谷 俊彦

小説家;執筆活動再開しました。 「木村家の人びと(小説新潮新人賞⇒映画化)」「東京都大…

谷 俊彦

小説家;執筆活動再開しました。 「木村家の人びと(小説新潮新人賞⇒映画化)」「東京都大学の人びと(映画化)」など。 有料記事も無料領域がかなり長めですので気軽に覗いてやってください。 まずは江戸期にいた、とてつもなく弱い力士の物語から……。

マガジン

  • 呑み書きスル晩

    旅の愉しみのひとつは地酒やクラフトビールを呑むことです。土産のほとんどは、実は自分向け。旅の景色を振り返りながら酒を呑む、そろそろとやって来る晩年を思う。

  • ぼちぼちエッセイ

    ぼちぼちと、日々の暮らしを描いたり、過去の引き出しをさぐったり。

  • 新・再勉生活

    日本で学校を卒業してから8年後、アメリカの田舎町で再び勉強する機会を得ました。妻と幼い娘二人を連れての異文化珍道中を描きます。 (「採便」じゃないよ!)

  • ヒミツの図書館/ノンフィクション棚

    エッセイ、旅日記、調査報告など、心に残ったノンフィクション記事をまとめています。

  • 映画の時間

    映画を観て導火線に火が付いた! 時に大きく話題が逸れてしまうことも……。

最近の記事

  • 固定された記事

泳ぐ女(短編小説;5,500文字)

 湯船に身を沈め、目を閉じた。 (こうやって、誰にも気兼ねなくゆっくりできるのって、やっぱりいいな)  ── 妻の言う通りだった。  入籍後も同棲時代と同じアパートでいいじゃないか、というぼくに、 「銭湯通いはもう絶対に嫌! 風呂付のアパートに引っ越すんじゃなきゃ」  その代償として、かなり郊外に引っ越さなければならなかったが。  息を止め、頭をゆっくり湯に沈める。  鼻まで沈めたところで目を開いた。  ── おや?  《水平線》上で、何かが動いている。  白い ──

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    • 応援消費Ⅳ;富山新湊港の『ホタルイカ刺身』に黒部の『宇奈月ビール』モーツァルト仕込み

      だいぶ間が空きましたが、今回は富山どうし……です。 先月(3月)終わりだったか、富山の新湊でホタルイカが豊漁、というニュースを見ました。それ以来、確かにどの店でもボイルホタルイカがよく売られています。酢味噌で食べると美味いですが、硬い目玉を除くのが面倒ですね。 富山を地盤とする魚屋系スーパーで、新湊港で揚がったホタルイカの刺身が出ていました。生ホタルイカは時折寿司屋でつまみますが、これは、さらに新鮮そうだったので買ってみました。 では、これと合わせる『酒』は……と、今回

      • 常套句『大暴れ』に「ゴジラじゃないんだから!」

        「また、これだよ! ……ゴジラじゃないんだから!」 野球記事を読んでいた同居人が叫んだ。 「『大暴れ』って何? バット振り回して球場の照明でも叩き壊しまくったのならともかくさあ……」 そういえば、大谷サンも頻繁に暴れ回るようですね。困ったものです……: 「『大暴れ』じゃなくて、『大活躍』でしょう!」 「ま、そうなんだけど……インパクト強めに書きたいのだろうね……」 「ホントの意味で球場で『大暴れ』したらどうすんのよ! 何て書くのよ!」 なるほど…… 大谷、危険球に激

        • 将来、人類は二極化する?

          米国留学から戻って間もなく、社内で新たな留学候補生に選定された別部署の若手が、話を聞かせて欲しい、と言ってきた。 新婚間もなかったこの人は、帯同する奥さんも向こうの生活について聞きたいことがある、というので、自宅に招いて夕食を共にした。 彼は身長180 cm以上で、当時私が住んでいた古い家で、鴨居に頭をぶつけないよう慎重に歩いた。 奥さんも170 cmを超える高身長だった。 この夫婦が帰った後、食事中に抱いた懸念を妻に話した。 「奥さんも背が高かったね……やはり、背の高い

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        泳ぐ女(短編小説;5,500文字)

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        • 創作の時間
          29本

        記事

          アートとタイパについて考えさせられたモノクロのハンガリー映画『ヴェルクマイスター・ハーモニー』(ネタバレ:ほぼなし)

