ネコポニー

僕は発展途上、死ぬまで発展するんだ。
嫌なことは嫌で良いんだよ。
やりたい事はやっちゃえば良いよ。
逃げよう。離れよう。
時には迷うこともあるさ。
僕も実は道に迷ってて今困ってんだ。
迷ってたらネコポニーっていうのに出会った。

ネコポニーは言うんだ。
「どうしたの?」
「疲れてる?」
「休まないと、君の中の僕は止まれなくなるよ?」
僕は答えられない。
僕は振り絞る。
「周りに置いてかれる」
「自分だけ休むなんて出来ない」

ネコポニーは悲しそうに僕を見つめる。

そうこうしてると結構迷い続けて、時間がたってしまった。
ネコポニーは僕についてきてくれてる。
いつからあんなに体が大きくなり、牙が伸び、今にも僕に飛びかかりそうな目をしてるんだろう?

ネコポニーは言う。
「オマエ、イツマデ、ガマン、シテルンダ?」
「クワレチマウゾ」
「オマエガオマエデイラレナクナルゾ」

そう言うネコポニーは腹を空かせた猛獣の様だ。
でも不思議と怖くない。
懐かしさにも似た、安心感がある。
日に日にネコポニーは体が大きくなり、目も充血し、飢えているようだ。
段々、僕は見た目こそ怖くなったネコポニーが愛おしくて仕方なくなった。

だからネコポニーに聞いたんだ。

「お腹減っているの?」
「僕を食べたいのかな?」
「食べたいなら食べて良いよ。君になら食べられても嫌じゃない」
「今度一緒に寝よう。そしてその間に食べたければ食べてくれて良い。寝てるなら痛みも感じる事は少ないだろう。だから一緒に寝よう。僕は君になら食べられても嫌じゃない。」

ネコポニーは唸り声をあげるばかりで話そうとしない。

僕が苦しめてしまったんだろうか。
僕といたからネコポニーはあんなのになってしまったの?
そんな事を考えると体に力が入らなくなっていく。
申し訳ない。
どんどんどんどん大きくなるネコポニー。
僕は動かしにくい体を動かしてネコポニーを撫でたり、一緒に寝たりした。
でもネコポニーは僕を食べない。
いつからか考えることもめんどくさくなった。
ネコポニーは心配そうな顔をして僕を見てる。

ぼくはねむたくてねむたくて、いちにちじゅうねていることがおおくなった。
ほんとうにねむいんだ。うごくことも、たべることも、うたうことも、あそぶことも。
ぜんぶ、ぜんぶ、しんどくなっちゃう。
もう、このままねよう。
ぜんぶ、ねよう。
そうすれば、ねこぽにーはぼくをたべて、まんぞくしてどこかすきなところへいくよね?
それでいいとおもう。
それがいいとおもう。

きもちいい。
いしきだけがはねをはやして、とんでいっちゃいそうだよ。
これがいちばんきもちいい。
これがずっとつづけばいいのに。

眠くなる僕は、気付いた。
ネコポニーが血を流してうずくまってる。

四つん這いで僕は近寄りネコポニーに話しかける。

「どうしたの?」
「ちがながれてるよ?」
「いたいでしょ?」
「びょういんにいこうよ」
「いっしょにいってあげるよ」
「ちゅうしゃがこわくたって、ぼくがよこにいてあげるから、だいじょうぶだよ」
「きみがいたそうなのは、ぼくもみていられないんだ」
「ぼくもいたくなっちゃう」

「オレハ、オマエ、ナンダヨ」

「え?」


その瞬間、視界が広がった。


僕は知らない天井を見上げて、腕にはいっぱいの管が繋がれていた。

混乱の中、僕はまた深い眠りに落ちた。


「ねえ、ねこぽにー?どうしてぼくはあんなにくだにつながれているのかな?」
「ぼくにはわからないよ」
「おしえて?」
「なんだかなみだがとまらないんだ」
「だれかにだきしめてほしいんだ」
「ぼくはしぬのかな」
「きゅうにさみしくてしかたなくなっちゃった」
「もうぼくをたべてよ」

これだけ言うと、ネコポニーは話し始めました。

「オレハ、オマエナンダヨ」
「オレガ、オオキインジャナイ」
「オマエガ、チイサクナッタンダ」
「オレガ、ナガシテイタ、チハ、オマエンダ」
「オマエジシンノ、チダ」
「オレノコトヲ、シンパイシナクテイイ」
「オレハオマエダ」
「ダカラ、生きろ」

最後の「生きろ」と言う時のネコポニーの眼光は凄く迫力があって、でも暖かくて、優しくて、泣きそうだった。

そこからネコポニーと何度も話し合った。

僕は自分の中にいるネコポニーと何度も話し合った。

子供の頃に負った、心のキズ、周りに気を使って、自分を出せなくてそのまま大人になって、周りに合わせることばかり考えてた自分。
身の周りに起こる悪い出来事は全部自分のせいだと思ってた。

どんどんどんどん自分の殻は、ぶ厚くなる。

だからネコポニーと一緒に、その殻の層を1枚1枚丁寧に剥がしていった。

僕はどんどん、自分らしさが分かって、楽しくなってきたんだ。

自分を知っていくのが楽しい。

僕は僕だ。僕だけだ。僕が僕の真ん中だ。

大きくなった僕の後ろを見たら、大きくなった僕のせいで大きな影が出来て、うしろが見えにくくなって見るのもめんどくさくなったから、前を向いてみたんだ。
するとどうだろう。
眩しくて、キラキラしてて、楽しくて、ウキウキして、今にも空を飛べそうな、そんな翼が生えた気がしたんだ。
僕の見えてる世界はとても好きだ。
これからどんな景色が見えるのかも楽しみだ。
僕が僕で見るのが楽しみ。

ネコポニーはどんどんどんどん小さくなっていく。

自分で自分を知れば、認めていけばいくほど、ネコポニーは小さくなって、ゴロゴロ言って、気持ち良さそうに寝るだけになっていった。

僕は、気付けば管が取れて、変な薬を飲む事も無くなった。
今となってはなんでそうなったのかも思い出せない。
多分、些細なことだったんだろう。

でも大事なことを思い出したきっかけであるっていうことは分かる。

ネコポニーはあれ以来、姿も見えない。


だから、今からその物語を描いていこう。


みんなのネコポニーはどんなの?


おおきいかな?ちいさいかな?


こわがらずにはなしてごらん?


だいじょうぶ。


かまないよ?


ネコポニーがお腹を減らして、飢えているみたいだったら、それはお腹が減ってるんじゃないよ。


「愛」に飢えているんだ。

だからいっぱい、自分とネコポニーを愛してあげるんだ。

ネコポニーは僕で、僕は僕なんだ。

キミもキミなんだ。


みんな、みんななんだ。

命なんだ。

そこに違いは無いよ。

自分のことを愛してあげて?

気付くのが遅いと、何もかもが遅くなるから、その前に。ね?

みんな、みんな、大切な命で、ひとつしかないんだよ。


生きるのは、奇跡だからね。

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