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NewJeansの展開を1日ごとに紐解いてみた(物語の力をどう作用させるか)

BTSのHYBEから第二弾ガールズグループとしてデビューしたNewJeansは、デビュー後もロングテールで盛り上がりが継続していきます。
これは楽曲、ファッション、それらの根底にあるコンセプトと、それを実現するメンバー含めたチームの能力によるものと言えます。

「大衆音楽は日常ととても近接している文化であるため、まるで毎日着る服のようだ。特に、ジーンズ(Jeans)は時代を問わず老若男女、みんなに愛されてきたアイテムだ。 NewJeansには日々愛用し、いつ着ても飽きないジーンズのように、時代のアイコンになるという抱負とNew Genesになるという覚悟が込められている」

https://marieclairejapon.com/culture/69708/
当時日本ではSPEEDみたいなんて言われてたりもしました

各種記事によると、デビューにかかったコストは160億ウォン(16.5億円)。
決して潤沢な予算ではありませんが、その中で大きな成功を果たしました。

そしてその半年後、NewJeansは「OMG」というシングルのリリースによって大きく飛躍します。
おそらく潤沢な資金を手に入れ、本当にやりたいことをやりきった初のタイミングはここなのではないかと思います。

その後HYBEからデビューしたILLITには1500億ウォン(165億円)を投資しているとのことなので、おそらくOMGの時期のNewJeansも同等のコストが投下されていることでしょう。

が、どのコンテンツもそうであるように、お金をかければ成功するというわけではありません。そこには綿密に組み立てられた情報展開スケジュールと、物語の力がありました。


はじめに:NewJeansの成果を俯瞰的に捉える

Jeans = 日常服として毎日着るように。
日々愛用して、飽きることのないジーンズのようにというコンセプト。

そんなNewJeansの飛躍は、競合と比較してどんな感じになっているでしょう。Google Trendsで見てみましょう。

横比較して相対的な肌感得やすいようにYOASOBIも並べてみてます(YOASOBIもすごい)

青のラインがNewJeansです。
デビュー期において、HYBE第一弾ガールズグループのLE SSERAFIMと同等インパクトと、そこからのロングテール化に成功しているのが見て取れるかと思います。

が、本当にすごいのはその半年後、デビューの2倍近くの大きな山を作っているところです。

2022年末から2023年初にかけての山がすごい

コンテンツを運用している人は、この山がどれだけすごいことを達成しているのかが分かるかと思います。
リリースから半年後に、リリースを超える(それも2倍!)山を作るというのは大変な偉業なのです。

この秘密を解き明かすべく、2022年末から2023年初にかけてのリリースプランを紐解いてみようというのが、この記事の目的です。


本題に入る前に、いくつか事前注意書きを

  • 自分の職業はゲームプロデュース&ディレクションなので、その目線での気づきが多い記事になっていると思います(情報出しの順番がどうあるべきか、ティザーでは何を伝えるべきか、そこからどれくらいの期間を置いて次の情報出しをするべきか、コンテンツにとって物語性はどういう価値があるのか等)

  • リアルタイムに動きを見ていたわけではないので肌感覚が薄い部分がありますので、その点はご了承いただければと思います。あとすごく好きかと言うと、ヘインとヘリンの名前を間違えるくらいの「好き」なので、ファン目線で失礼な発言があったら本当にごめんなさい。

  • 音楽もすごく好きですが、フォーカスポイントがズレるので音楽ジャンルについては語りません。

  • ここからこの記事ではNewJeansを徹底的に褒め称えるわけですが、現時点でK-POPにおける唯一の圧倒的な存在というわけではないです(個人的には圧倒的に好きですがそれはそれとして)。相対感を意識しておかないとただのオタクトークになってしまうので、先行するBLACKPINKやBTSとの比較も乗せておきます。

BLACKPINKとの相対感(さすがBLACKPINKは強い)
BTSとの相対感(兵役で減衰してなお、さらに王者)

