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集英社文庫の公式アカウントです。 書籍紹介やコラム、裏話、連載小説などを発信していきます。 読書の秋!新連載ぞくぞくスタート! 集英社文庫公式サイト:https://bunko.shueisha.co.jp/

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マガジン

  • 本バカ一代記  ――花の版元・蔦屋重三郎――/吉川 永青

    江戸随一の出版バカ・蔦屋重三郎の生涯を描く、著者渾身の時代小説!

  • メソポタミアのボート三人男/高野秀行

    新たな脱力系本格派の冒険が始まる!! コンゴで怪獣を探し、ミャンマーでアヘン栽培に潜入し、ソマリアで独立国家を取材した著者が、メソポタミアの河下りを敢行する! 世界中の河を旅した山田隊長と共に、文明発祥の地を巡る一大冒険記。

  • 【刊行直前特別連載!】鶴は戦火の空を舞った

    5月21日に集英社文庫から岩井三四二さんの『鶴は戦火の空を舞った』が発売されます。 近代を舞台にした歴史時代小説の新地平! この日本の戦闘機パイロットの最初期を描いた、胸が熱くなる書き下ろし小説を限定公開中。 全七章のうち第四章までを平日毎日更新でお届けしますのでお楽しみに!

  • 下町やぶさか診療所5

    看護師知子の義母が癌のため死去。故郷島根の海へ散骨してほしいとの遺言を残した。大先生こと麟太郎が知子夫妻に同行すると知った居候の高校生麻世は……。ユーモア&人情小説。

  • 営業担当のオススメ!

    集英社文庫の販売&宣伝担当者が、オススメの1冊をご紹介します! 人形作成&写真撮影/金沢和寛 バックナンバーはこちら→https://bunko.shueisha.co.jp/recommend/index.html

  • REISAI×捜し物屋まやま「Anemone」
  • 畠中恵『猫君』(集英社文庫)PV

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読書の秋。新連載ぞくぞくスタート!

まだまだ残暑が厳しい……というより猛暑まっただなかですが、暦の上ではもう秋。 そう、読書の秋です! というわけで、集英社文庫noteでは小説・エッセイの新連載をぞくぞくスタート! 先行して連載を開始したのは、骨太なサスペンスを数多く生み出してきた福田和代さんのサイエンス×忍者小説『梟の胎動』。令和の忍者のスリリングな活躍をご覧ください! そして、血液のがんと闘いながら、長年あたためてきた構想をついに小説化した花村萬月さんの『海路歴程』。読み手をとらえて離さない中毒性の高い

    • 新刊のご案内【集英社文庫5月刊】

      みなさんこんにちは。 集英社文庫noteです。 ゴールデンウィークも明け、5月も終わりを迎える今日この頃。 徐々に暑さを感じる日も増えており、季節の移り変わりを感じます。 つつじが満開になっていたり紫陽花が咲き始めたり。 緑が元気な季節なので、ふと目をやると心が和みます。 さて、5月21日に集英社文庫の5月刊が刊行されました。 今月は11作品。 心に潤いを与えてくれる味わい深い作品や、学びを得ることができる作品が多く登場しています! こちらの記事では、それぞれの魅力をご紹

      • 本バカ一代記 ――花の版元・蔦屋重三郎―― 第八話(下)

        【前回】           *  恋川春町と朋誠堂喜三二は、間違いなく江戸に於ける戯作の第一人者だった。その二人を、重三郎は失った。  それでも足踏みする訳にはいかなかった。本で勝負して流行りを作り出したい。世を動かし、明るく照らしたい。胸の内にある思いは変わることがないのだから。 「京伝さん、どうも」  春町の死から三ヵ月、十月初めの昼前に、重三郎は山東京伝の自宅を訪ねた。二人の大家を失った今、京伝こそが次の第一人者となるべき人であった。 「お、こりゃ蔦屋の旦那。よ

        • メソポタミアのボート三人男 第一回/高野秀行

          プロローグ トリアーナの舟 「俺たちはトリアーナやな」山田隊長が厳かな口調で言った。 「鳥と穴?」  空を飛ぶ鳥も久しからず、おごれる者も穴に落ちるという平家物語以来の諸行無常という意味だろうか。そのわりに私たちは高々と空を飛んでいた記憶はなく、いつも穴に落ちてばかりだったような気がするが。 「ちがうわ。トリはほれ、トリコロールのトリで、三つのことや。三つのアナってことだ」  穴が三つ? 人を呪えば穴二つとかいう諺を聞いたことがあるが、三つ? 「アナクロ、アナログ、アナーキ

        • 固定された記事

        読書の秋。新連載ぞくぞくスタート!

