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久しぶりに月組「今夜、ロマンス劇場で」を観たはなし

本当に久しぶりロマ劇を見た。
大好きな月城かなとさんのお披露目の公演。
思い入れが深くてとても幸せだった思い出の作品。
久しぶりにみると映像なのにもかかわらず余韻と溢れる思いが止まらなかったので、なぜ私がここまでこの作品が大好きなのか記録を残そうと思う。
あくまでもこれは原作の映画版ではなく、宝塚歌劇団月組版の「今夜、ロマンス劇場で」の感想です。

私は、健司も美雪も自分のことを可哀そうだとはちっとも思っていないところが大好きだ。

美雪と健司の間にある「触れられない」という掟。美雪は「悲しんでいるときに手を握ってやることもできない」というが、あくまでそんな自分と一緒にいる健司に申し訳ないと思っているだけで、自分の境遇には憐れみは無い。すべて理解してすべて覚悟をしたうえで、堂々と限られたルールの中で最大限楽しもうとする。その前向きさが決してこの作品を可哀そうな悲劇にしない。
健司も同じく、そんな人を愛してしまった自分には全くフォーカスが当たらない。あくまでも自分が美雪を幸せにできるかが不安なのであって、愛さなければよかったなんて感情はどこにもない。いろんな人に背中を押されて美雪と共に生きていくことを決めるが、それもどうすれば一緒にいられるかをひたむきに考えた結果の覚悟だと思う。
優しくて強いふたり。そして何より愛に誠実なふたり。
そんなふたりだからこそ、たくさんの工夫をしながら幸せにふたりで生きてきたのだろうなとそのあとの場面が胸に迫る。

健司の言葉の選び方、歌の歌詞もとても好きだ。

健司が美雪の映画を見ながら、「なにより主人公がとびっきり魅力的」というところ。「とびっきり美人」ではなく「魅力的」という言葉を選ぶところがとても好き。直前の場面で伸太郎との間で「塔子さんより美人がいるのか」という会話をするので、美雪のことを思わず夢見心地になるほどの美人と思っていることは確かなのに、「魅力的」という言葉を選ぶところが、健司という人物を表現する象徴的なセリフだなと思う。

「だからもう、そんな顔をしないでください」というセリフも大好き。
消える覚悟をして「抱きしめて」という美雪に、あなたじゃないとだめなんですと伝える場面の、歌に入る前の最後のセリフ。美雪が泣き出しそうな顔をして健司の思いを聞くのを見て、美雪が消える覚悟をしてここに立っていることも全部わかったうえで、優しく穏やかにこの言葉を伝える。力強く切実な思いで愛を伝えた後に、そっとこの言葉を伝えるのだ。たった一言で健司の覚悟と優しさが、愛が伝わるの、本当に素晴らしい。

テーマ曲「今夜、ロマンス劇場で」のサビの歌詞も大好きです。

青い空に七色の虹をかけよう
カラフルな思い出を作ろう 君と
雨の時も星の無い暗い夜にも
離さない この愛だけは

白黒の映画の世界から飛び出してきた美雪にたくさんの色を教える健司が、この歌を美雪に向かって歌うところも、「雨の時も~」からふたりで一緒に歌うところも、ふたりの愛がたくさん詰まっていて泣いてしまうくらい素晴らしい。
決して触れられない二人が、この愛だけは離さないと歌うのもすごい。「離す」の対義語は「掴む」だと思うから、決して肉体的に掴む(触れる)ことができないふたりだけど、だからこそ愛だけは離さないと誓うのだと思うとぼろぼろに泣いてしまう。

クライマックスでは少し歌詞が変わるところも大好き。

青い空に七色の虹をかけよう
カラフルな思い出を作ろう 君と
見上げた空 あの月が輝く限り
離さない この愛だけは

健司と美雪の人生が終わり、シナリオの最後として歌われるときには、「見上げた空 あの月が輝く限り」に変わる。
最初に歌ったときは「誓い」だったけど、最後はふたりの誓いがふたりの「日常」だったことを描いているようで胸が熱くなる。ふたりの物語を見届けたうえで聴くからこそ、ふたりの時間と人生を思い出してここで最後にもう一度救われるのだ。


わたしはきっとこの先も、この作品に、美雪と健司、そして鮮やかな登場人物たちに救われるんだろうなと思います。
愛しい作品に出合えたこと、心より感謝を込めて。


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