前置きが長くなりましたが、この前提を踏まえた上で「OMG」のリリースに関してスケジュールを追っていければと思います。


ティザー期

2022/12/12 : 情報出しスケジュールの事前告知

@newjeans_official

NewJeansは情報出しを行う前に、いつ、何がリリースされる予定なのかを事前に告知します。このときは、

  • 次のシングルが「OMG」であること

  • B面のDittoが2022/12/12の午後6時に

  • A面のOMGが2023/1/2の午後6時に公開されること

が告知されています。

投稿にくっついている画像は短尺のムービーになっていて「大事な情報だよ」が伝わるようになっています(モーションポスターと言うらしい)。

また、このキャンペーン全体に「NewJeans of Winter」という名前が付いていて、この時点でOMG/Ditto/本キャンペーンのハッシュタグが告知されているのも重要なポイントです。


同日 : リマインドを畳み掛ける

@newjeans_official

情報のリマインドと共に、歌詞の一部が告知されます。
こちらもムービーとして動いていて、コトの重大さが伝わるようになっています。

@newjeans_official

ちょっとだけ違うムービーを使ってのリマインド。

@newjeans_official

こちらもムービーで、日付と時間入り。

@newjeans_official

これはさっきの絵がカラーになりつつ、カードがくるくる回るムービーです。

コメントではPackshot(物理メディア+写真、メッセージカード、ボイスメッセージが含まれるもの)のリリース日が2022/12/20であることも告知されています。

裏面はこんな感じになってます。

一緒に過ごすはじめての冬、からはじまる手書きのメッセージ

ここまでで特筆すべきポイントはふたつ。

  • そこそこ手間をかけてデザインしたモーションポスターを、1日に5つも投下することで情報を拡散させていること。

  • 翌日12/13には何の情報公開もなく、その翌日12/14にティザームービーが公開されるのですが、12/13の間を埋めようという発想はなく、とにかく投下密度を上げることで熱量が逃げないようにしていること。

総コスト16億円くらいだと、こういうところまでコストが回りきらない、150億円くらいあると隅々までコストが回りきる、というのは肌感覚としてよくわかります。
コストをかけるのは意識面でも大事ですね。

でも、自分だったら1日ずつカウントダウンしようって言っちゃうなあ……。こういう考え方って大事だなあ、という改めての学びです。
持っている手段をどう使って、いかに熱量を作っていくかが大事なんですよね。焚き火を大きくしたかったら、等間隔で薪をくべたりはしない。

唯一ニュースサイトにアーティストとMV監督の紹介が
12/13の朝のニュースリリースかと思われます

またこの力の入れようから、LE SSERAFIMと並ぶ結果だった前回に満足することなく、絶対に一段キャズムを超えてやるという制作側の熱量をヒシヒシと感じます。


2022/12/14 : ティザーMV「NewJeans (뉴진스) 6」の公開

12/12から1日をおいて、12/14に20秒のティザーが公開されます。

HYBEは、HYBEという親会社があって、その下に子会社がいくつかあるという構成になっています(NewJeansの会社はADORという名前)。

NewJeansのYoutubeチャンネルもあるのですが、HYBEも「HYBE LABELS」というYoutubeチャンネルを持っていて、大きな情報はこのチャンネルに上がるような整理になっています。

  • 子会社/グループごとの独立性を担保しつつも

  • チャンネル登録者数は親会社の「HYBE LABELS」に溜めることで、HYBE自体のブランド価値を上げる

という方針なんじゃないかなと思います(うまい)。


それにしても、このティザーが本当に素晴らしいのでぜひ見てほしいです。

曲はコードとハミング、それから最後に少しビートが乗るくらい。メンバーの衣装と、舞台も学校であることがわかるくらい。

限りなく情報を絞っているにも関わらず、思わず涙が滲んでしまう。
それは、全世界の人に共通の感情を刺激しているからなんじゃないかと思います。

NewJeansはこの「Ditto」という曲の物語性をきっかけとして、大きく跳ねたんじゃないかと思っています。

いま学生の人たちも、かつて学生だった人たちも、青春というのが永遠に続くわけではないと知っている。
そしてその時間は、いつか失われるものだからこそ、切なく尊い。

ガールズグループもまた同じで、いつか失われるものである。
いまの輝きは、いまにしか存在しない。
だから目撃したくなるし、失われないでほしいと強く祈りたくなる。

この「いつか失われるものだからこそ、切なく尊い」というのが「Ditto」のコンセプトで、それが世界中に刺さっているんじゃないかと思っています。

その「物語性」についても、展開スケジュールと共に追っていきましょう。


2022/12/15 : プロモーションカレンダーの公開

ティザーMVの翌日、OMGのプロモーションカレンダーが公開されます。
期待感を積みに積んでいく……!(これもモーションポスターです)

