「いやーまだ悩んでて」「釧路にいいお店いっぱい知ってるから紹介するよ。炉端焼きとかどうです?発祥のお店予約しましょうか?」「いいんですか??」「オススメのお店のリストもメールでお送りしますね!」

宿と交通手段以外、何も決めてこない旅は、地元の人のオススメに頼れる。そこの人にとっては常識、でも他の人は中々知らない。そんな店・場所・楽しみは格別のものなのだ。

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塘路から行きの鉄道を戻り、夕方の釧路駅に到着。4時間をかけて札幌に向かう最終の特急列車が停まっている。広く明るすぎないプラットフォームは、夏であるのに寒々しい寂寥感がある。

街へ繰り出そう。

予約してもらった炉端焼きの発祥の店、その名も「炉ばた」、外見から既に説得力がある。

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暖簾をくぐると、焼き魚の香ばしいかおりに包み込まれる。真ん中の囲炉裏では、おばあさんが魚や野菜を焼き、それを囲むようにテーブルが配され、客は焼いている姿を眺めながら食べられる。

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おばあさんは食材をじっと眺めながら、見ているだけでも明らかに長年の勘としかいいようのない焼き加減で、皿に盛っていく。

その焼き加減の素晴らしいこと。アスパラガスは、中まで火が通っているのにみずみずしさもジューシーさも失うことなく、口の中で甘さすらある味が開く。ほっけはふわふわと柔らかく、そして濃くない塩加減のお陰でそのものの旨味がしっかりと引き出されている。

落ち着いた照明のおかげか、お店の雰囲気か、大きな声をあげる人はおらず、食事に集中し、そして食べていない時は囲炉裏とおばあさんの魚を焼く姿に魅せられる。

幾種類もの焼き魚に後ろ髪をひかれながら、お腹いっぱいになって店を後にする。2軒目はどこにしようか。宿の人がメールしてくれた店を検索してみると、気になったお店が残念ながら今日は休業。あとで聞いた話ではイベントの準備であったらしい。

歩く中で気になった、イタリア料理店へ。出てきたつまみはなんと薄切りのパンに大量のバターとアンチョビを載せるという凶悪なもの。「バターは塗るのではなく、載せる感じで食べてください。」バターに載せるという動詞は使ってはいけないという法律を制定するべきだ。

凶悪で美味しいつまみとワインに満足して、またしても迫り来る列車の時間に、早足になりながら駅へ戻る。

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22時を少しすぎた釧路駅に灯りは少なく、乗客はもっと少ない。夜汽車に乗り込む時の、妙な高揚感、乗り込む時の安心感、その後への少しの不安がないまぜになったのと同じ心持ちになる。

駅は人を迎え入れる優しさを持つのだが、一方で最終列車が行ってしまえば、その優しさは一転し、無慈悲な無視を決め込む(しかない)。この時間、すでにそれらは混ざり合い、むしろ無慈悲な無視に支配されようとしていた。

列車は何の灯りもない暗闇の中を進み、時間ちょうどの29分後、塘路駅に辿り着いた。

7月22日 釧路→弟子屈

朝、窓から入り込む湿原の明るさで目が覚めた。梅雨からの酷暑の東京では久しく吸い込んでいないさわやかな空気。

炊き込みご飯と、隣の家に住むというオーナーのお母さんの作ったというカレースープ。さわやかな空気にあう、柔らかな味。

宿からの良い景色、さわやかな空気、美味しいごはん、優しく気さくなオーナー、名残惜しいながら駅へ。9時半手前の列車で摩周駅へ向かう。緑豊かな中を列車はとことこと走っていく。

摩周から先は、at 道東 with ドット道東 ②摩周・中標津・知床峠 にて!

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