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【ノンバイナリーの妊活④】子どもがいることが豊かな人生?

 あるラジオで、「進んで子供のために何かをできる幸せを、子供から得られて感謝しています。親という立場で、子供を通して広がっていくつながりによって、人生が豊かになります」と五木ひろしさんが言っていたんです、と出演者が話していた(MCの方が五木ひろしのエピソードを紹介していたので)

 豊かな人生を送るためには子供を産まなればならない、とまでは言われていないが、そういう無言の圧力は感じるのだ。だから私は子供を産まない選択が容易にできないし、わだかまりを持っているんだと思う。

 「人生が豊かになる」という言葉に引っかかる。何をもっての豊かな人生なのか。子供を持たないのならば、人生は豊かにならないのか――。
 その一方で、豊かな人生というものを見てみたい知ってみたいという気持ちも確かにあって、軽率にも子供を産んでみたいかもしれないと一瞬思った。どうせまた何日かあとにはやっぱり無理となるのだけど。でもこうやってかんたんに思考が揺れ動いてしまうのが、人間の仕方ない部分だとも思うのだ。

 以前会った友達Mも五木ひろしと同じようなことを言っていた。「大丈夫、産んで後悔することはないから」20代前半に結婚し、不妊治療の末30歳直前に妊娠した、クレバーで、前向きで、困難があっても笑って乗り越えるタイプのM。
「子供とは別の人生なんだから。産んでも私はずっと自分の人生を生きてるよ」Mはそう言い切る。子供ができたからといって、人生が終わるわけではないし、自分が主人公の漫画に登場人物が増えたくらいの感覚!そうやってあなたみたいに強くいられたら私もよかったのに。
 先日取材したインタビューイも言っていた。「大丈夫、産めばなんとかなる」と。本当だろうかと思う一方で、これは産む性別関係なく戸惑うことなのではないかと考える。

 そんなMにやんわり悩みを相談したら(もちろんノンバイナリーだということは伏せた)シリンジ法を試してみれば?と言われた。これは「過去に妊娠事故にあったことがあって性行為が怖い(本当は"ノンバイナリー自認をしているので生殖行為によって自分が女だと思い知るのが怖い"という気持ちもある)」に対するアンサーで、たしかに方法論だけでいえば合理的である。
 私はシリンジ法にものすごく衝撃を受け、ためしにネットで調べてみると、なんと楽天にシリンジセットが売っていた。口コミを見てみると「自然妊娠だけでは不安なのでタイミングを取るために…」などとあり、意外とポピュラーなものなのかもと思い直す。
 豊かな人生のためにシリンジ法を試すのか。豊かな人生を送るために、妊娠による身体の変化を受け入れられるのか。そういう選択肢があることを心の片隅に置いた。


 

 


今度一人暮らしするタイミングがあったら猫を飼いますね!!