見出し画像

新ことわざで遊ぶ辞典「急がばフィラデルフィア・エクスペリメント」

急がばフィラデルフィア・エクスペリメント
【いそがばふぃらでるふぃあえくすぺりめんと】

【意味】急いでいるからと言って,ちょっと試しにやってみるか的なノリであっても正道を外すような真似をしてはいけない。そんなことをすれば破滅が待っているということのたとえ。急いでるし,ちょっとだけなら逆走ありでしょとか,急いでるんだ,自転車だけど高速のっちゃえのような,試しにやってみるか的ノリでこんなことを言うやつがいたら,ぜひ使ってほしい。もっとも,フィラデルフィアでどんな試みがなされ,どんな結末を迎えたのか知らないと,そうだそうだ自重しようとはならないだろう。
 時は,1943年10月28日。ペンシルベニア州フィラデルフィアの海上で,駆逐艦エルドリッジを用いた,ある実験が軍によって行われた。それは,ニコラ・テスラの発明品であるテスラコイルによって発生した磁場を用いて,レーダーから駆逐艦を不可視化するというものだった。実験は成功。エルドリッジはレーダー上から姿を消すことができた。ところが,成果はそれだけに止まらず,なんと船体そのものがその場から姿を消してしまうことになる。エルドリッジは,2500㎞も離れたノーフォークまで瞬間移動していたのだ。しばらくして,元の場所に再び瞬間移動してくるエルドリッジ。ここまでなら,レーダーから見えなくなるどころか,実際に消えて,しかも何千㎞の距離を超えて瞬間移動できたって,すげぇ副産物だぜ,これって無敵じゃねと舞い上がってしまうところだが,この話には続きがある。船内にいた多くの乗員が死んでいたのだ。その死に様が異常で,身体が船体にとけこんだ者,身体が燃え上がって焼死した者,逆に凍り付いてしまった者などまさに地獄絵図のような有様だったらしい。生き残っても精神的におかしくなって廃人となった者も多く出たとか。無傷で生還できたのは,鉄の隔壁に守られた機械室にいた一部のエンジニアだけであった。この後、軍はこの実験を極秘とし現在に至るという。まあ都市伝説だけど。
 ここで注意しておきたいのは,エルドリッジ号の乗組員は,別に正道を外して楽な道を行きたかった訳じゃなかった。たぶん多くの乗員は,「消磁実験って何だよ。俺たち難しいことはよく分からねぇが,テスラとかいう変人の作った謎の装置,大丈夫かこれ?」ぐらいのノリではなかっただろうか。で,全然大丈夫じゃなかった。この後,何千㎞も一瞬で運ばれ,さらに戻された挙げ句,悲惨な死を迎えるのだから。本当にお気の毒としかいいようがない。しかし,これが実際に起きたことで,本当に何千㎞ものテレポートが可能なのだとすれば,このシステムは,我々の社会に一大変革をもたらす素晴らしい技術となる可能性がある。実はその後も極秘に同様の実験が行われていたかもしれない。あなたが軍の上層部なら?やるでしょ。素晴らしい可能性に賭けるでしょ。実験続けるでしょ。そして死屍累々ですわ。で,どうなったかって?完成してたら何とかイーツの不届き者は,自転車で高速のったり信号無視したり逆走したりしてません。

よろしければサポートお願いします。もし、御支援いただけたときは、大好きなみたらしだんご(コンビニで百円くらいで売ってるの)を食べて、また創作に励みたいと思います。