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【パブリッシャー事典】パッと見で気に入った作品を作家第一で世に出したい!/わくわくゲームズ

クリエイターの皆さまに、参加パブリッシャーについて知っていただくことで、マッチングの一助となるべく始動したインタビュー企画「パブリッシャー事典」。各パブリッシャーの特色や得意なこと、目指す姿などをお伺いしていきます。

今回は、“日本で一番敷居の低いパブリッシャー”を目標に立ち上がったパブリッシャー、わくわくゲームズの大柳さんにお話を伺いました!


「わくわくゲームズ」ってどんな会社?

ーー本日はよろしくお願いします! まずは会社の概要を教えてください。

わくわくゲームズ合同会社は、私一人でやっている一人パブリッシャーです。なので、日本でというか世界で一番最小の形態のパブリッシャーだと思います。

わくわくゲームズのイメージとしては、商店街の中にある普通の酒屋さんで、あんまり流行ってなさそうな感じだけど、入ってみると「なんでこんな銘柄のお酒が置いてあるんだ!?」みたいなパブリッシャーを目指してます(笑)「知る人ぞ知る」みたいな。
ここからはさらに「みんなが知っている」になりたいと思っていますね。

個人制作者さんの作品を中心に、面白い作品をどんどん紹介していきたいと思っています。
一馬力でできることは限られるんですけど、今年は去年よりも一層影響力というか、認知度を高めていきたいなと思っています。

これまでのパブリッシュタイトルは?

ーーでは、これまでパブリッシュしたタイトルを教えてください。

もともと、『コーヒートーク』などを出してるコーラスワールドワイドという会社で8年ほど日本法人の代表社員をやっていて、弊社はその流れで立ち上げた会社です。
コーラスワールドワイドは洋ゲーがメインだったんですけど、私としては日本のインディー、同人作品をどんどん深掘りしていきたいという思いから始めました。

『百年王国』

最初はコーラスワールドワイド内の1レーベルとして始めさせていただいたんですが、その時一番最初に取り扱いをさせていただいたシミュレーションゲーム『百年王国』は印象深いですね。
発売から2年以上経っていますが、最初の1年くらいはアップデートを続けていたり、2023年9月にはパッケージ版も出したりと、やれる範囲のことは全部やらせていただきました。

『モン娘ぐらでぃえーた』

あとは『モン娘ぐらでぃえーた』っていう、湊あおいさんという作家さんが作られたゲームがあるんですが、可愛いモンスター娘を育成して戦わせるっていうちょっと可哀想なゲームなんですけど(笑)
ローグライクの要素があり、何回でも周回してプレイできる面白さがあり、私としても気に入っている作品です。
こちらも発売から結構な年月が経ってはいるんですが、いまだにセールすると目に見えて販売本数も伸びますし、ゲームも継続してコラボしたりアップデートしたりしていて、作家さんのサポートも手厚い作品ですね。

『魔物娘と不思議な冒険』

あと『魔物娘と不思議な冒険』シリーズという作品がありまして、こちらは不思議なダンジョン系のローグライクゲームです。
現在1作目と2作目のNintendo Switch版を弊社で取り扱っているんですけれども、1人で制作されているにも関わらず作り込みと規模感がすごくて、ゲームとしてのバランスもいいんですよ。
私も100何時間も遊んでいるくらいハマってます(笑)
個人的に遊んでいたのと、発売前のテストプレイと、発売後で3回クリアしているくらいハマっているゲームなので、機会があれば皆さん遊んでみて欲しいです。

『ファミレスを享受せよ』

あとはやはり『ファミレスを享受せよ』ですかね。
昨年末にかけて発売した弊社ラインナップの中では、一番話題になった作品ではないかなと思います。
元は無料のゲームなんですが、より多くの方に手に取っていただく価値のある作品だなと思ったので、有料版にはなりますが、既にプレイされた方にも楽しんでいただけるような要素を加えた上で、より手に取ってもらいやすいSteamとNintendo Switch版で発売したということで印象深い作品ですね。

作家のおいし水さんは若くて、私の年齢からすると息子くらい年齢が離れているんですけど、感性が素晴らしく自分の世界を見事に表現できている方なんですよ。
第一印象ではクラシックなPCゲームのオマージュかと思ったんですが、全然そんなことはなくて。
おいし水さんが考えたイメージや世界観が、たまたま古のPCゲームそっくりのビジュアルだった、というのがすごいなぁと思って。狙わずに作って、こうなっているところにびっくりして、そこが私のツボにハマったというか。
おいし水さんが「絶対続編は作らない」と言っていたのも良くて、短編ストーリーとして話を引っ張らないところもいいなと思って、お話ししていて惚れ惚れするところがありましたね。