        マガジン

        • 本バカ一代記  ――花の版元・蔦屋重三郎――/吉川 永青
          24本
        • メソポタミアのボート三人男/高野秀行
          1本
        • 【刊行直前特別連載!】鶴は戦火の空を舞った
          23本
        • 下町やぶさか診療所5
          3本
        • 営業担当のオススメ!
          10本
        • 海路歴程/花村萬月
          19本

        記事

          本バカ一代記 ――花の版元・蔦屋重三郎―― 第八話(中)

          【前回】          * 「はいはい、順番ですからね。本はまだ、たんとありますから」  列を成す客に向け、見世の前に出た手代が声を張り上げている。並んでいるのは、ざっと百人だ。気短な江戸っ子がこれだけ集まると、順番待ちをさせるのもひと苦労らしい。 「いやはや、すごいね。ここまでとは」  少し離れた辻から行列を眺め、重三郎は呆気に取られた。小正月――一月十五日の晩を吉原五十間道の見世で過ごし、今朝一番で通油町に戻ればこの騒ぎである。 「ちょいと元八さん」  客を捌い

          本バカ一代記 ――花の版元・蔦屋重三郎―― 第八話(中)

          下町やぶさか診療所 5 第二章 居場所がない・前/池永陽

          「大先生。次は元子さんなんですけど……どうしましょうか」  奥歯に物が挟まったようないい方を、八重子がした。 「どうしましょうかって――どうせまた、胸やけがするとか何とか、わけのわからんことをまくしたてるんだろうが、きている以上は診ないわけにはよ」  うんざりした思いで麟太郎はいう。 「それはいいんですけど。さっきちらっと待合室を見たんですが、何だか元子さん、怒っているようなかんじで、顔も険悪そのもののように見えましたから、それでちょっと」  困ったような顔の八重子に、 「険

          下町やぶさか診療所 5 第二章 居場所がない・前/池永陽

          『透明な夜の香り』(千早茜/著)をオススメ!

           香りで記憶が鮮やかによみがえる、という経験をしたことがある人は多いのではないでしょうか。私も、汗拭きシートのさわやかな香りで高校時代の夏休み中の部活帰りを思い出したり、ふとすれ違った人の柔軟剤の香りが実家と同じで懐かしい気持ちになったり……香りは、意識していないところで記憶や感情と結びついていると感じます。  この現象について調べてみると、「プルースト効果」という名前がついており、科学的に説明されていました。嗅覚は五感の中で唯一、脳で感情を司る部位に直接つながっており、情動

          『透明な夜の香り』(千早茜/著)をオススメ!

          【刊行直前特別連載!】鶴は戦火の空を舞った 第四章 9/岩井三四二

          (第四章 ヴェルダンの吸血ポンプ) 九 「なるほど、初手柄ってわけですな」 「ええ。運よくおなじ中隊のヴォワザンVが偵察にきていましてね、証言してくれたんで、撃墜と認められました」 「うん、めでたい。たとえ『ベベ』に乗っていても、なかなか撃墜はできませんからね」  滋野男爵は、乾杯というようにワインのグラスを近づけたので、英彦はそれに合わせた。ちん、と澄んだ音がした。  十月二十三日、パリの一角に偕行社──日本陸軍の将校・準士官らの親睦・互助組織──が借りている一室で

          【刊行直前特別連載!】鶴は戦火の空を舞った 第四章 9/岩井三四二

          【刊行直前特別連載!】鶴は戦火の空を舞った 第四章 8/岩井三四二

          (第四章 ヴェルダンの吸血ポンプ) 八  七月になってもさほど気温はあがらず、朝晩などはコートがほしいほどの気候がつづいていた。  その朝、英彦はメカニシアンとともに出撃前の機体の点検をしていた。 「きみがよく面倒を見てくれるから、こいつも調子がいいよ」  と英彦が言うと、メカニシアンは帽子の庇を指ではねあげながら応じる。 「少尉が熱心なんで、こっちも力が入りますよ」 「そうかな。おれは当然のことをしているだけだが」  飛行前の点検、飛行後の整備を入念に行い、気づいた

          【刊行直前特別連載!】鶴は戦火の空を舞った 第四章 8/岩井三四二

          本バカ一代記 ――花の版元・蔦屋重三郎―― 第八話(上)

           町衆は、細々とでも食い繋げればそれで良かった。少しで良いから助けてくれと、国を動かす人たちに懇願した。  しかし。これを退けられ、ついに打ち毀しに走ってしまった。  こんな騒ぎが起きた後で、どうやって商売を続ければ良いのだろう。そもそも商売をしていられるのだろうか。  幕府がどうするか次第で成り行きは変わる。何とか、それを知り得ないものか。  考え抜いた末に、重三郎は朋誠堂喜三二を訪ねた。喜三二の実の名は平沢常富、秋田藩江戸屋敷の留守居役である。他藩や幕府との折衝を担う人な

          本バカ一代記 ――花の版元・蔦屋重三郎―― 第八話(上)

