【ゲーム企画 BOOT CAMP!!】Part5 頭に入ってくるプレゼン方法
クリエイターの皆さん、こんにちは。CAMP隊員ほりきりです。
集英社ゲームクリエイターズCAMPをご利用いただきありがとうございます。
本日は「ゲーム企画 BOOT CAMP!!」の第5回をお届けいたします。
この連載では「GAME BBQ Vol.2に応募してみたいけれど、企画書ってどう書いたら良いのかわからない」という方に向けて、CAMP隊員ほりきりがプロの現場でゲームプランナーとして培ってきた経験を元に、ゲーム企画の考え方から企画書の書き方までを、なるべくわかりやすく解説していきます。
連載は全5回で行ってきましたが、ついに今回で最終回となります。各回で取り上げてきたテーマは以下となっております。
企画書は何のために書く?
コンセプトは迷える開発者の指針!
ゲームシステムとゲーム性
長く遊ばせるための「ゲームサイクル」
頭に入ってくるプレゼン方法(今回)
本連載や「GAME BBQ」の主旨については、第1回の記事で解説しておりますので、まだご覧になっていない方は、ぜひ先にそちらをご覧ください。
それでは今回の解説に入りましょう。
良い企画も伝わらないともったいない
第4回までの記事では、企画やゲームデザインについて解説をしてきました。
これにより、皆さんがお持ちの「アイデア」を「企画書」という形に磨きあげるお手伝いが、多少なりともできたのではないかと思っております。
しかしながら企画書は作って終わりではなく、パブリッシャー等へプレゼンするために作るものです。
せっかく丹精込めて作り上げた企画も、プレゼン相手に伝わらなければ意味がありませんから、効果的なプレゼン方法についても考えてみましょう。
「企画が面白ければわかってもらえる」はキケン!
さて、丹精込めて自信作の企画を作り上げた後は、もしかしたらこう考えている方がいるかもしれません。
「こんな面白い企画なのだから、きっとすぐにわかってもらえるだろう」
気持ちはとてもわかるのですが、そのような考えはキケンです。
ゲームであれば「遊べば面白さがわかる」という考えは正しいかもしれませんが、これは企画書です。エンタメや芸術のように「感じてもらう」ものではなく、「何がどう面白いから、この企画を採用すべきだ」ということを説明し、理解してもらうための書類です。
もしかしたら、クリエイターとして「作品の意図」や「どう面白いか」をあけすけに説明するのは抵抗があるかもしれません。
ですが、あなたが最終的に作る「作品」はゲームであって、企画書ではありません。企画書は「制作等の支援をお願いするためのもの」なので、企画の内容や意図を正しく伝えることに全力を注ぎましょう。
プロのゲームクリエイターであっても、実際に遊んでいないゲームの面白さを100%想像するのは非常に困難です。しかしさらに難しいことに、プレゼンの相手は必ずしもゲームの制作経験があるとは限りません。
なればこそ、言葉や図などあらゆる手段を用いて、企画を理解してもらうことに労を尽くしましょう。「感じてもらう」のではなく「説明し理解させる」というスタンスを忘れないでください。
「コンセプト」から話し始めよう
しっかりと企画を理解してもらうために、まずは何から話し始めれば良いでしょうか。
それを考えるにあたり、まずは「良いプレゼン」と「ダメなプレゼン」の例を見てみましょう。まずはダメな方から。
……どうでしょうか。おそらく
「なんで『大技』と『小技』に分けるのだろう?」
「なんで『大技』じゃないとトドメがさせないのだろう?」
など、いくつかの疑問が浮かんできて、あまり頭に入ってこなかったのではないでしょうか。
続いて良い方の例です。
ゲームデザインの是非はともかく、後者のプレゼンのほうが企画をすんなり理解できたと思います。
ふたつのプレゼンの違いは明確で、良い方はまず「何が面白いゲーム?」という大前提を話し、続けてその実現方法と詳細を説明しています。
ダメな方のように、いきなり機能など具体的な話をされても「それはなぜ必要なの?」という疑問が生まれ、なかなか頭には入ってきません。
つまり、プレゼンの最初に話すべきことは「どんなゲームだから、どう面白い」ということ、すなわちコンセプトです。