          今年の目標『月イチの劇場映画』達成のため(というわけでもないけれど)、復活したミニシアター・今池のナゴヤシネマ・ノイに行きました。 復活した直後でその日の朝にTVニュースでも話題になっていた先月はほぼ満席でしたが…… その熱が冷めたのか、あるいは掛けられる映画の個性によるものか、この日この時間は観客数10人ほどで……再びのピンチがやってくるのではないかと心配だ。 この日観たのはハンガリーのタル・ベーラ監督により制作された『ヴェルクマイスター・ハーモニー』(2000年公開)

          アートとタイパについて考えさせられたモノクロのハンガリー映画『ヴェルクマイスター・ハーモニー』(ネタバレ:ほぼなし)

          再勉生活! 「I don't need your help」Baby sitter を見つけられなかった助教授は教室で学生がまだ写し終えていない板書を消した小学生の娘に言った

          渡米して数か月が経った頃、私と妻は3歳と5歳の子供をアパートに置いて出かけたスーパーマーケットで、米国人の知り合いに会った。 「子供たちはどうしたの?」 「2人で家にいるよ」 「2人だけで?」 「ええ」 すると、知人は怖い顔で, 「It's against law(法律違反だ)」 と宣告した。 イリノイ州では12歳以下の子供だけを家に残すのは犯罪なのだそうだ。 「早く帰った方がいい。もし隣人が警察に通報したら、逮捕されるよ」 硬い表情に促され、我々は急ぎ帰宅した。 このよう

          再勉生活! 「I don't need your help」Baby sitter を見つけられなかった助教授は教室で学生がまだ写し終えていない板書を消した小学生の娘に言った

          再勉生活! 『詳細なカンニングペーパーを念入りに作っているうちに、試験中それが必要でなくなるほど、その内容が既に頭に入ってしまっている』というのは本当か?

          のび太が試験の前日に一生懸命小さな字でカンニングペーパーを作っている。 それを見たドラえもん: 「のび太くーん、そんな苦労するよりも、ちゃんと勉強した方がよっぽど楽だと思うんだけど……」 ドラえもんは、ある意味正しく、ある意味では間違っている。 おそらくのび太は、明日の試験ではカンニングペーパーを見る必要がないほど、試験範囲の公式を暗記してしまっている。 でも、『カンニングペーパーを作る』という極めて重要なプロジェクトがあったからこそ、のび太は全身全霊をそれに打ち込んだのです

          再勉生活! 『詳細なカンニングペーパーを念入りに作っているうちに、試験中それが必要でなくなるほど、その内容が既に頭に入ってしまっている』というのは本当か?

          Beatlesが流れる居心地の良い喫茶店

          個人経営の食料品店がどんどん減っています: レストランや喫茶店も、気がつけばチェーン店ばかりになっていますね。 いずれも、仕入れなどのコストと効率など《量》の効果が大きいのでしょう。 あとは、チェーン店なら期待どうりの同じサービスが受けられるので『失敗がない』── だから、リスク回避の時代に好まれるからなのかもしれない。 名古屋は、かつては喫茶店の多い街でした。繁華街はもちろんのこと、住宅街にも、それこそ、ひとつのブロックに1軒の喫茶店があるほどでした。 1970年代まで

          Beatlesが流れる居心地の良い喫茶店

          夫業のコツ

          1.愚痴は最後まで辛抱強く聴く 「それでね、……だからね、……そうしたらね、……なのよ、ひどいと思わない?」 「……」 「ちょっと、聴いてた? ひどい話でしょ?」 「……(表情の変化を見てとり、耳スイッチ再ON)ああ、そうだね、ひどいよね」 「ちゃんと聴いてた?」 「聴いてたよ」 「ずっと聴いてた?」 「も、もちろんです!」 「じゃ、何話してた?」 「えーと、……ひどい話だった」 (話の途中でうっかり欠伸をしたり、トイレに行ったり、スマホに視線を移したりしてはいけません)

          夫業のコツ

          成績を上げるために

          『今年やりたい10のこと』を年初に宣言した3か月後、成績表を(自分から、ではありますが)受け取りました: この成績表: 5:1科目 4:3科目 3:3科目 2:1科目 1:2科目 のうち、最低点《1》を付けられたのは、 ③ 月1で料理担当 ⑥ 書斎の片づけ完了 でした。 ⑥はなんとかなる(or どうしようもない)として、③は関係者(監視役?)がいるわけです。 「アンタ、今年は月イチで料理するって正月に言ってたのに、1回もやってないじゃないの!」 「いやいや……2月に1回、

          成績を上げるために

          天才だ!