@newjeans_official
  • 12/19:Dittoのリリース [既出情報]

  • 12/21:ホリデースペシャル(メンバーの動画公開)

  • 12/23:ポップアップストア(後に公開されますがNUDAKEとのコラボ)

  • 01/02(5PM):カウントダウンライブ

  • 01/02(6PM):OMGリリース [既出情報]

@newjeans_official

その後、同日にNUDAKEとのコラボが発表されます。
オニワッサンという、おにぎり型のクロワッサンで有名なスイーツショップです。


2022/12/16,17 : NUDAKEコラボ情報投下

インスタには12/16に2投稿、12/17にグッズ情報も含めた3投稿がありました。

@newjeans_official

大きなの展開とコラボのタイミングを合わせて情報を大きくしていくというのは常套手段ですが、こういった基本もきちんとやっている。

そして、12/18は情報なし。
翌日にDittoのリリースを控えた状態で1日開けるというのは、Dittoティザーリリース前にもやっていることなので、おそらく意図的なんじゃないかと思います。

大きな火を起こす直前に、一度凪を作ることで、期待感を逆に高める。
よくわかるなあ(でもなかなかこの勇気が持てないなあ)。


Dittoリリース期

2022/12/19 : MV公開 + デジタルリリース

DittoのMVは、SideAとSideBの2本が同時に公開されます。
ぜひ実際に見てほしいのですが、時間がない方もいらっしゃると思うので、冒頭だけあらすじを記載します。

物語は、とある部屋からはじまる。
古ぼけた段ボール箱を開くひとりの女性。古いビデオテープを取り出し、デッキにセットすると、そこには5人の少女たちが映し出される。

ノイズのかかった4:3の画面。ビデオカメラに向かって「ヒス」と呼びかける少女たち。このビデオを撮っているのは(そして今見ている女性は)、ヒスという名前であることがわかる。
今はない、いつかあった、ノスタルジックな映像が続く。

踊る5人の少女の躍動感と共に、画面は16:9に。
体育館、バスケ部が練習している中で、ダンスしている5人相手にビデオを回すヒス。

そんな彼女のビデオカメラが、5人の後ろにいる、ひとりの男性を捉える。
思わず撮ってしまう。男性がこっちを見たことに気づき、思わずカメラを逸らす。

シーンは変わって学校の水飲み場。
カメラを置いて、水を飲むヒス。そこに近づいてくる男性。

このあとカットが変わって、ようやく曲がはじまります
向かいで水を飲む男性
ヒスのまばたき
カット変わって去っていく男性。ヒス主観の映像は映されず……
見たかった、と思った直後にこのカット。恋に落ちた瞬間。
リズムに合わせてもう一度引きカット
ヒスの感情が示される1カットが挟まり、歌へ

この「恋に落ちた瞬間」のカット割りと構図がとにかく美しい。
そして、この美しさがMV2本を引っ張っていく「いつか失われるものだからこそ、切なく尊い」という感情の根本になります。

そこからMVは、NewJeansの5人と、それを撮影するヒスの日常を中心に進んでいきます。
そして、その中に挟まってくる、男性への恋愛感情。

これらが4:3の映像と16:9の映像を自在に行き来しながら瑞々しく描かれるのがSideAの内容となっています。

屋上でダンスシーンの撮影(振りをミスったところが使われているとか)
教室の中、踊る5人を撮影するヒス
6人仲良くお昼寝

が……
曲の最後に映し出される風景は少し不穏で……

いつのまにかひとりになっているヒス
画面が急にシネスコサイズになると
誰もいない教室でひとりビデオカメラを回しているヒス
屋上で笑顔で撮影をするヒス
でも、そこには誰もいない……
Music Video Director: Wooseok Shin (DOLPHINERS FILM)