「コンセプトってなんだっけ?」という方は、第2回で詳しく解説しておりますので、そちらをご覧ください。
必要十分な情報量に絞ろう
話す順番として「コンセプト→その実現方法→さらに詳細」という流れが良いことはわかりましたが、どこまで詳細を説明すれば良いのでしょうか。
人間は一度にそれほど多くの情報を記憶できないので、ゲームの細部まで入念に説明しても意味はありませんし、逆に重要な部分の印象が薄れてしまう危険性もあります。
したがって、企画書で説明する情報は重要な部分に絞るべきです。具体的には、以下に当てはまる要素を優先的に説明しましょう。
コンセプトの実現に必要不可欠である
この企画ならではのユニークポイントである
聞き手が知りたそうな情報である
基本の尺度は「コンセプトの実現における必要性」です。
しかし、コンセプトの実現において重要であっても、それが他のゲームでもよく見られるような要素であれば、それほど詳しく説明せずとも理解してもらえるでしょう。
なので、詳細に説明するポイントは、その企画独自のユニークポイントに絞ると効果的です。
また本連載の第1回で、企画書は「読み手が知りたいことを伝える」のが大切だというお話をしました。
相手は何を判断するためにプレゼンを聞いているのかを想像し、そのために必要な情報は不足なく伝えるように心がけましょう。
例えば、相手が資金提供を検討しているパブリッシャーであれば、「ゲームの面白さ」以外にも以下のようなことが気になるはずです。
どのくらいの人に買ってもらえそうだろうか?
→ ターゲット、プラットフォーム一本何円くらいで売れそうだろうか?
→ ボリューム、プレイ時間、ゲームサイクルいくら予算がかかるだろうか?
制作期間はどのくらいかかるだろうか?
提案者に企画を作りきれる能力はあるだろうか?
→ 実績、チームの座組
自分が聞く側に立ったつもりで、「何を知りたいか」想像力をはたらかせて考えましょう。
「次に〜を説明します」ではなく繋げて話そう
最後はプレゼンの「話し方」についてです。
プレゼンにあまり慣れていないと、とにかく企画書に書かれている項目をつつがなく喋ろうとして「まずコンセプトについて説明をします……次にゲームシステムを説明します……次に……」という感じに話してしまうかもしれません。
しかし「コンセプト→その実現方法→さらに詳細」という順番で説明するなら、話し方としても、その繋がりがわかりやすくなるよう意識すべきです。
具体的には「なぜなら〜」「詳しくは〜」「具体的には〜」というように、文脈に沿った言葉で繋げるようにしましょう。
以下のような感じです。
最後にまとめと補足
今回はプレゼン方法について、以下のようなお話をしてきました。
「コンセプト→実現方法→詳細」の順で話す
「コンセプトの実現に重要か」などの基準で情報を絞る
「なぜなら〜」「具体的には〜」のように繋げて話す
しかし、これ以外にもうひとつ重要なことがあります。
それは「しっかり練習する」ということです。
人前でのプレゼンは慣れないと緊張してしまい、つい喋りすぎてしまったり、話の繋がりを見失ってしまったりしがちです。
よほど慣れている方でなければ、少なくとも10回は練習しておくべきだと思います。
特にプレゼン時間がキッチリ決まっている場合、時計を意識しながらしゃべる必要がありますから、練習は念入りに行いましょう。内容が身体に染み込み、頭で考えなくても口が自動的に説明してくれるくらいが理想です。
そして今回で、本連載「ゲーム企画 BOOT CAMP!!」も終了となります。
最後まで読んでくださった皆さま、お疲れさまでした。
本連載は「GAME BBQ Vol.2に応募してみたいけれど、企画書ってどう書いたら良いのかわからない」という方に向けて、企画書の書き方やゲームデザインについて解説してきました。
学んだことは実践して初めて身につくものですから、ぜひ本連載の内容を、ご自身のゲーム企画に活かしていただければと思います。
近々「GAME BBQ Vol.2」についての続報もお知らせできると思いますので、そちらもご期待ください。
皆さまからの、魂のこもった企画のご応募を、CAMP運営チーム一同心よりお待ちしております。
それでは。ここまで読んでくださった皆さま、ありがとうございました!
CAMP隊員ほりきり