『闇鍋人狼』

『闇鍋人狼』もすごくて、あれもオンラインのゲームながらウラコンさん一人で作っているんですよ。
オンラインって正直なところ、ユーザーがいなくなった時点で終わりだと思っていて、出す前まではすぐにユーザーがいなくなって寂れてしまうと危惧していたんですけど、いざ蓋を開けてみると、発売から2ヶ月経った今でも一定のユーザーさんはいるし、販売本数的にも一定数出ていますね。
最小規模のオンラインゲームとしてローンチしたんですけど、プレイヤーが枯渇することもなく、VTuberさんやYouTuberさんにプレイしていただいて、販売本数も積み上がっていて、うまくいっている作品ですね。
これはウラコンさんの運営能力がすごいなと思っていて、作家さんのやりたいことを何も束縛せずにやってもらった結果かなと思っています。

ーー作家さん愛に溢れたご紹介、ありがとうございます!

パブリッシュする上で意識していること

ーーここまでお話を聞いていて、非常に作家さんファーストな印象を受けたのですが、パブリッシュする上で意識されていることはありますか?

そうですね! 作家ファーストではありますね。
作家さんの作品あってのパブリッシャーだと思うので、僕が我を通したりゲーム自体に口を出すことはあんまりないですね。
パブリッシャーの形態も、資本を出すとかいろいろあると思うんですけど、わくわくゲームズは作家さんが作った作品をライセンスアウトしていただく形になっているので、作品そのものに対して言う権利自体ないと思っていますね。

世に出すにあたって本当にダメな部分、例えば年齢制限や表現に関わる部分は事例からアドバイスすることもありますが、創作活動を極力邪魔しないようにしています。
個人作家は自分の作りたいものを作っているはずで、それが全てだと思っています。

会社として得意なこと、サポートできること

ーー続いて、会社として得意なこと、サポートできることを教えてください。

作家さんが「やりたい!」と言ったら、自分の懐事情が許す限りはなんでもするように努力はしていますね。無理なこともありますが。
ローカライズやサウンド、アート面など、外部にお金をお支払いする場合も、可能な限り希望に沿うような形で対応してゲームの制作をしてもらっています。

ーー懐事情、というか予算については、売上予測とかを立てられた上で決めているんでしょうか?

正直、売上予測なんて立てられないです!(笑)
開発経費については、作家さんそれぞれとの話し合いでどのくらいかけられるかを決めているので、ケースバイケースです。
基本は皆さん全部同じ契約内容で、開発経費がかかった分はリリース後の売上から相殺していく形になります。
当然リクープできなかった分はうちのリスクになるので、その点では作家さんご自身が事前にリスクを負うことはないんですが、開発経費でかかった分はどうしても売上から引かないといけないので、なるべく経費は安く抑えようとはしていますね。

経費を抑えるために、例えば外部のエンジニアさんに依頼をした際は、作家さん・エンジニアさん・うちの3社合同の契約にして、それぞれのロイヤリティの按分を設定して、経費計上じゃなくてロイヤリティとしてお支払いする、という方式を取ることもあります。
そこは作家さんにとってベストな形になるよう、話し合って決めますね。

このエンジニアさんのリソースや契約内容は、結構うちのお取り扱い作品の作家さんから力をお借りしてやっている、という面はありますね。

ーーその点は、大柳さんのお人柄や作家さんとの関係値があってこそというか、どこのパブリッシャーさんでもできるやり方じゃないですよね。

そうですかね(笑)
作家さんたちはうちの台所事情を知っているので、協力いただく時も「しょうがないなぁ」くらいの感じで思っているのかもしれませんね。

そこのあたりは可視化というか、ざっくりどれくらいの懐事情で何をやっているか? 会社的にどうしているか? は作家さんに聞かれたら話したりもしているので、そこは他のパブリッシャーさんとは違うかもしれません。

あとロイヤリティレポートは生の数字を入れているので、作家さん自身が作品の売上や各社の取り分をすぐわかるようになっています。
作家さん同士の横のつながりもあるでしょうから、なんとなくの情報共有はされているかもしれませんね。

ーー確かに、そこまで出していただけると作家さんは安心ですよね。

信用を得るにはクリアじゃないと! と思っているので。
「隠し事はしない」「金の払いは綺麗」というのは、うちが提供できる数少ない信用ですから大事にしていますね!