どういうこと!?
という疑問が明かされるのがSideB、という構成になっています。

今からでもぜひMVを見てほしいのですが、ざっくり解題してしまいますと、全体としてこんな感じの内容になっています。

  • 主人公の名前は「バン・ヒス」=「Bunnies(NewJeansのファンネーム)」から引用されており、この少女はファンのメタファー

  • 推しといるから毎日楽しい! クラスメイトの誰とも共有できなくたって、毎日が輝く

  • でも恋だってする。次第に推しと離れて、自分の人生を歩みだす

  • そんな昔を懐かしんで思い出に浸ると、NewJeansはいつだって瑞々しい思い出として蘇る

このように、アイドルとファンの関係性について、正面からメタ的に捉えたMVを投下することで、「いつか失われるものだからこそ、切なく尊い」というコンセプトが伝わっていきます。

同時にWinterキャンペーンのホームページがオープン。

ビデオカメラと同じ世代感のPC

曲に乗せてガールズグループらしい楽しげな動画も投稿するよ!

でも、あのMVを見たあとだと、この映像すら切なく思えてしまう

2022/12/20 : PackShotのヴィジュアル公開

この日は他にメンバーの動画投稿などあり
インスタでゲームがプレイできたみたいです

2022/12/21 : ホリデースペシャル

という名の、事務所で撮った感のある普通の動画
同日、ヴィトンに身を包んだヘインの写真が投稿されています
ヴィトンのアンバサダーへの抜擢が発表されたのが12/30なので、匂わせかなと思います

2022/12/22 : ムシンサとのコラボ発表

韓国のファッションストアです。コラボをめっちゃ積んでくる…!
他にもメンバーの動画投稿がありますが、曲はとにかくDittoです。
同日にホリデートークpart1という動画が公開されています
(これがホリデースペシャルだったけど、事前予告した21日に編集が間に合わなかったのかもしれない)

2022/12/23 : MVリアクション動画公開

メンバー初見のリアクションを撮影しておいて、MV公開から4日後に投稿

2022/12/24〜 : 音楽番組出演など

24日。2022 SBS歌謡大祭典というらしいです
対外露出がどこにあるかも、前後含めて計算されてます
同日24日に、みんなでDittoを聴く動画が公開
26日にカウントダウン生放送の詳細
27日にはホリデートークのパート2が公開
28日にはダンス動画の撮影シーンを投稿


2022/12/30 : パフォーマンスビデオの公開

12/19のMVが本番かと思いきや、実は1.4億再生(2024/5/13現在)と、最も再生数を稼いでいるのはこちらのパフォーマンスビデオです。

これは、パフォーマンスビデオという名前にこそなっていますが、もはや3つ目のMVと言えるクオリティに仕上がっています。

眠ってる5人からはじまり、眠りにつく5人で終わる振りつけ。
MVの世界観を引きつぐセットになっていて、いつか失われる切なさのことを思わずにはいられません。

次の動画のレコメンド画面すらエモい

再生数が突出しているので、webプロモはこの動画に対して当てられているのかなと推測します。

12/19にDittoのMVをリリースしてから長期に盛り上げる計画を立てながらも、webプロモのピークは12/30にすることで、1/2のOMGリリース(実際に広告が踏まれているであろう動画は1/3にリリースされているパフォーマンスビデオですが)に近づけているのではないでしょうか。

