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個性や独創性なんて本当はないんじゃないかと思うって話

最近、Audibleで養老孟司さんのこちらの講演聴いたんだけど、これを聴いたら、子ども達に個性や独創性を求めるのは酷じゃないかと思ったんだよね。

養老さんはこの中で、頭の中が個性的な人たちっていうのは精神科の医療の対象になる人だ、若い人たちに個性や独創性を求めたって、経験が浅いんだから他の人との違いなんか見つけられる訳がない、って語っている。

それなのに、今の学校教育では、個性を伸ばそう、独創性を伸ばそうとやっていると。

そんな話を聴いて、今の日本の矛盾って、一人ひとりの独自性と人権の大切さと、個性や独自性ってものがごっちゃになり過ぎているところにあるような気がしてきた。

今の子どもたちは、まだ経験が浅くてネタも持っていないから見つけようがないのに、個性を発揮しろと子供の頃からせっつかれる、それなのに、一人ひとりが生まれながらに持っているかけがえのない個人としての人権は重視されていない。

自分は自分自身でしかないということを周りから認めて心底肯定してもらえないのに、独自性が必要だと言われる。

それで、独自な行動を学校や社会で取ってみても、システムや社会のレールからちょっとでも外れると、社会の仕組みから爪弾きにされてしまう。

だから、個性的であるように振る舞いつつも、周りと同調せざるを得なくて、そこにハマれない子どもたちの不登校や、大人の引きこもりが増えているのではないだろうか。

個性ってなんだろう、独自性ってなんだろう、ってかなり色々と考えたことがあったけど、全くゼロから新しいものを生み出すことはできない。

言葉は、日本語なら一番大きな辞書と言われている「日本国語大辞典」に載っている言葉の範囲内でしか私達が使える言葉はない。

毎年のように新しく生み出される流行語のたぐいも多少はあるが、おそらくこの辞典に載っていない言葉を誰かが作り出しても、運良く流行に乗れなければ、その話は他の人には通じないだろう。

私たちは、最も個性的な表現であるとされる小説や詩、歌の歌詞だって、99%は「日本国語大辞典」に載っている言葉で組み立てるしかないはずだ。

メイクやファッションだって、ほとんどの人がゼロから自分で化粧品や洋服、アクセサリーを作り出すわけじゃない。すでに誰かが作った化粧品を使ってメイクをして、買ってきたアイテムを組み合わせるはずだ。

時々天才的なデザイナーが現れて、それまでになかったファッションを作り出すことはあるけど。それだって、トップス、スカート、ズボンの型から外れて作ることはないはずだ。服は人間の体型に合わせる、という制約があるから。

化粧品やアイテムの使い方も、それぞれの使い方に沿った型でしか使えない。もしも、アイシャドウをほっぺたに塗ったり、ネックレスを頭の上に乗っける人がいても、個性的なって感じる人よりは、ちょっと変な人、って思う人のほうが多いことだろう。

つまり、言葉やファッションなどの個性的な表現は、今あるものの組み合わせでしかない、ってことだ。

しかも、今あるものを、今決められた使い方やルールに沿って使うことも求められる。

学術分野だって、科学は先人たちの積み重ねの上に新しい発見がなされるものだし、人文系も先人が積み重ねてきた業績に基づいて独自見解を出さなければ、単なる独り言としかみてもらえない。

だから、個性、個性っていくら言っても、私たちは限られた枠の中でしか、個性を作り出すことはできないってことだ。

でも、限られた枠の中でも、その組み合わせは無限に作り出すことができる。「日本国語大辞典」には50万項目も掲載されているそうだから、この言葉を縦横無尽に組み合わせたら、無限の表現ができるだろう。

ただ、もしも言葉を縦横無尽に組み合わせて無限の表現を生み出したくても、言葉そのものを表現者が知らなければ、表現を生み出すことはできない。

昨日noteで書いた、「私が息子に嫌いな教科も勉強しとけと伝えた訳」で、自分勝手に取捨選択して学びの幅を狭めないようにと伝えた。

どんな分野であれ、個性的で独自性の高い表現が、今あるものの組み合わせで生まれるのだとしたら、ある程度、頭の中には詰め込めるうちに詰め込んでおいたほうが、将来的な独自性を発揮できるネタを増やせるような気がするのだが、いかがだろうか。

もちろん、それは学校の勉強とは限らないだろう。ファッションが好きな子は徹底的にファッション追求したっていいかもしれないし、虫のことを追求したっていいと思う。

ただ、頭の中のネタは多ければ多いほど、将来的に組み合わせられる数が多くなり、個性や独自性をより発揮できる可能性が高まるだろう。

また、違う分野との組み合わせが、意外な効果を呼ぶこともある。やっぱり、大人になってから学びの大切さに気がつくことは多いから、学生時代は勉強できるうちに勉強しておいたほうが良いと、おばちゃんは思う。

おっと、気がついたら「一人ひとりの独自性と人権の大切さ」って書いたことを深められていなかった。また、この部分に関しては機会があれば書いてみたい。

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