見出し画像

魚沼が生んだ郷土料理「へぎそば」

皆さんは「新潟で有名な食べ物」と聞くと、何を思い浮かぶでしょうか?米、酒、煎餅、ラーメンなど、新潟にはたくさんの美味しいものがあります。そんな中で、私が今回紹介するのは「へぎそば」です。「ん?なにそれ?初めて聞いた」という人も「名前は知ってるけど、実際に食べたことはない」という人もいると思います。そんな人たちのためにも、今回はへぎそばの歴史や特徴を調査、取材してきました。

「へぎそば」って何?特徴は?

ここでは、へぎそばの特徴について説明していきます。へぎそばには大きく3つの特徴があります。

1つ目は、名前にもある「へぎ」と呼ばれる器に盛られている点です。この「へぎ」は、大きさが約30×50センチほどあります。一般的なそばは、ザルに盛られたそばがひとりひとりの目の前に運ばれてきて、それぞれが自分のそばをひとりで食べる、という形になっていますが、へぎそばは違います。へぎそばは、「へぎ」に盛られたそばが食卓の中央に置かれ、それを鍋のように家族や友だちと分け合って食べるのが一般的です。

2つ目は、そばの盛り付け方です。一般的なそばは、ザルの上にそばが山のような見た目で盛り付けられていますが、へぎそばはこのような盛り付け方はされません。先ほど説明したように、へぎそばは食卓の中央に置かれて、それをみんなで分け合って食べるので、このような盛り付け方をしてしまうと、時間が経った時にそば同士がくっついて取りづらくなってしまいます。そのため、へぎそばは糸の束のように一口大にまとめられたそばが、へぎいっぱいに盛り付けられています。こうすることで、時間が経ってもそば同士がくっつかないので取りやすく、見た目もきれいに仕上がります。また、この盛り付けの際に手を振るようにして盛り付けることから、へぎそばは別名「手振りそば」とも呼ばれています。

3つ目は、そばのつなぎに「布海苔(ふのり)」という海藻を使っている点です。この布海苔をそばのつなぎに使用することで、他のそばには見られないようなツルツルとしたのど越しとシコシコとした独特なコシが生まれます。また、近年この布海苔に含まれる粘りの元となる多糖質に抗がん作用があり、血中コレステロール値を下げるという見解が見出されており、健康食品としても注目されてきています。

へぎそばの歴史

へぎそばは新潟県魚沼地方(現在の十日町市から小千谷市周辺)で誕生しました。ここは昔から麻織物の「縮」の街として栄えてきました。そんな魚沼地方で縮の糸を紡ぐ際に使われていた海藻の「布海苔」をつなぎとして使うようになり、へぎそばは誕生しました。縮の街として栄え、そば作りに適した自然豊かな土地である魚沼地方だからこそ、へぎそばは生まれたのです。

へぎそばを実食

今回は取材も兼ねて小千谷市で最も歴史のある「元祖小千谷そば 角屋」さんに行って来ました。 取材日:7月24日(土)

画像1

↑「元祖小千谷そば 角屋」

角屋さんは創業明治22年(今から132年前)から続く老舗のそば屋さんで、今でも多くの人から愛されている名店です。そんな角屋さんのオープンは昼の11時からということで、10時45分にお店に到着。すると既にお客さんがちらほらと。「さすが人気店だなぁ」と考えていると、お店の入り口が開きました。いざ入店。私はとりあえず、へぎそばの3人前を注文しました。すると、まず薬味とそばつゆが運ばれてきました。薬味はネギとワサビ、そしてカラシがありました。「なんで薬味にカラシが?そばにカラシって合うの?」そんなことを考えていると、本命のへぎそばが運ばれてきました。糸の束のように、きれいに一口大にまとめられたそばがへぎいっぱいに盛り付けられていて、とても美しい見た目をしていました。見た目を楽しんだあと、早速そばをつゆにつけて頬張ると、ツルツルとした食感とシコシコとした強いコシがあり、とても美味しい。そばを半分くらい食べたら、気になっていたカラシをつゆに入れて頬張ると、これまた美味しい。そばにカラシは全然アリだと思いました。その後も食べ続けて15分ほどで完食。運ばれてきたときは想像していたよりも量が少なかったので「3人前で足りるかな?」などと考えていましたが、コシが強く、食べ応えのあるそばだったので、満足できました。ごちそうさまでした。

画像2

角屋の従業員さんへ取材

そばを食べたあとに角屋の従業員さんに、気になることを3つほど取材してきました。      取材日:7月24日(土)  

Q1.

なぜ薬味にワサビだけでなく、カラシもあるんですか?

A.

魚沼地方では元々ワサビが採れなかったので、昔からそばの薬味にはワサビではなくカラシが使われていました。そして、物流が盛んになるにつれて魚沼地方にも徐々にワサビが出回るようになったことで、ワサビも薬味として使われるようになりました。そのような歴史があるので、今でもへぎそばの薬味にはワサビとカラシの2つがあります。お店によっては、ワサビとカラシのどちらかしか提供していないお店もありますよ。

Q2.

へぎそばを作る上でのこだわりは何かありますか?

A.

はい。へぎそばを作る上でのこだわりは大きく2つあります。

1つ目は、つなぎに使われる布海苔の目利きです。布海苔はへぎそばの味の要となる大切なものです。そんな布海苔が市場に出回るのは年にたった一度だけです。そんな年にたった一度の機会に品質を見極めた上で、1年分の布海苔を入手しなければなりません。年にたった一度のその目利きが、その年のそばの味を決めるのです。なので、布海苔の目利きには特にこだわっています。

2つ目は、そばの打ち方です。うちの店(角屋)ではそばの打ち方を工夫していて、他のお店よりもコシが強くて、歯ざわりの良い食感のそばになるようにこだわっています。

Q3.

小千谷のへぎそばと十日町のへぎそばの違いってなんですか?

A.

明確な違いはないと思います。強いて言うなら、小千谷市は「小千谷名物へぎそば」を、十日町は「十日町へぎそば」をそれぞれ商標登録してるくらいだと思います。

Q.4

最後に全国の方に一言お願いします。

A.

「へぎそばを食べてみたい」という方は、今はネットでも簡単に小千谷そばを買うことができます。しかし、コロナが治まったら是非とも魚沼地方に足を運んで本場のへぎそばを食べてみてください。本場で食べる方がきっと、家で食べるよりも満足していただけると思います。美味しいへぎそばを用意してお待ちしています。

お忙しいなか、取材へのご協力ありがとうございました。

最後に

私は小さい頃からへぎそばを食べてきましたが、今回の調査や取材をとおして「こんな歴史があったのか」や「こんなにこだわって作られていたのか」など感心させられることばかりでした。そんな魚沼の人たちの知恵や努力の結晶である「へぎそば」をぜひ食べに来てください。

(参考)                                                                       へぎそば -歴史や特徴、こだわりなどを解説いたします-  https://www.ogunisobafujii.com/soba/#:~:text=%E3%81%B8%E3%81%8E%E3%81%9D%E3%81%B0%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2,%E3%81%AA%E5%99%A8%E3%81%AB%E7%9B%9B%E3%82%8A%E4%BB%98%E3%81%91%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?