          きわめて個人的な嗜好に従い、noteで出会った傑作(小説、マンガ、イラストなどオリジナル創作)を仮想本棚に納めています: 自分は『書く』人で、『描く』人ではないため、優れた作品を『描く』人には憧れを感じます。 (一方で、『書く人』には、時に嫉妬を感じたり、表題はこの方が、など密かに批判的になったり……小さいですね) また、『書く』人のうちでも自分が『エンタメ系』のため、『エンタメ系』には比較的厳しく、『文学系』(という表現はあまり好きではなく、『描写系』と捉えていたりする

          天才だ!

          再勉生活! 円安からの急変で『給料がどんどん減っていく』

          昨年の終わり頃には、日銀の政策変更で円安が収まるのでは、というような予測記事も見られたけれど、それどころかNISAでも海外投信を買う人が多かったり、米国FRBも利下げに踏み切らないなどで、円売りドル買いの勢いが衰えず、34年ぶりという『歴史的円安』になっています。 本日は1ドル=154.75円までイキました。 では、その34年前(1990年春)は、どうだったのか? 下図は1990年代のドル円レートです。90年代前半は、1ドル=160円の円安から円高へと移行し続け、1995年

          再勉生活! 円安からの急変で『給料がどんどん減っていく』

          枝垂れ桜の魅力

          昨日、岐阜県の御嵩町に出かけ、その途中、前回鼠志野のぐい吞みを買った『道の駅 志野・織部』に立ち寄りました。 道の駅と駐車場の間に、満開の枝垂れ桜がありました。 ソメイヨシノもヤマザクラも美しいですが、どれか選べと言われれば、枝垂れ桜(の中でも何種もあるようですが)のファンです。 ソメイヨシノなど他の桜がいかにも植物らしいのに対し、枝を垂らした桜には擬人的な特徴を感じます。 例えれば、振り袖姿で踊る娘道成寺のように ── 見えませんかね? ところで、なぜ枝が垂れるのか

          枝垂れ桜の魅力

          買い物カゴと町内市場の時代

          父が単身赴任、母は教師としてフルタイムで働き、祖母が高齢だったため、小学校低学年の頃からたびたび町内の市場へ買い物のお使いをさせられました。子供には大きなプラスチック・ストローで編んだ『買い物カゴ』を下げ、新聞広告の裏などに鉛筆で走り書きされた『リスト』に従って、野菜、肉、乾物などを買っていく。 この頃から『人間観察』が好きだったのでお使い自体はそれほど嫌ではなかったものの、この、いかにも『主婦用』の大きな買い物カゴを下げて歩くのが恥ずかしかった。 野菜は全てむき出しで、肉は

          買い物カゴと町内市場の時代

          誰もがハチ公(短編小説;2,500文字)

          「キミ、今日から?」 「はい、先週採用されたばかりで……」 「そうかあ……なるほど、……向いているかもしれないなあ」 「そうでしょうか?」 「ああ、顔つきがいい……特に目ね、……なんていうかな、どこも見ていないようで」 「え、それ……」 「いや、ホメてるんだよ。どこも見ていない、というのは、可視化できないほど遠方を見ているってことだ ── ご主人との楽しかった過去と、再会後の素晴らしい未来の両方をだ」 「ご主人って? よくわかりませんが……で、仕事は……この服を着て、ただじっ

          誰もがハチ公(短編小説;2,500文字)

          飯田橋から東京大神宮、千鳥ヶ淵夜桜へ;居酒屋での『刷り込み』カラー・ランドセルの話題からジェンダーレス・トイレについて発想が飛んだことなど

          先週末、東京に出かけたタイミングで桜満開となり、数か所で花見機会がありました。 初日は友人と飲むことになり、飯田橋に集まりました。 前回(昨年)この地で呑んだ時には神楽坂側でしたが、今回は逆方向です。 まずは、近くの『東京大神宮』に参拝しました。 境内はそれほど大きくないものの、伊勢神宮と強い繋がりがあり、『東京のお伊勢さま』という位置付けなんだとか。 郊外に広大な土地を持つ寺社とは違って、都心の一等地で貴重な境内を守るこうした神社は、四季折々の『賑やかし』(と表現す

          飯田橋から東京大神宮、千鳥ヶ淵夜桜へ;居酒屋での『刷り込み』カラー・ランドセルの話題からジェンダーレス・トイレについて発想が飛んだことなど