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お茶が《タダ》って日本はいいな……でも、その背景を考える

ポストコロナで増えてきた外国人観光客が、日本の料理屋でその美味しさに舌鼓を打ち、
「Amazing!」
などと叫ぶシーンをニュースやドキュメンタリー風の番組でよく見ます。
多くは各国のガイドブックやSNSなどで知られる有名店を訪れているので値段もそれなりなのでしょう。
でも、庶民的な価格の飲食店であっても、彼らが日本で目をみはるのは、料理の味はもちろん、それ以外の部分もあるようです。

ランチによく行くお店がありますが、まずグラスに水が運ばれ、注文料理が運ばれ……

そして、食べ終わる少し前ぐらいに暖かい煎茶が運ばれ、
「どうぞ、ごゆっくり」

この、お茶が運ばれるたびに同居人は、
「いいねえ、日本は ── お茶が《タダ》で」
と言う。

いや、どの店でも、お茶が運ばれると、いや、セルフサービスでお茶を取りに行く店でさえ、
「いいねえ、日本は ── お茶が《タダ》で」

時には、水が運ばれるのでさえ、
「スイスなら、水ですら、お金を払わなきゃ出てこないよ」
と『日本バンザイ』である。

いや、料理をつつきながら、
「アメリカならチップをいくら払わなきゃならないか、なんて計算しながら食べるから、美味しくない!」
とまで言う。

うーむ、確かに……水道水はともかく、お茶にお金を払わなけりゃならない国は多い。いや、ほとんどの国でそうだ。

冒頭のインバウンド観光客が感激するのも、飲食店の料理はもちろんだが、店員の気配り ── サービスもあるようです。
お茶を出してくれるだけではなく、お箸の他にフォークは要るか尋ねたり、お好み焼きの焼き方食べ方を丁寧に教えてくれたり……。いや、何よりも笑顔かもしれない。

おそらく、例えばアメリカ人客には、チップを期待しないはずの店員がこんなに心配りをするのはもちろん、笑顔で接してくれるだけでも驚きでしょうね。
あの国のマクドナルドの店員はいつも不機嫌そうだった(日本のマックは違いますよ)。改革が始まって間もない頃の中国大都市の店員もそうでしたが……。

同居人の毎度『日本バンザイ』に同意はするし、それは日本人の『おもてなし精神』による、という例のイベント招致以来のTV常套句に反対はしない。
(あの招致自体には大反対でしたが……)

── でも、別の側面からも考える必要があるんじゃないか、と思う。

それは、
《サービスはタダ》
という潜在意識です。

でも、本当はサービスってタダじゃない。
人が行うものだから、当然人件費はかかるし、サービスの悪いお店は廃れていく。
いいサービスにはきちんと報いる必要があるでしょう。

それほど遠くない昔、多くの企業で申告しない残業が普通に行われていた。
あれも、
《サービスはタダ》
だったからではないか?

いつだったか、テレビ・ドキュメンタリーで、配送会社の経営者が、通販業者の『送料無料』表現に真剣に怒っていました。
「送料がタダであるはずがない。誤解を与える書き方はやめて欲しい」
でも相変わらず続いているのは、私たち消費者の側に、
《サービスはタダ》
という意識があり、正当な送料を明示する通販には注文しない傾向があるからでしょう。

コロナ禍とそれに続く脱コロナによって、接客業での人材不足と配送業での超繁忙が顕著となり、こうした業界での待遇改善が進んでいると聞きます。
それは、
《サービスはタダ》
的考えを消費者の潜在意識から払拭するためにも、
いいことなんだろう
と思うのです。

……でも、笑顔は失くして欲しくない。

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日本のラーメン店も素晴らしいよね。
でも、心配も……

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