今後パブリッシュしていきたいタイトルは?

ーー今後パブリッシュしていきたいタイトルはどんなタイトルでしょうか?

制作形態は限っていなくて、基本的に個人が多いんですが、最近は法人の作家さんも入ってきています。

こういうジャンルがいいとか、こういう作品がいいとかじゃなくて、わくわくゲームズは僕が気に入った作品をラインナップしていきたいと思っています。
プレイして面白い作品をラインナップに並べていきたいというか、自分が気に入った作品があれば土下座してでも全力で貰いにいきます!(笑)

「売れるジャンル」とか「尖った作品」とか「AAAと見紛う」とかよく言われますが、売れなさそうなジャンルでもビジュアルでも関係なくて、今後も自分が取り扱いたいゲーム、みんなに遊んでもらいたいゲームを厳選していきたいですね。

ーーそういったゲームはイベントで出会うケースが多いですか?

そうですね。イベントもあるんですが、他の作家さんから紹介していただいたり、Xで紹介されている作品を遊んでみて、ということもありますね。
イベントは結構出展側で出ることが多くて、あんまり見ている暇がないんですよ。

あとはXやWebサイト上のイラスト1枚とかスクショ1枚だけで気に入ったら話しに行っちゃうケースもありますね。
ゲームができる前でも、話を聞いた上で契約しちゃうこともあります。
せきやさんが作られている『ラミアズバンビーナ』は、イラスト1枚の段階でシリーズ全部契約しました(笑)

『ファミレスを享受せよ』のおいし水さんの次回作『METRO PENGUIN EUTOPIA』も、断片的なテキストやあらすじだけで「いいな」と思い、契約しましたね。

制作中の作品については、体験版などをプレイして感動したから、というのはあんまりなくて、ぱっと見の第一印象で決めているようなところはあります。

1人しかいないが故に、ハイリスクも何も自分の責任なので。
経営方針として、作家さんに全部支払った上で、残ったお金で会社の活動費や自分の給料を工面しているので、極論作家さんにさえお金を払えればOKで、お金が残らなければ自分はバイトでもなんでもすればいいや、くらいに腹を括っています。
そこまでいかずに済んでいるので、ありがたいですけれども(笑)

なので、タイトル選びに関してリスクはあんまり考えないですね。
プラットフォームの表現の規制に引っかからないように気を付けてはいますが、たまに引っかかるときもあります。
しかし、それも作家さんの重要な創作活動の一部なので、うまく調整ができればいいなと。
それ以外に関しては、気に入った作品をとにかく世に送り出したいという思いでやっています。

ピッチデッキに盛り込んで欲しい情報は?

ーーその上で、ピッチデッキに盛り込んで欲しい情報はありますでしょうか?

ぱっと見の印象を大事にしているので、そこが伝われば十分ですね。
過去作品があるなら、その作品を遊べるリンクなどがあれば参考にしやすいですかね。

Game Pitch Base 参加クリエイターに向けて

ーー最後に、Game Pitch Baseに参加しているクリエイターに向けて一言お願いします!

ゲームを作った以上は、完成してプレイヤーにプレイしてもらわないと意味がなくて、ゲームは世に送り出してからがスタートなので、まずは完成させてください!

完成までにやたら時間がかかることも、心が折れることも、クリエイターとしてやりたいこともあると思うんですが、時間がかかるのであれば、とりあえずは完成させて次回作以降にやりたい要素を入れ込むとかで、まずは一番プレイヤーに見せたい要素を盛り込んで完成させてもらうのがいいと思っています。
作ってることに飽きないうちにゲームを完成させて、プレイヤーに見てもらうことが大事だと思っています。

ーーありがとうございました!


パブリッシュした作品や作家さんへの想いが非常に熱く、どの作品の紹介も熱が入っていたことが印象的でした。
何よりも「作家が作りたいものが全て」という、作家さんファーストなお考えを伺うことができました。

イラスト1枚やあらすじだけで契約したケースもあるということで、ピッチデッキを作ることに対してハードルを感じていた方も、まずはご自身の作りたいものを思い切り表現してみてはいかがでしょうか?

わくわくゲームズのGame Pitch Base パブリッシャーページはこちら

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