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メルボルン生け花フェスティバルCEO放談(10):オンライン花展・花信の発想

オンライン花展、花信(Hanadayori)について、その発想の原点をお話しします。やがてこのHanadayori はフェスティバル開催時以外の時の私たちの重要な活動となります。

さらに、この企画にちなんだ香水が発売され、その売り上げがフェスティバル運営を資金面で援助し、さらに香水のローンチのためにベトナムで生け花パフォーマンスを行うというところまで発展します。

さらに、そのパフォーマンスがベトナムの有力紙の文化欄やベトナム航空の機内誌にまで紹介されるという成果を生みます。その結果、ベトナムから数十名のフェスティバル出展希望者が出てきました。

さらに幸運なことに、Hanadayoriシリーズの香水のひとつ「咲花」が世界最大の香水専門サイトで2023年度の最高の香水に選ばれるという、なんだか「わらしべ長者」のような幸運続きの展開になるのです。

花信(hanadayori)は、素晴らしいゲスト出展者にも恵まれ、とても幸運な初回開催となりそうです(2021年当時のブログより)。


花信発想の原点

花信について、まず話したいことは、その発想の原点です。

私にとっては少し変わったアプローチでした。何かの参考にしていただけるのかは不明ですが、少しお話ししてみましょう。

通常、ある製品を開発する際、既存の成功している製品から発想していくということはよくあると思います。

例えば、マツダのSUVがヒットした、となると、トヨタはそれとほとんど同じような製品でありながら、少し室内が広いとか、特別な装備を加えるなどして対抗する新製品を発売します。

あるいは、あるイベントがあって、そこそこうまくいったという場合、そこからヒントを得て、さらにいろいろな改良点を加えて、発展させ、新しいイベントを企画する、というようなこともよくあると思います。

つまり、AからA+を考えていくというやり方です。おそらくこれが普通の製品開発でしょう。

今回の花信は、そういう典型的な製品開発とは少し違った方法でブレイン・ストーミングしていきました。

長期的な広報活動としてのオンライン花展

オンライン花展をやりたいという発案がありました。それは、いろいろな意味で私達、メルボルン生花フェスティバルにふさわしい、ということだったのです。

フェスティバル開催の時にはサイトへの訪問者が増えますが、それ以外ではフェスティバルのこともほとんど忘れられています。フェスティバル開催時以外の時にも、国際的な生け花関連の活動を提供することで長期的なPR活動を行いたい。それがフェスティバル発展につながるはず。

問題は、いかにやるか、ということ。

既存のオンライン花展の物足りなさ

出発点として、既存のオンライン花展をいくつか見てみました。

何かもの足りないのです。でもそれが何なのか、また、どうすればいいのか全く見当もつきません。

そこで、A, B, C, D それぞれが含んでいないものについて考えて見ました。非A、非B、 非C、 非D、それらの共通項はなんだろう?と考えたのです。それぞれに欠けているものの共通項です。

それがわかると、もしかすると既存のオンライン展覧会の物足りなさの根本原因がわかるかもしれません。なかなか思いつきませんでしたが、突然、あ、そうか!と。

ひらめき!

欠けているのは2 Ways のインターラクションです。両方向性!

つまり、既存のオンライン花展のほとんどは、制作者から観衆へ、という一方通行なのです。制作者はもちろん観衆のことを考えてはいるでしょうが、自分の修行の成果を発表したいということが主になるのではないでしょうか。観衆の立場からすると、綺麗だとか、勉強になるとかいうことはもちろんあるでしょうが、もしかすると「よく分からない。ただの自己満足じゃないか」なんていうこともあるかもしれません。

そうではなく、観衆の心を撃つ花、観衆の求める花を展示する展覧会にできないか、とアイディアが膨らんでいきました。

企画の誕生

そこで、まず世界中からリクエストを募集して、生け花作家にリクエストに応じてもらおう、という案ができたのです。観衆から華道家へ、華道家から観衆へ、という両方向の流れが生まれます。

通常より一手間余計にかかるのですが、その手間が何十倍にもこの企画を面白いものにしてくれるでしょう。もちろん、他にももっといい方法はあるでしょうし、同じような発案の企画もあることでしょうが、とりあえずは私たちの手の届く範囲では、この辺りからでしょう。

広く一般にリクエストを公募することで、普段、生け花に関心のない方にまで興味を持っていただけるかもしれません。「世界の人たちは、今、花に何を求めているのか」、これは多くの方にとって興味深い問いでもあるでしょう。そんな生け花の原点を問うような企画になるかもしれません。

参加して下さった世界各国の華道家の方々からどのような花信が届くのか、楽しみにしたいと思います。2021年9月4日に公開予定です。

そして、2021年度版花信は以下のように公開されました。よろしければ、ぜひリクエストの全文にも目を通してみてください。「涙があふれた」というような感想が届く理由も納得していただけるかもしれません。

追記1:2023年度版は、初回の約2倍の出展者をお迎えし、公開されました。リクエストの内容の面白さ、物語も生け花作品と同時にお楽しみいただきたいので、YouTube版での公開に加え、ハードカバーでも出版しました。以下のリンク先からサンプルページがご覧いただけますので、よろしければご覧ください。

追記2:2023年度版でも多くの著名華道家の方々に御協力いただきました。心よりお礼申し上げます。特に、日本でご活躍の多くの華道家をご紹介いただいたいけばな松風副家元、塚越応駿氏にお礼申し上げます。

見出し画像:Hanadayoriコレクションとして人気を集めるメタセンツ社の香水3点(瀬織津、咲花、宮比)。

2024年度広報

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