いっときに集約して踏み抜くことで、キャズムを突破しようとした。
そのためのスケジューリングなのではないかと思います。

さらに、ここをもうひとつの山にすべく、大きなニュースとタイミングをあわせています。それがこちら。

ニュースや検索行動が捗るときに広告を当てると、総合的に伸びる

2022/12/31 : パフォーマンスビデオのメンバーver.とFIX映像公開

引きのカメラ映像と、メンバー5人分の寄り映像が同時公開
みんなで踊ってね、というやつですね
翌日1/1には新年のごあいさつが複数


OMGリリース期

2023/1/2 :カウントダウン生放送の実施

リリース直前に1時間の生放送を実施、直後にリリースの流れ
意地でもチャートを押し上げるぞという気迫を感じます
結果にもちゃんとつながっている

そして、OMGのリリースへ。
勝負のときがやってきます。


同日 :OMGリリース

OMGのMVはSideA / Bではなく1本でのリリース。
Dittoの内容でメタ目線に踏み込んでザワザワさせただけに、その内容にも注目が集まっています。

そんな中でどんなコンテンツを投げかけてくるのか。
その答えは、だいぶ想像の斜め上を行っていました。

舞台は精神病棟。5人はグループワーク中
私はiPhoneだと言うメンバーのひとり(ハニ)

私はあなたのために存在しています。
あなたが呼び出せば、いつでも応えます。
あなたが見たいものを見せてあげて、あなたのために喋って、あなたのために歌います。

あなたが私に望むものはなんですか?
私の頭の中はいつもこの質問でいっぱいです。
(ヒス、電話に出てよという走り書きをするハニ)

今まで悩んでいたのが恥ずかしくなりました。
もう私が誰かは重要じゃありません。

私はあなたのために存在しています。

OMG MVよりハニのセリフ引用
質問にハニは、機械音声で「はい、そうです」と応える
そして曲がはじまります

言わずもがな「ガールズグループはiPhoneのようなものだ」と言っています。そういう存在でしょう? と。

MVの中では、踊る5人の様々な妄想を見せられます。
たとえば「猫っぽい」と言われているメンバーは、本当に自分が猫だと思っている(ちゅーる食べてる)

ルイ・ヴィトンのアンバサダーに抜擢されたことが発表されたばかりのヘインは、自分をお姫様だと勘違いしている。

ひとりは自分を医者だと勘違いしていて、これがまた怖い
自分たちはNewJeansだと言い張るひとも
これが妄想のようにも思えてくるというメタ展開
監督も登場(本人みたいです)

精神病院で踊る5人。
その姿は美しくも、どこか狂気じみている。

歌詞が怖い

シーンの中にはDittoの舞台も差し挟まれます。
ヒスが撮影する中で、OMGを踊っている5人。

これすらも妄想? このシーンが挟まるだけで泣ける

曲が終わると最後、デビューからここまでのNewJeansの軌跡が、映像がラッシュで流されます。
まるでデビューからのすべてが妄想だと言わんばかりの演出のあと、病棟に帰っていく5人。

残されていた落書きのノート
それを医者が手にとって、ふと窓の外を見ると……
現実に落書きが飛び出してきている
アイドルとは言わば、妄想に過ぎないし
それが現実に影響を与えてるって、つまりこういうことなのかもしれません

このあとスタッフロールが流れるのですが、スタッフロールが終わるともう1シーンだけ挟まれます。

SNSに書き込むファン。自分で言うのもなんだけど消滅都市っぽいですね
監督は1982年生まれなので、そういう世代なのかもしれません
精神病棟に? それとも……


2023/1/3〜 :パフォーマンスビデオのリリースとその後

今回は、前回とは違い翌日に投稿。
NewJeansのチャンネルではなく、HYBE LABELSのチャンネルに上がっています。

前回MVよりパフォーマンスビデオの方でPVを稼いだので、リアルタイムで方針を転換したように思われます(あるいは親会社に怒られたか)。
2.4億再生(2024/5/13現在)。広告の流し込み先もこっちな気がします。

Dittoのパフォーマンスビデオが12/30に投稿されているので、広告目線だけ考えると、1日でもはやくこのパフォーマンスビデオを公開したかったんじゃないかなと思います。

が、MVより1日遅らせているというのは、扱っている金額規模からすると相当に大きな決断なはずで、でもそこまでして物語を先に出すんだという考え方には、非常に共感すると同時に恐ろしさを感じます。

