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「私のこだわり」

私と彼のデートには、決め事がある。


デートする日の服は、事前に彼に目を通してもらう。

前日のLINEの締めは、「また明日」

手を繋ぐ時は、必ず私から。

デートのお金は、[お昼]を除いて 必ず折半。


そして、お昼は必ず、お寿司屋さん。


回らないお寿司屋さんに入る。

カウンターに二人、並んで座る。


頼むのは、特上握り。
そのお店の、一番だから。


運ばれてきたお寿司で
一番最初に食べるのは、光り物。

シャリの赤酢と、適度に脂の乗った身
爽やかな味わいが駆け抜ける。

次に食べるのは、サーモンかマグロの赤身。
しっかりとした脂の甘みが感じられる。

次は、タコや貝類。
コリコリとした食感で、口の中をリセットする。

そしてメインはトロ。
肉と勘違いするレベルの脂の旨さが
何とも言えない。

締めへの繋ぎは、軍艦もの。
イクラやウニなどの濃厚なものもあれば、
白魚などのさっぱり系もいい。


そして締めは、必ず玉。
甘さを噛み締めつつ、

温かいお茶を飲む。


『すいません、ブリを2貫』

え?
いつもなら追加注文なんてしないのに。
ルーティンを外してきた彼に困惑しつつ

目の前に運ばれてきたブリを口にする。

"今日はねぇ、氷見ブリだよ"

見た目以上にさっぱりとしていて
とても食べやすい。

「ねぇ?何で頼んだの?」
「いつもならしないじゃん」

『いや、たまにはいいかな、と思って』


「そうかなー?」

『たまには、違う景色を見てみたくない?』
『もちろん、美玖のこだわりもわかるけど』

『ルーティンを守るのが美玖のこだわりなら』
『たまにはちょっと冒険してみるのが、俺のこだわりかな』

『どう、やってみない?』


私は大将に、次のネタを頼んだ。

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