見出し画像

ちはやぶる…

ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは
                           在原業平
〈現代語訳〉
 神々の時代にさえ聞いたことがない、こんな風に竜田川一面に紅葉が散り敷かれ、流れる水を真紅に絞り染めしているなどということは。

 作者の在原業平は、天長2(825年)年に生まれ、平安時代初期から前期の貴族であり歌人だ。和歌の名人の六歌仙、三十六歌仙の一人で、美男子として知られ、『伊勢物語』の主人公は、在原業平がモデルだったと考えられている。

 この「ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」という和歌は、二条后(清和天皇の女御である藤原高子)の前で披露され、捧げられた作品で、『小倉百人一首』の他、『古今和歌集』『伊勢物語』に収録されている。在原業平と藤原高子とされる男女が駆け落ちをする恋物語が『伊勢物語』に収録されていることから、この二人はかつて恋人関係にあったと言われている。

 藤原高子は、当時力を持っていた藤原氏の娘で、清和天皇と結婚することが予定されていたことから、在原業平との恋愛は許されぬ恋であり、二人は駆け落ちを決意した。しかし、駆け落ちは途中で失敗し、高子が連れ戻されてしまったと言われている。

ここから先は

1,707字

¥ 390

私の記事を読んでくださり、心から感謝申し上げます。とても励みになります。いただいたサポートは私の創作活動の一助として大切に使わせていただくつもりです。 これからも応援よろしくお願いいたします。