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あっちじゃない裁判を考えたゲイ主夫(1/2解説パート)

主   文

原判決を破棄する。
本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。

裁判所|(行ヒ)第360号 犯罪被害者給付金不支給裁定取消|判決文


2024年3月26日、最高裁で予想をはるかに超える判決が出た。
(同性パートナーを認める判決)

『「同性パートナーにも犯罪被害の遺族給付金を」訴訟』が、一応の結末を迎えた。「いわゆる同性婚訴訟」”じゃないほう”の裁判だ。

判決は「高裁への差し戻し」。
理由は「同性だからって理由で不支給はいかん」というものだった。

これを受けて、制度を運用する警察庁は対応を各都道府県警に通知した。
(同性パートナーを認める対応)

大いに興奮すべき状況だ。

この状況が何を意味するのか、独自の考察を絡めながら解説したい。
(今回は裁判の解説のみ)



裁判の概要

20年以上もの間、生活を共にしてきた同性のパートナーを殺害された者が、「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」として、犯罪被害給付制度の遺族給付金の支給を求めて申請を行いました。しかし、愛知県公安委員会は、申請者と本件被害者が、法律上同性であること等を理由に、給付金を支給しない旨の裁定をしました。これを不服として、名古屋地方裁判所に不支給処分の取消を求める訴えを提起しました。

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経緯

経緯は以下のとおり。

  • 1994年頃:同性パートナーとの生活開始(約20年)

  • 2014年12月:事件発生
    同性パートナーが殺害される(犯人は懲役確定)

  • 2016年12月:遺族パートナーとして「犯罪被害者給付金」申請

  • 2017年12月:不支給
    県の公安委員会(警察を管理する行政)が給付金の不支給を裁定
    ※警察庁(警察を運営する機関)も同様の意向を表明

  • 2020年6月:行政へ訴え(行政起訴)/名古屋地裁:棄却
    被告「愛知県」 ↓ 原告側は不服として控訴

  • 2022年8月:行政へ訴え(行政起訴)/名古屋高裁:棄却
    被告「愛知県」 ↓ 原告側は不服として上告

  • 2024年3月:行政へ訴え(行政起訴)/最高裁:高裁へ差し戻し
    被告「愛知県」 ↓ 名古屋高裁で再審か

名古屋地裁で1審棄却。
名古屋高裁で2審棄却。
つい先日(2024年3月26日)、最高裁判所が「高裁への差し戻し」を判決した。

名古屋高裁が差し戻しを受け入れれば、再審(名古屋高裁が確定した判決のやり直し)となる。

「不支給の裁定」から、実に6年以上の歳月が経過していた。

(補足)
「犯罪被害給付金」の申請は、「地元の警察署、又は警察本部」などで受付ける。審査は、地元の公安委員会により裁定、結果を通知される。
従って、当裁判の被告は、愛知県と愛知県公安委員会となっている。
(下図参照)

犯罪被害者等施策ホームページ - 警察庁 / 犯罪被害給付制度 (npa.go.jp)
『犯罪被害者等給付金の申請・裁定の流れ』の絵を使って
原告が体験した流れをマーカーで記載してみた図

最高裁の判決を受けて変わるルール

当裁判の争点は、犯罪被害者給付金のルール(法律)「犯給法」の一節だった。

(遺族給付金の支給を受けることができる遺族は~(略))
事実上婚姻関係
と同様の事情にあった者を含む。

犯給法 5条1項1号より
犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律 | e-Gov法令検索

日本では、同性カップルは法律婚ができない背景があり、「事実上婚姻関係」に同性カップルが含まれるか否か、が争われた。

現状、「事実上婚姻関係」とは、(男女の)事実婚と内縁の集合体を指す。


訴えを棄却していた名古屋高裁は、原告はパートナーと内縁関係にあったこと「だけ」は認めていたため、今回の最高裁の「差し戻し」を受けて判決をひっくり返さざるを得なくなった。再審となれば、原告の勝ちは確定である。

しかし、影響は想像以上に大きく――

同性パートナーが「犯罪被害者給付金」の支給対象に該当し得るとした最高裁判決を受け、警察庁が各都道府県警に対応を求める通知を出したと明らかにした。

東京新聞(2024年4月9日)|同性パートナーも対象と通知 犯罪被害者給付金で公安委員長

ずっと不支給の意向だった「警察庁」が、名古屋高裁の再審よりも先に動く結果となった。

当裁判の被告は、愛知県と愛知県公安委員会だ。
公安委員会がお目付け役となり管理しているのは「警察」、その「警察」の運営を担うのが警察庁であり、「犯給法」を全国的に運用するのは警察庁である。その警察庁が、今回の対応を各都道府県警に通知した。

これで今後、犯給法の「事実上婚姻関係」に同性カップルの内縁が加わる運用が確実となった。


さて、後半は疑問点と考察や感想などを綴ります。


つづく――







自分メモ

※参考文献

※犯給法

※判決文(&補足)


※参考記事


※その他参考


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