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仕事の任せ方について

優秀なプレイヤーが優秀な上司になるとは限らない、というのはよく聞く話だ。
特に日系企業では、プレイングマネージャーが多いと言われている。

が、自分は優秀なプレイヤーが上司として仕事を任せ、その上で最後のクオリティに妥協しない姿勢を示すことこそが日本企業の強さなのではないかと思っている。

優秀なプレイヤーこそ、優秀な上司になれる。
そのために必要なことはただひとつ、「仕事の任せ方」をテクニックとして覚えることだけだ。

まずはタスクを何回に分割するかを考える

仕事を任せることは、ひとつのタスクを何回に分けて依頼するかを考えるところからはじまる。

このとき、スケジュールを決定するのは「振る側」の役目であることを強く意識することが重要だ。

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完成までのスケジュールを明確にしてから、タスクを振ってあげること。
責任は常に振る側にあることを意識することが重要。

このときに大事になってくるのは「ひとつの仕事を何回に分けるか」だ。

【チェックポイントが少なすぎるとよくない】
  ⇒ 中間チェックがないと、結果手戻りが大きくなってしまう。

【チェックポイントが多すぎてもよくない】
  ⇒ 振られる側が完成までのステップをイメージできなくなってしまう。
  ⇒ 結果「何のためにこれをやってるんだろう状態」に陥りやすくなる。

【完成までのチェックポイント数は明確に伝える】
  ⇒ ゴールの見えない階段を登るのは苦痛。
  ⇒ チェックポイントのたびに「あとは○○をやれば完成だね!」と伝える。

ちなみに、スケジュールはコミュニケーションを取りながら決めた方がよいです。
はじめは「どれくらいでいけそう?」と質問し、それをきっかけにスケジュールを立てていくと、振られる側にスケジュール意識が生まれやすくなります。

とはいえ、ヒアリングから導き出したスケジュール通りに進まなかったとしたら、それは「タスクを振った側」の責任。
自己申告が正しいかどうかは、常に冷静に判断しておく必要があります。

各依頼が「正しい依頼」になっているかを確かめつつ進行する

以下が満たされた依頼が「正しい依頼」だ。

① きちんと権限を与えていること
② 具体的なアウトプットイメージを相手が脳内に描けていること
③ 要求するレベルが明確になっていること
④ 期限と優先順位が整理されていること

① きちんと権限を与える
・権限がない仕事はモチベーションが上がらないので、振らないようする。
・権限を与えるとは「好き勝手にやっていいよ」と伝えること。
・○○と○○は満たしてね、あとは好き勝手にやっていいよ、と言えるとよい。

② 具体的なアウトプットイメージを持たせる
・どんなものを求めているのかを明確にする。
・類似の資料などを見せ「つまりこれがほしいんだ」と伝えられるとよい。

③ 要求レベルを明確にする
・例:そのまま決定事項にしちゃうから覚悟して作ってね
・例:出来上がったら1回一緒に見直して、直したら完成ってことにしよう
・例:出来たら最後自分が手を入れるから、安心して好きにやっていいよ

④ 期限と優先順位を明確にする
・いつまでにやってほしいのかを明確にする。
・他のタスクとの兼ね合いから、優先順位を明確に伝える。

長く一緒に仕事をしていると、不文律が出来てくるメンバーも出てきます。
その場合、都度言葉にして伝えなくてもいいですが、要所要所(たとえば定期で設定された1on1など)での確認は忘れないようにしましょう。

特に優先順位に関しては、定期的に気にかけてあげること。
ここをコントロールするのもまた「振る側」の責任であることを忘れないようにしましょう。

進行をウォッチする

自分がタスクを持たせている人のところには、最低でも1日1回は様子を見にいくのがいい。

相談を持ちかけられたから相談に乗るのではなく、こちらから確認しにいくことが重要。
どんな感じで進んでる? と軽く確認するだけでも問題ない。

なお、「相談」は「聞き出す形」でするのがベスト。

・どんな感じで進んでる?
・どんなところで迷ってる?
・どんな方法があると思う?

AかBで迷っている、というところまで聞き出せたら、はじめてアドバイスするのがいい。
「相談」とは「自分の答えを教えること」ではなく「頭を使って考えてもらいつつ、考えるポイントをフォーカスさせること」だからだ。

こうした方がいいと思う、と直接自分の考えを伝えてしまうと、それは相手の自由度(=タスクを振ったときに渡したはずの権限)を奪ってしまうことになります。
それが続くと、相手はだんだん自分ではどうしたらいいかがわからなくなり「どうすればいいですか?」と質問するだけの人になってしまいます。

周りの人がみんなそういう姿勢になってしまうと、ゆくゆく自分の首が回らなくなってしまいます。

フィードバックする

フィードバックは気になる部分や直した方がいい部分を伝えるのではなく「ここをこうしてください」というゴールを明確に伝えることが重要だ。

ただし、伝えるべき粒度は相手によって異なる。

スケジュールに余裕があったり、相手の能力が高い場合

例:この報酬設計だと初心者ユーザーが考慮されてないので、初心者ユーザーのことも考えて再設計してほしい(たとえば○○とかがあると今の初心者は便利な気がするけどどうかな、などの例を挙げながらコミュニケーションを取りつつ)