          【刊行直前特別連載!】鶴は戦火の空を舞った 第四章 7/岩井三四二

          (第四章 ヴェルダンの吸血ポンプ) 七  基地の宿舎で寝ていた英彦は、無遠慮に鳴り響く不吉な警報に起こされた。  ベッドから出てカーテンをあけ、目をこすりつつ窓の外を見れば、空は暗くて濃い紺色で、ポールの上の吹き流しは垂れ下がっている。地上を走る人影が、やっと見分けられるほどの薄明かりだ。 「総員起床。搭乗員はただちに集合せよ」  と拡声器が呼ばわる。 「また空襲か」  先日、ドイツ機が昼間にきて爆弾を落としていった。ここに飛行場があると、ドイツ側にばれたらしい。  

          【刊行直前特別連載!】鶴は戦火の空を舞った 第四章 7/岩井三四二

          【刊行直前特別連載!】鶴は戦火の空を舞った 第四章 6/岩井三四二

          (第四章 ヴェルダンの吸血ポンプ) 六  六月初めの夕刻、軍服姿の英彦はパリの東駅にいた。  入隊以来、二十回の出撃をこなしたご褒美として、三日間の特別休暇を与えられた。そこで早朝に基地を出て、パリ行きの汽車に乗ったのだ。  駅から、教えられていた番号に電話した。  日本商社のパリ支店が出た。ムッシュー・ヤナギダを、と言うと、しばらくしてなつかしい声が聞こえてきた。 「おお、いまパリですか。ちょうどいい。今晩、うちに来ませんか。何もありませんが、別の客もくるので、牛鍋

          【刊行直前特別連載!】鶴は戦火の空を舞った 第四章 6/岩井三四二

          【刊行直前特別連載!】鶴は戦火の空を舞った 第四章 5/岩井三四二

          (第四章 ヴェルダンの吸血ポンプ) 五  雲の上に太陽が顔を出すと、紫色だった東の空が赤く染まった。  基地を離陸してから一時間あまり。ようやく地上の姿がうっすらと確認できるようになってきた。  英彦はクーディエ中尉をのせて、二機編隊の右側を飛んでいた。こちらは第二小隊で、さらに先を第一小隊の二機が飛んでいる。  先頭を飛ぶ中隊長のメナール大尉は、ここまで磁気コンパスだけを頼りに方角を決めてきたはずだから、地上が見えてさぞほっとしていることだろう。  案の定、進路を修

          【刊行直前特別連載!】鶴は戦火の空を舞った 第四章 5/岩井三四二

          【刊行直前特別連載!】鶴は戦火の空を舞った 第四章 4/岩井三四二

          (第四章 ヴェルダンの吸血ポンプ) 四  翌日、英彦はまたクーディエ中尉をヴォワザンV型機に乗せて飛び立った。  昨日発見した四十二センチ砲に対しておこなわれた味方の砲撃が、成果をあげたかどうかを観測するためである。  青空は見えているが雲は多い。雲量五、と英彦は見た。とくに東のほうには雲が多いが、雲底は二千メートル程度だ。風は北西微風。天気図を見ると近くに前線はなく、飛行に支障はない。 「よし、このまままっすぐ東だ」  クーディエ中尉が前席から指図する。昨日、砲火を

          【刊行直前特別連載!】鶴は戦火の空を舞った 第四章 4/岩井三四二

          海路歴程 第九回<下>/花村萬月

          .    *  明けない夜はない。  だが、あたりが薄明るくなっても日輪は昇らなかった。灰色の雲が洋上の彼方で水平線と溶けあって、どこまでが海でどこからが雲か判然としない。超巨大な無彩色の椀をかぶせられているかのような閉塞感がある。  おずおずと親司が具申した。 「船頭、髻を切ろう」  神仏に祈り、すがるしかないというのだ。船頭が受ける。 「莫迦野郎、俺はな、雷様に焼かれちまって切る髷がねえんだよ」  貞親は吹きだしそうになり、ぎこちなく横を向いた。こんな状況であっても、緊

          海路歴程 第九回<下>/花村萬月

          【刊行直前特別連載!】鶴は戦火の空を舞った 第四章 3/岩井三四二

          (第四章 ヴェルダンの吸血ポンプ) 三  英彦は、高度二千メートルで東に向かっていた。  乗機のヴォワザンV型機の前席にはクーディエ中尉を乗せている。  晴れてはいるが、白い綿雲があちこちに浮いている。いまのところ風は穏やか。危険な積乱雲もない。 「ムーズ川を越える。気をつけろ」  クーディエ中尉がふり返って怒鳴り、手で地上を指さす。背後の発動機──ヴォワザンV型機は機首に偵察・爆撃員席があり、そこに回転式の機関銃を備えている。英彦がすわる操縦者席は後方にあって、さら

          【刊行直前特別連載!】鶴は戦火の空を舞った 第四章 3/岩井三四二