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私が息子に嫌いな教科も勉強しとけと伝えた訳

昨日の「AIの奴隷になるのか?AIを使いこなす方になるのか?」って記事で、苦手だからってむやみに取捨選択して学びの幅を狭めないほうがいいよ、ってことを書いたので、それに関連して私が息子が高校生だったときに伝えたことを綴ってみたいと思う。

私の息子は、小さい頃から科学が大好きで、小学生の時から大学は理工系に行くと決めていた。今は工学部の大学院に通っている。

でも、科学は好きなんだけど偏りが酷すぎた。息子は小学生の頃から化学と物理は大好物で大得意。もしかしたら母親よりも三度の飯よりも好きかもしれない、って感じだった。

小学生の時に、国の物理系の研究所に一般公開で行ったときに、その研究所で作ったという漫画の冊子をもらってきた。

宇宙物理学の分野をわかりやすく解説、って漫画なんだけど、文系人間の私には子ども向けにかみ砕かれているはずのその内容もまったくチンプンカンプンで頭に入ってこない。

でも、物理大好きな息子は喜々として読み込んで、タラタラ長ったらしく博士が語る解説をあっという間に丸暗記してしまった。

細かい文字で10行以上の長台詞をいくつも丸暗記して、物理が苦手で嫌いだとわかっている私の耳元で得意げに語ってみせる。本当にムカつくやつ。

だけど、理科が大得意で大好きなはずの息子だけど、逆に、生物と地学は大嫌い。虫や植物、星の授業なんかもう絶対にやりたくない、って感じだった。

中学までは同じ「理科」って教科でくくられているのに、通知表の「興味・関心」ってとこの評価が化学・物理分野と生物・地学分野で微妙に違う。成績は良いのに、生物と地学分野は先生から見ても全然興味がないのがわかったようだ。

そんな息子が、高校生の時にブーたれていたことがあった。大学入試で使わないのに、必修として生物基礎の単位を取らなければいけないという。

必要ないのに、生物嫌いなのに、どうしてオレが人体のことやらなきゃいけないんだよ、って感じだったようだ。

思わず私は言ってしまった。
「もしも、あんたが工学部を出てエンジニアになって、医療機器の開発を頼まれたときに、生物の基礎がなくてできるの?」

息子は
「あっ、………」
って感じで一瞬止まった。

「宇宙ロケットや土木関連機器の開発なら、星や地面のことを勉強する地学は必須だし、途上国のインフラ開発なんてことに携わるなら、その国の歴史的背景や地理的条件の理解も必要だから、世界史や地理も大切じゃん。高校の勉強に無駄なことなんてないんじゃない?」

工学なんてのは、人々の暮らしに必要なモノや機械を作る分野で、その暮らしっていうのは、物理と化学、数学だけに限らない人の生活や活動全般に及ぶんだから、幅広い教養がないと良いものを開発することはできないんだよ、って私は伝えたかった。

息子は納得したのかどうかわからないし、嫌いなものは嫌いで、嫌々渋々だったようだが、それから嫌いな教科の授業にもブーたれなくなったし、大学に入ってからもリベラルアーツの授業も手を抜かずに受けているようだ。

まあ、大学のリベラルアーツは興味のある授業を選べるから、楽しんでいるようだけどね。

私自身、勝手な思い込みでたくさん取捨選択し過ぎたら、気がついたらとっても知識が偏っていて、その後たくさん苦労しているから、息子にはそうなってほしくなかったんだけどね。

人の脳の発達では、無意味な詰め込みがきくのが18歳から20歳までで、20歳を過ぎたら、それまでに詰め込んだ知識に意味を持たせて結合させて知恵に昇華させていく段階に入ると何処かで読んだことがある。

20歳までに詰め込んだ知識量が少なすぎると、結合させる種が少なくて、生み出せる知恵が狭くて浅いってことになりかねない。

受験に関係するから、自分が好きだから、嫌いだから、ってだけで学びを取捨選択せずに、若い人はできる限り勉強できるときに、たくさん勉強しておいたほうが、その後に生み出せる知恵の幅が広がるんじゃないかと、今の私は考えている。

(ただし、発達障害など、どうしても興味が持てる分野にしか集中できない、っていうタイプの人もいる。そういう人はそういう特性をとことん追求していけばいいとも思う。)


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