見出し画像

「なぁ、私のこと…」

『なぁ…私のこと、好きやんなぁ?』

冷たい雨の降る中、傘をさす瞳月は僕に問いかける。

「う、うん」


『なら、なんでしーの誕生日忘れてたん?』

「そ、それは」


言えない。

忘れたフリをして
サプライズをしようとしてるなんて。

『答えられへんってことは、プレゼントも何にも考えてへんってことやんな』

蛇に睨まれた蛙のように
ポケットに忍ばせた箱を出せない。



『行くで』

左手首を掴まれて、強引に引っ張られる。


僕らが向かった先は、
見たことのある雑貨屋。


ここしかない、と思い

「あ、あの…これ」

ポケットから小さな箱を差し出す。


『え…買うてくれてたん?』


瞳月が箱を開けると
深みのある赤色の小さな石がついたブレスレット。

『買ったんなら言うてや!』

「いや、だって…サプライズしたくて」


『そういうのはええんよ!』
『しづは、君が好きだってわかれば、それがわかれば、ええんよ』


「ごめん、ちゃんと素直に言えば良かったね」

『まぁ、こうやってプレゼントくれたし、今回はしづも許してあげる』


『大好きやで』

思っていることは、ストレートじゃないと
時に、伝わらないこともある。

彼女の真っ直ぐな目を見て、そう思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?