出版社を辞めた僕はキャバクラで黒服をすることになった。 #5
(前回)
「事件」が起こったのは9月初旬のことだった。
当時、店では新しいキャストが勤務を始めていた。
ナノハという源氏名で、地雷系ビジュアルの可愛い女の子だ。昨年度までは浅草方面の店で働いていたらしい。引っ越しに伴い、知人の紹介もあってこの店に入店することになった。
それだけならよくある話だが、このナノハはちょっと特別だった。何しろ恐ろしいほどの太客を連れてきたのだ。
その太客というのはミズハラさんという30代の男性弁護士で、浅草の店にいた頃からナノハに首ったけだった