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地球の未来を守るグリーン・リカバリー

 世界中に深刻な打撃を与えた新型コロナウイルス感染症。コロナ禍からの回復に向けて、いま国際的な気運として高まっているのが「グリーン・リカバリー」と呼ばれる考え方だ。直訳すれば「緑の復興」だが、グリーンが意味するのは森林などの自然だけではない。「環境に配慮した取り組み全般を指し、エネルギーや交通、廃棄物など、幅広い領域を網羅します」と説くのは、国内外の環境開発協力に携わる海外環境協力センター(OECC)の理事長だ。政策としての取り組みの発端は、コロナ禍以前の欧米にさかのぼるという。アメリカではオバマ政権時に、ヨーロッパでは2019年のEU新体制発足時に、環境保全に焦点を当てた経済発展を目指す「グリーン・ニューディール」を提唱。この施策がコロナ禍を経て、「グリーン・リカバリー」へと進化した。コロナ禍で人や物の移動が制限されるなかで分散型社会を目指す動きが高まり、リモートワークや地域密着型の再生可能エネルギーなどが推進された。その影響か、経済的打撃は深刻であるものの、世界中で大気汚染の減少が報告されている。だからこそ、「コロナ以前と同じ姿に戻るのではなく、環境問題にさらに積極的に取り組みながら経済復興を目指そう」というのがグリーン・リカバリーのコンセプトであり、日本を含め多くの国が実施に向けて動き始めている。
 

 環境問題の代表格が気候変動だ。地球温暖化の原因とされる温室効果ガス割減のために、従業も対策が行われてきたが、世界的にこの動きが加速。各国が脱炭素社会の実現に向けて高い目標を掲け、再生可能エネルギーへの転慶をはじめとした政策を推し進めている。

 急速に失われつつある生物多様性の問題も深刻だ。気候変動や環境汚染、乱開発により種の絶滅が進み、生態系のバランスは大きく崩れた。野生生物の生息地が奪われて人間との接点が多くなると、感染症のリスクも増大する。コロナ禍は、生態系からの重大なメッセージだという識者の指摘も重く受け止めたい。生物多様性は防災面からも重要であり、堤防など構造物に加えて、台風や津波による影響を軽減するマングローブ林を保全するといった、自然に根ざした解決策が注目されている。こうした地球環境への配慮とともに、持続可能な発展を目指すというのがグリーン・リカバリーのポイントだ。

 行き過ぎた開発による環境破壊から教訓を得て、2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)に基づいた、節度のある経済活動が求められている。ます」と竹本さんは言う。SDGsへの対応をコストととらえるのではなく、ビジネスチャンスとして活用する傾向が顕著だ。金融界でも、環境や社会問題に積極的に取り組む企業を支援する「ESG”投融資」(ESGとは環境(environment)、社会(society)、ガバナンス(Governance)のことで、投融資を行う際に従来の財務情報だけではなく、この3つの視点から企業などを評価、選別、監視していく、新しいと融資の考え方)が拡大、SDGsを戦略に取り入れる企業も増えている。
 ただし、世界的に見ると、途上国のグリーン・リカバリーはハードルが高い。不足している経済・社会インフラを整えながら。グリーン成長(自然遺産が、人間の健全で幸福な生活のよりどころとなる資源と環境サービスを提供し続けることを確保し、経済成長及び開発を促進していくこと)を目指さなくてはならないからだ。技術を提供するだけでなく、その国の状況に合わせて一緒に知恵を出し合い、より良い解決策を導くことが大切だ。そのためには、世界が同じ方向を目指して協力し合っていくことで、グリーン・リカバリーの実現が可能になるのだろう。

 新型コロナウイルス感染症は地球上のあらゆる国と地域で日常生活を一変させたが、地球と人間の未来についてあらためて考えるきっかけも与えてくれた。そこで大きな注目を浴びているのが「グリーン・リカバリー」だ。
コロナ禍からの経済的な回復だけを目指すのではなく、気候変動に対応しつつ持続可能な社会づくりを進めることが喫緊にして最重要の課題だ。

 問題は現在各国の社会を動かしている政治家や企業家が、未来の世代のことを真剣に考えて動いてくれるかどうかだ。

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