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亡父の好物・平目の縁側で一杯

信州松本の酒・大信州の辛口がまだ残っていた時、新鮮なヒラメ刺身を見つけたので、これでろう、と買って帰りました。
『大信州』は同居人が行きつけの日本酒専門店に時々出るので比較的よく呑みます。いつも同じようなグレードを買ってきますが、この酒蔵・大信州酒造では季節限定でスパークリング(発砲生酒)も出しており、やはり日本酒は白ワインと競合する道に進んでいますね。

ヒラメの刺身は通常、縁側が付いていてもわずかですが、今回は重量でほぼ半分ほどという、縁側好きには感謝したくなる『盛り』でした。

父は数年前に亡くなりましたが、縁側が大好物で、寿司屋では必ず注文していました。
両親のことは普段ほとんど意識から抜けていますが、父の好物・平目の縁側を目にし口にする時、(こちらは料理自体も含め)母の好きだった茶碗蒸しを目にし口にする時、その顔を想い出すのは不思議なことです。
好物を口にする時、人は一番幸福な顔をし、その顔を想い出したい残された者がいるのかもしれない。

ヒラメは身が締まり、辛口大信州にもよく合いましたが、やはり縁側が ── 適度に脂がのり、香りも感じるほどに ── いい味でした。

盃の底から、「猫」も縁側を狙っているのか……。

昨年受けた定期健康診断の結果を年が明けてから近所のクリニックで聴きました。
肝臓はじめどこも悪くないとは言われましたが、
「とはいえ、飲み過ぎなんで、今年は週に1回はノンアルデーと決めて、一応守っています」
と胸を張ったところ、若い女医さんはカレンダーに目をやり、
「いち、にい、さん ── まだ3回じゃないですか」
とジジイに冷たい。
「……ま、そうですけどね」

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