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『悪は存在しない』かもしれないが……(ネタバレ:ほぼなし)

映画を(サブスクなどで)自宅で観る派と劇場で観る派がありますね。前者は往復時間が節約できるので『タイパ』が良く、おそらく『コスパ』面でも優れている。
『今年やりたい10のこと』の8番目に『月1で劇場映画』と決めたのは ──

── おそらく、(単にヒマなジジイであるだけでなく)かつて経験した『映画館での共鳴・共感現象』を期待している部分もあるのでしょう。

さて5月は、ヴェネチアで銀獅子賞を受賞した『悪は存在しない』を見に、今池のキネマ・ノイに行きました。

映画やドラマにはよく『悪い(evil)ヒト』が配役として登場しますが、この映画には出てきません。

ただ、プロジェクトを実施する会社のメンバーと計画の設計を担当する『コンサルタント』とがリモート会議する場面があり、このコンサルと社長がけっこう典型的でした。

経営コンサルの仕事というのは、とにかく『解決策(Solution)』を提案することなので、このコンサルも、
① 即座に問題点を整理し、
➁ ロジックのみを展開し、
➂ 具体的方策を提案する。
その単純さが『お見事!』ですらある。
そして、誰が自分に仕事を委託しているのか、きわめてクリアに意識している。
ここで言えば、コンサルは依頼主の社長しか見ていない。
会議に出席している担当者の意見は気にかけていないし、プロジェクトの舞台となる現地住民の感情も『純粋ロジック』のもとでしか考慮しない。

会社員時代に経営コンサルと仕事をした時の記憶も蘇った。

さて、映画が半分ほど過ぎた頃、喉がいがらっぽくなってきた。上映中に咳ばらいをするわけにはいかないので、こんな時のために『のど飴』をいくつかポケットに潜ませてある。
ひとつ取り出し、袋を切ろうとした ── やや手こずって小さな音を立てたかもしれない、その時である。

腕に ── ひじの辺りに衝撃を受けた。

何が起きたのか解らず、そのまま袋を破り、飴を口に入れた。その間、もう一度小突かれた ── 誰に? ── ひとつ空席を空けた隣に座る若い男に、である。

飴を舐めながらようやく、
(このヒトはどうやら、オレが飴の袋を破るために音を立てたことを怒っているらしい)
と想像できた。

大きな映画館ではポップコーンや飲み物を販売しており、客席に持ち込める劇場も少なくない。けれどそこはマニアックな客が多いミニシアターなので、神経質な客もいるのだろう。

それにしても、のど飴の封を切る音も許さない『不寛容』に驚き、
(ここまでだと、このヒト、社会で生き辛いだろうな……)
とさえ思ってしまったが……

いや、これも(共鳴・共感ではないものの)、

劇場ならではの『相互作用』なのだ!

と思いながら、映画の残りを楽しみました。

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