例:これだとシナリオのピークが弱いから、もう一段感動を引き上げるために1エピソード追加してほしい(このへんになら入りそうじゃない? などとコミュニケーションを取りつつ)

スケジュールに余裕がない場合

例:データが不足してるから○○の数値を取りつつ、分析結果がaだったら○○に、bだったら○○にしてほしい

例:いまだとストーリーの流れが頭に入らないので、○○のシーンは削り、○○のシーンをボス前に移動してほしい

なお、前提として「振った仕事は60点でOK」とするべきだ。

自分の100点を、自分以外の人が叩き出すのは不可能。
そして100点を求めるコミュニケーションを続けると、人は疲弊していく。

じゃあクオリティを諦めろということかというと、そうではない。

大切なのは「チームの総生産量を上げる」こと。
それさえ果たせていれば、あとは残された時間で、こだわりたいところにこだわり抜けばいい。

先にも書いたように、優秀なプレイヤーが最後のクオリティに妥協しないのは日本的な強みだ。

最後に自分自身の手で「60点を100点に引き上げる」というこだわりはどこかで絶対に必要になる。

そのためにも重要なのは「いかにチームパフォーマンスを上げ」「いかに多くのクオリティアップタイムを残しておくか」だ。

※もちろんタスクを振る時点で「ここは最後自分でクオリティアップしようと思う」と伝えておくことを忘れないように!

フィードバックとは「修正箇所を明確にしてあげること」です。

・バランス調整であれば「3体目の敵のDEFを上げる」
・報酬であれば「ドロップ報酬の確率を下げつつ確定報酬を足す」

というように、直すべき箇所をしっかりと伝えるべきです。

・バトルが早く終わっちゃうのでもう少し長く戦いたい
・プレイした労力に報酬が見合っていないので、もう少し盛りたい

これらは感想であって、フィードバックではありません。

ただ、どこを直すか指摘するだけだとメンバーの成長が望めないのも事実なので

・現在の良い部分はどこか
・それを伸ばすために何をしたらいいと思ったか
・結果、どう調整するのか

という思考過程を同時にきちんと伝えてあげるとよいです。

※自分は一度考え抜いた答えを用意しておきつつも、相手と話しながら再度一緒にイチから考えるという方法をよく取ります。
※結果、自分だけで考えた結論と違う答えに至ることも多いですが、一度考え抜いているからこそ、話し合った結果の答えが正解であることがわかります。
フィードバック後の修正量は少ない方がいいので「最小工数で最大効果を発揮する一手」を見つけ出して、指摘しなければなりません。

自分はフィードバックのMTGを一時中断して休憩を取ってでも、その一手について悩むようにしています。
細かいところをチクチクと直させると、よくない結果になることが多いので注意。

もしスケジュールが遅延しそうな場合

スケジュールの遅延には3種類の理由がある。

① 差し込みタスクがあって優先度が崩れた
② タスクをこなす上で思考の迷宮に入ってしまった
③ 単純に「遅れ癖」がついている

① 差し込みタスクに対処する
・タスクを整理して整理してあげる
・それぞれに優先度を振ってあげる
・遅らせてもいいタスクは、それを遅らせる交渉まで巻き取る

② 思考の迷宮に対処する
・ほとんどの場合、手持ちの荷物(考えるべきこと)が多すぎるのが原因
・今は考えなくてもいいことを決めてあげるのが良い(※ただし理由付きで! 納得できないと思考が圧迫された状態は変わらないため)

例:今は全体におかしく見えるかもしれないけど、まずこの問題点だけ解決すれば、残りの細かなところは後からなんとでもなります。安心して進んでください!

例:コンセプトや、そこからブレイクダウンしてきた内容に間違いはないから、決めたことは覆さずに、残りの空白を埋めることだけ考えましょう!

③ 遅れ癖に対処する
・一度つきっきりでスパルタ指導する(コストはかかるが投資対効果は高い)

1. 自分がそのタスクをやるなら、という目線で効率的な進め方を考える
2. まず30分ぶんのタスクを振って、それ以外は忘れてもらう
3. そのタスクをやっている間も、仕事の進め方を見つつ、非効率な点があったら指摘する
4. 30分後に、次の30分のタスクを振る(全体のどれくらいが終わっているかをインプットしながら進行するのがコツ)
5. 最後まで繰り返す

改めて:仕事の任せ方はテクニック

優秀なプレイヤーこそ、優秀な上司になれる。
それは、高いクオリティを叩き出す方法を知っているからだ。

あとは仕事を任せるという「テクニック」だけを身につければいい。

だからこそ、プレイヤーとマネージャーは違うという言葉に惑わされることなく、部下を持つことに果敢にチャレンジしてほしい。

アイディアで世界上位100人に入るのは難しい。

技術で世界上位100位に入るのも難しい。

マネジメントで世界上位100位に入るのも難しい。

でも、世界で100万位のアイディアマン、世界で100万位の技術者、世界で100万位のマネージャーだったら、人生の全てを賭ければ目指せるかもしれない。

その全てを持ち合わせている人は、世界に100人しかいない。

プレイヤーとして優秀なあなたこそ、プレイヤーであることに甘んじず、仕事を任せるという「テクニック」を身につけてほしい。

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