また、パフォーマンスビデオはもうひとつ同時公開されています。

こちらはDittoのヒスが撮ったバージョン。

シーンを変えて踊ってるだけなのですが、これだけで泣けます。

その後の展開として、大きなところではこういったものがありました。

1/5にMacのPhotoBoothでスキンが配られた模様
1/6にはダニエルがバーバリーのアンバサダーに
すごいことだ
同日1/6にはダンス練習動画が投稿され
1/8にはDittoと同じスタジオで撮られたOMGのダンス動画を投稿
1/9以降、各種MV等のメイキングが順次投稿されていきます

2024年の2月には、SpotifyでOMGが6億ストリーミングを突破したとのことです。

Dittoも5億ストリーミング突破のニュースがありました

まとめ : 物語を軸に火を付ける

ここまで時系列で流れをたどった上で、逆算して考えてみると

  • 曲と歌詞を作ってレコーディングする

  • 振り付けを作って練習する

  • MVを撮る

  • プロモーションスケジュールを設計する

という順番で物事が起こるはずなので、一貫したコンセプトが事前に存在しないとこの展開は作れないと思います。
とはいえそれはコンセプトレベルでしかなく、たとえばMVの監督には創作の自由度がかなり与えられているはず。

おそらくすべてが出揃いはじめてきたとき、

  1. 物語を軸にコアファンを揺り動かす

  2. 音楽とダンスを軸に大きく踏み込んでいく(webプロモでのキャッシュアウトもここに連動させる)

という順番で行くことを決断したのではないか。
まずはコアファンという熱源に火をつけることで、全体を通じて、

「いつか失われるものだからこそ、切なく尊い」

という感情を揺り動かすことに成功したのではないかと思います。

こういったスケジュールを書き出すという作業は、仕事柄、他社様がサービスしているゲームに対してよくやるのですが、今回は本当に勉強になりました。やりたいことのコアがはっきりしている。

コンセプトと、勇気と、どこまでも考え抜く思考量がすべてを決めるなと、改めて実感したのでした。


おまけ①

楽曲制作の話も、とてもモダンで面白いのでぜひ。

NewJeansのプロデューサーチームのメンバーから、「コペンハーゲンでセッションを行うので、ぜひ来てください」というメールが届いたのです。友人でもあるミュージシャンデュオ「スメーツ(Smerz)」のふたりと、もうひとりの友人でシンガーソングライターのフィン・イェンセンといたときに、ふとこのメールについて話したら、「わたしたちも同じメールをもらったよ……どういうこと?」と言われて。

夕暮れ前、ソファに座りながらダラダラしていました。「スメーツ」のキャサリナとヘンリエッテがパソコンをいじりながらビートをつくって、そこにアイディアを出していきました。こうして見ると、テーマは「遊び」ですね。わたしたちは純粋に音楽をつくりながら遊んでいたのです。

おまけ②

同じHYBEというころで、LE SSERAFIMやILLITについても気になってきています。

耳障りのよいサウンド。無理にコード進行を変えず、同じリフが繰り返される楽曲構成。
音楽ジャンル的には厳密には違うのかもしれないですが、NewJeansの影響は確実に受けてるなと思いますし、世の中に素敵な曲が増えていくのは、シンプルに素敵なことだなと思います。

朝(あるいは歌詞にあるように仕事終わりに帰宅して出かける前の夜)女の子がメイクしながら聴きたいのはむしろこの曲なんじゃないかなと思います

と考えると、OVERWATCHコラボでほんとに良かったのかな、MVはこれじゃなくてもよかったんじゃないかなと思ってしまう

ウォンヒのスター性がすごい。
というのもありつつ、サビが終わったあとにダンスで一番見たい部分(あの部分)を配置しているあたり、短尺動画をハックしにかかっているなと思います。すごく今っぽい。

もちろんNewJeansのこの先の展開も楽しみ。

一方で日本の、Creepy NutsのBling-Bang-Bang-Bornであったり、ビビデバだったり、愛包だったりの中毒性や、その二次創作の広がり方も面白いし、こういった流れが融合することもあるのかなと思い、そんな未来を夢想して楽しみたいなと思っています。

また可処分時間の奪い合いという点においては、ゲームも音楽も同じ土俵に立っているわけで、きちんと横目で見続け、分析しつづけないといけないなと改めて思ったのでした。

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